私の黒いランドセル その3

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→私の黒いランドセル その2からつづく

早々とランドセルを買いましたが、入学までにはまだ半年あります。

まずは幼稚園です。

石垣市に限らず沖縄では市立幼稚園が市立小学校の数に匹敵するくらいあって、たいていは小学校の敷地内に建てられています。

戦後の沖縄のGHQ政策の名残なのでしょうか。

公立保育所も幼稚園と同じくらいあって、赤ちゃんから4歳までは保育所、5歳になると幼稚園に入る、というのが一般的です。


「鉄兵もあと半年で小学校だな」

「やっぱり年度途中でも幼稚園に行かなきゃ」

「保育所の時みたいに途中でいやになるかな」

そうです。友達がほしいと通い始めた保育所も3ヶ月足らずで中退してしまったので、それ以来幼稚園に通わせるのも二の足を踏んでいたのでした。


「夜更かし朝寝坊の生活も今から直していかなきゃ学校生活が送れないじゃないの」

「なんで学校は朝から始まるんだろう。夕方から始まる小学校はないのか」

「そんなのあるわけないでしょ」

「夜間中学があるんだから、『夜間小学校』っていうのがあってもいいんじゃないか?」

「なにバカなこと言ってんのよ。幼稚園に行って入園の手続きしなくちゃ。きりんも保育所に入れた方がいいと思う」

公立なので保育料は安いです。

幼稚園が4千円くらい、保育所もここは僻地なので5千円くらいでした。

街の私立保育所が3万~3万5千円でしたからかなり安いです。

保育所も幼稚園も隣の村、といっても地元の村から4kmほど離れた所にあります。

お弁当を持たせて毎日送り迎えです。

同じきょうだいでも、きりんはどういうわけか小さい時から早寝早起きでした。

問題は鉄兵くん。


「もう8時よ。みんな幼稚園に行ってるわよ。起きなさい」

「フガフガ、眠いよー」

車に二人を乗せて出発しますが、幼稚園に着いたころには座席でまた寝ています。

「着いたよ、起きなさい」

半分まだ眠りながら夢遊病のように歩く鉄兵を幼稚園の先生に引き渡したあと、私は帰るふりをして木の陰からそっと見ていました。

彼は靴箱のすのこの所で腰を下ろし、靴を履き替えながら後ろの壁に寄りかかったまたまた眠っています。

「おーい、テッペイ、起きてるのか」

「お前、ノーミソ、働いてるのか?」

五歳児の友達にまでからかわれています。

生まれてから5年間築いてきた夜行性生活はそう簡単には直せません。

生活リズムが狂ったまま小学校入学を迎えることになりました。

小学校は隣村の幼稚園よりは近いのですが、それでも牧場からは4kmあります。

子どもの足では1時間以上かかります。


「学校は8時に始まるから、7時に出発する?」

「6時か6時半に起きるのか?鉄兵には無理だ。途中で休んで眠っちゃうんじゃないか?」

それでは何時間かかっても学校に着きません。


実際には入学前のオリエンテーションで、

「登校中の道のり、民家も何もないですね。安全に配慮して毎日必ず保護者の方が校門まで送り迎えしてください」

と学校から言われましたので、車で送り迎えということになりました。

物騒な時代ですから。



この年の新入学児童は鉄兵を入れて6人ありました。

「6人も」です。

すぐ上の2年生は1人、3年生は3人、4年生は4人、5年が1人で6年が2人。

1年生が6人も一度に入学するのは何年ぶりかの快挙です。

小さな村の小さな学校です。



入学式で新入学の保護者代表の挨拶をお願いされました。

6人のうち鉄兵以外は兄、姉がいます。

つまり子どもを初めて入学させるのはうちだけのようです。


父さん、ちょっと緊張して、でも堂々と入学の挨拶をします。


「本日は無事に入学式を迎えられまして・・・(中略)・・・・・息子がまだ5歳の時、入学の半年前の十月にランドセルを買ってやりました。早くランドセルを背負ったわが子の姿が見たかったからです。それだけ小学校の入学を待ち望んでいたのです。ランドセルは季節はずれのためか、4万円以上もしてカアチャンには『それで三つも買えるじゃないの!』と怒られました・・・・・・・・・」

という挨拶でした。

どっとウケました。


入学式の後、

「4万円のランドセルですって?ホホホホ」

とか、

「男の人は値段を知らないから困るわねえ」

などと言われて恥ずかしかったのです。

4万円のランドセルに見合うだけの勉強をしないといけないでしょう。

こりゃ親の努力も必要になります。



入学式の夜は宴会の準備です。

入学式に出席するのは新入学児童の親だけではありません。

学校のPTAのほとんど全員、そればかりか地域の、昔PTAだった人、学校に通うような子どもの居ないおじさん、おばさんまでが入学式に出ています。

そうでないと生徒の数も教職員の数も少なく、実にさびしい入学式になってしまいます。

入学式の夜はこういう方たちを全部招いて入学祝の宴会をします。

新入学児童の自宅では入学式が済んだらすぐ料理や酒の準備です。

呼ばれる人も新入学児童のいる家庭をみんな平等に回って訪問して行きます。

5人も6人も新入学があるとお祝いに訪問する人もはしご酒をするみたいで忙しいのです。

この村の習慣なのです。



こうして村の人たちは小学校の子どもたちの顔と名前と学年をしっかり覚えてくれることになります。

下校途中で道草をしていても近所の人には、どこの誰の子どもか、とはっきりわかってしまいます。

これは防犯上としてはありがたいことです。



村人が集まる宴会は冠婚葬祭すべての時にあります。

最近は「婚」はホテルで、「葬」は斎場で、というのが多くなりましたが、「冠」は個人の家ですることが普通です。

「冠」つまり、出産の祝、から始まって、小学校入学、女の子は十三歳の祝(他府県の七五三みたいなものですね)、高校や大学や専門学校の合格祝、成人式・・・と、子どもの成長の節目にお祝いを、家族だけでなくご近所の人たちといっしょにお祝いするのです。

お母さん方は料理の準備でちょっとタイヘンですが、うちの父さんのように宴会でお酒を飲むのが好きな人には、入学や合格は本人やその家族でなくてもうれしいことなのでした。

→私の黒いランドセル その4につづく

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