遭難アドベンチャー その6



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遭難アドベンチャー その5 からつづく


Tさんは私一人を浜に下ろすと、駐在さんとゲントクおじいを乗せたまま、カノカワ方面に船を出しました。

「ヘリコプターの捜索か・・・エライことになっちゃったな」

この島の近くの海上で父さんとスーやんは小さな舟で漂っているのでしょうか。

そんなに遠くには行っていないはずなのですが。

舟を見送ってしばらくはまぶしい砂浜でアーちゃんたちと立ったまま海を見ていました。

「おばちゃん、意外と早かったね」

「うん、がんばって泳いだよ。それにハイミダのキャンプ場で車に乗せてくれた親切な人がいてね」

「子どもたち泣かなかったよ」

「ありがとうね、めんどう看ててくれたんだね。ビスケット食べたわ。助かったよ」

そんな話をしていると、沖の方にまた別の船影が見えてきました。

Tさんの船ではありません。

第一、方向がちがいます。

水平線の向こうから始めに大きくてきれいな船が見えました。

ダイビングに使う二階建ての船です。

ダイビングのお客さんを何人も乗せて相当遠くまで行かれる船です。

その後ろから続いて現れたのはもっとずっと小さなボート。

ちょうどうちの舟くらい。大きさも形も色も船首に描かれた模様までもがそっくりな・・・。見覚えのある・・・。

「あ、うちの・・・ボート・・・?」

まぎれもなくうちの舟です。

「アレ、なに、なんで??」

いったい、どうなってるの?

うちの舟は二階建ての大きなダイビング船に曳航されて突然帰って来ました。

スーやんと父さんはダイビング船の方に乗っていました。

岸に近づくと、腰までの深さまで所で舟は止まりました。

二隻を繋いでいたロープをはずすと、父さんたちは腰まで海に浸かったまま、ダイビング船の人に深々とお辞儀をしてお礼を言っているようでした。

この間、私とアーちゃん、みほちゃんは、状況がまだ把握できず、ポカンとして見ていました。

ダイビング船は元来た方に向きを変え、また沖に去って行きました。

ダイビング船を見送った後、父さんはボートをロープで引っ張りながら、海の中をザブザブと歩いてこちらに来ます。

真っ先に鉄兵ときりんの方に駆け寄って行きました。

そして2人をしっかりと抱きしめていました。

「もう一生会えんかと思ったよー」

スーやんはその横で黙ってうつむいていました。

このときは少し離れた所にいた私たちには見えませんでしたが、父さんは子供たちを抱きしめたまま泣いていたそうです。

「ここでずっと待ってたんか?」

「そんなわけないでしょ。心配したんだから」

「ゴメンヨ、心配かけて・・・」

「スーやん・・・」

まだ昼前だったので、まさかもう助けを呼びに行って捜索が始まっているとは思っていなかったようです。

「朝暗いうちに助けを呼びに行ってきたんだよ」

「へ?歩いてか?」

「泳いだんだよ。潮が引いてからは歩いたけど、小潮だから深くてタイヘンだったよ」

「で、ハイミダからはどうしたんだ?砂浜もずっと走って行ったのか。髪の毛に砂がいっぱい付いてるぞ」

「ゲントクさんに電話して駐在さんとTさんの舟に乗せてもらって来たんだよ」

「駐在も来たのか」

「ここへ来るまでも舟が見えなかったからカノカワの方を捜索しに行ったところだわ」

「カノカワ?そんな方には行ってない」

「え?どういうこと?」

「お。うまそうだな、オレにもくれよ」

質問には答えず、きりんがパクパク食べていたおにぎりを見て言いました。

「いったいどこに行っていたのよ!」

「ナカノカミシマ」

「えええええっ!!」

驚くのは当然です。

「仲の神島」(ナカノカミシマ)はここから南西に20キロあります。

「中御神島」(ナカノオガン)とも呼ばれ、西表からははるかに霞んで見える絶海の孤島です。

緑がなく、岩山だけの島。

小さな島で川も池もありません。

もちろん人も住んでいません。

カノカワ方面に捜索に行ってくれている駐在さんたちが帰って来るのを待つ間にいきさつを聞くことにしました。

以下は二人から聞いた話です。
  
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・

昨日の昼前だった。

晩のおかずに魚を獲って来ようと軽い気持ちで出かけたんだ。

夕方までには帰るつもりだったから、オレたちパンツ一丁で来てしまった。

始めは遠くない所で魚釣ってたんだけど、大したものは釣れなかった。

そのうちに近くを漁船が通ったんだ。

これが仲の神島の方から来た船で、大物を釣って帰って来たっていうんで、そうか、よーし!と闘志が湧いてきて行くことにしたんだ。

だけど、仲の神島に来てちょうど島の裏側に回ったところでエンジントラブル、帰れなくなっちゃった。

このままでは漂流して海流に乗って太平洋の大海原に流されて行くと思ったね。

それでとっさに島から遠くに離れないうちに錨を下ろして停泊することにしたんだ。

数時間で帰るつもりだったから、食料も服もなかったよ。

水は、スーやんの持っていたペットボトルに5百㏄だけ。

水はすでに飲み切って、太陽はガンガン照り付けるし、上半身裸で、光を遮る屋根もないだろう。背中が焼けて焼けて。

このまま救助を待っても救助隊が来る前にオレたち干物になるのかと、辛かったよ。

もし助けが来なかったら、島に上陸しようと思ったね。

海鳥を捕まえて食べて、雨水を溜めて飲んで生き延びるんだ、と考えたよ。

この仲の神島は魚がよく獲れるんだ。

五十キロ、百キロ釣れるのは当たり前。

台湾の漁船も島の近くまで来ることもあるらしい。

だけど、一度海が荒れたら何週間も船は近づかない。

それほど絶海の孤島なんだ。

一度漁船が少し離れた所を通るのが見えた。

思い切って飛び込んで泳いでそばまで行って助けを求めようと一瞬思ったけど、そうしなくてよかった。

漁船はこっちには気づかずに、追いつけるどころか速いスピードで行ってしまった。

泳いで行っていたらオレだけが流されていたところだったよ。

始めに釣った小さな魚をデッキに並べて干して、これもいざという時の食糧になるかも知れないと、干物を作ってたんだ。


  →遭難アドベンチャー その7につづく


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