イノシシ天国 その3

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イノシシ天国 その2からつづく

彼女はいいのかな、イノシシの鼻のハンコのついた婚姻届出されても。

一生に一度・・・とは限らないけれど、とにかく一生の記念の婚姻届なのに。

彼女はどこに行ったんでしょう。

捜すと、遠くの牛舎で牛を見ています。

牛が珍しいんでしょうか?

ふつうの人には珍しいんでしょう。

呼びに行こうかと考えているうちに、もう男2人でトンちゃんを抱きかかえて鼻にスタンプ台のインクを付けようとしています。

「これでハンコ押せますかねえ」

「牛の鼻紋を取るのと同じさ」

牛には「鼻紋」というのがあります。

人間でいう指紋のようなもので、鼻の頭にある細かいシワの模様が一頭ずつちがっているのです。

これで牛の個人・・というか、固体を識別するのです。

農家が和牛を売る時には登録証明書というのが必要です。

戸籍謄本みたいなものです。

牛の父親の牛、母親の牛の名前や生年月日、祖父母の牛の名まで記載されています。

それほど血統が重要視されているのです。

その登録証明書に鼻紋のコピーも貼り付けられています。

今まで何百頭の牛の鼻紋を取ってきたことでしょう。

牛の鼻紋なら慣れたものですが、イノシシの鼻紋とは・・・。

「ダメだなあ、トン吉の鼻の頭が濡れてるからインクがうまく付かないよ。」

牛は鼻の穴が下向きについているから、鼻紋を取る鼻の頭はタオルでちょっと拭けばインクがよく付きます。

でもイノシシはブタの仲間ですから鼻の穴が前というか上を向いています。

拭いても拭いても鼻水なのか何なのか、いつも濡れていてインクが付きません。

「あれ、ダメだあ。うまく鼻の捺印ができないよ」

あああ、婚姻届をすでに汚くしてしまいました。

これであきらめるかと思ったら・・・、

「ようし、こうなったらチョキでやるか」

チョキ?イノシシの足先?

イノシシはブタと同じ偶蹄類ですから脚の先のヒヅメは二本のチョキの形のいわゆる豚足です。

「わ。汚いなあ、泥だらけだよ、トン吉の足」

当たり前です、裸足で泥の上を歩いているんですから。

「雑巾で拭いて・・・」

濡れ雑巾を持ち出して二人がかりでトン吉の足の裏をゴシゴシ拭いています。

そんなにしてまでもブタの捺印にこだわらなくてもよさそうなものですけど。

トンちゃんは何をされてるのかわからないでしょうが、飼い主にされるがままにおとなしくしています。

「おお、今度はインクがバッチシ付くぞ」

「ここと、ここに・・・」

ペタッ、ペタッ。

「アハハハ、トンちゃんの足跡だ」

何をやっているんでしょう、この人たち。

まあ、数年前、丑年の年賀状のデザインに、牛の鼻紋を年賀ハガキにペタペタと何十枚も押して出したことのあるカウボーイさん、これくらいのことはやってもおかしくはないのです。

二人の保証人の住所氏名と印のほかにトンちゃんの印鑑・・じゃなくて鼻の穴の捺印の失敗したシミのような汚れと、チョキの足跡が二つ三つ。

「おーい、保証人の印鑑押してもらったよ」

「あ、ありがとうございまーす」

婚約者に婚姻届を見せたかどうかは知りませんが、そのまま出したようです。

後日、N村さんに会って聞いてみました。

「あの婚姻届、市役所に出して受理されたの?」

「ああ、それはだいじょうぶでしたけど・・・」

「な、何?」

「窓口の人に『ずいぶん汚いねえ』って言われました」

と笑っていました。

まあ、いい記念になったのかも知れません。

その後N村さん夫婦にはお子さんも何人も産まれて仲良く暮らしているようですから、イノシシの婚姻届はお守りになりはしても結婚の支障にはならなかったことと信じているのです。


→イノシシ天国 その4につづく

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