遭難アドベンチャー その5



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→遭難アドベンチャー その4からつづく


始めの砂浜では10分ほど休憩してすぐまた出発します。

一体あとどれくらい泳げばいいのでしょう。

来た時は舟でしたから1時間くらいでしたが、港からウフバマまで歩いたことはありません。

迷うということはないですが、何時間かかるか先が見えない旅というのは不安なものです。

ようやく「トウフ岩」が見えてきました。

「あ、この岩、来るときに見た!」

見覚えのある岩に出会えてうれしくなりました。

港から来るときに舟から見えたトウフのような四角い大きな岩。

ここで半分は来たということです。

また砂浜が見えてきました。そして滝も。

でもまた岸からずうっと上の方です。

水が飲めないのなら上陸しても意味がないので横目で見てそのまま泳ぎ続けることにしました。

干潮に近づいて水深はますます浅くなって来ています。

膝より少し上の深さで、泳ぐには浅く、歩くには深すぎる厄介な水深です。

歩いたり、泳いだり、交互にやってみているうちに「南風見田(ハイミダ)」のキャンプ場に着きました。

まだ9時前です。

予定より早く干潮になる前に到着してしまいました。

朝5時ころに出発したとして4時間足らずで泳ぎ切れました。

新記録!いえ、あまりこんな記録作ってもうれしくはありません。

上陸して、まずは水の流れる岩を見つけると、飛び付いて思い切り飲みました。

ガブガブのみまくって、次に頭から水をかぶり、体中を真水で洗いました。

真夏の午前9時といえば太陽はもうジリジリと照りつけて暑い時間帯です。

浜から上の方に上がって人を探しました。

テントはいくつかありますがシーンと静かで人の声はしません。

まだ寝ているのか、朝早くから海にでも行っているのかでしょう。

一つのテントからラジオの音がします。

「おはようございます」

「はーい」

おそるおそる声をかけると若い男の人が出てきてくれました。

よかった、人に出会えた。

「この近くに公衆電話はありませんか」

この時にはまだ携帯電話という物は一般的ではありませんでした。

持っている人もなかったわけではありませんがそれほど普及もしていませんでした。

まして沖縄の離島では圏外になるところが多かったのです。

離島のあちこちにも中継局が次々と設置されるのはそれから数年たってからです。

「ここのキャンプ場に電話はないですねえ。どうかしたんですか?」

電話がないとなると、まだ数キロ先の村まで歩かなければならないのです。

「実はウフバマでキャンプしてまして・・・。舟で魚を獲りに行った二人が遭難したらしいんです」

「え?」

「まだ向こうのテントに女子高校生と小さい子がいるんです」

「ええっ!」

「それで、食料も無くなって助け呼ぼうと渡し一人で泳いで来たんです」

「え―――っ?!」

「はあ、大富(一番近い村)まで歩くか」

「あの・・・ボク・・・」

「はい?」

「僕、クルマ持ってるんですよ。公衆電話のあるところまで送ってあげましょう」

「ホ、本当ですか?!あ、あ、あ、ありがとうございますううう」

親切な人に出会えました。

このキャンプ場は昔から長期滞在の人が多かったのです。

バイクや車を持ち込んでいる人も少なくはなかったのでした。

テントのある浜から少し離れた所に車を停めてあったようです。

そこまでいっしょに歩いて行きました。

すでに足ヒレをはずしてゴムぞうりに履き替えていたのですが、歩くたびに、ビショビショに濡れた脚の後ろ側に砂が跳ね上がっていくのがわかりました。

車に乗せてもらうのも砂や海水でシートを汚すのが気が引けました。

公衆電話で短パンのポケットからビニールに厳重に包まれたテレフォンカードとメモを出して電話です。

「もしもし、ゲントクさん?」

通じました。

西表でいつもお世話になっているゲントクおじい。

老人ですが逞しく、山でイノシシを獲るワナの作り方や海で巻き網で魚を獲る方法を教えてくれたアウトドアの大先輩です。

ゲントクおじいは自分の軽トラックを運転してすぐ来てくれました。

ゲントクさんが来てくれたので、親切なキャンプ場の人には丁重にお礼を言ってここで別れました。

「どうした?」

「ゲントクさん、昨日ウフバマから舟で魚を獲りに行ったきり帰って来ないんです」

「燃料切れかエンジントラブルだろうな。駐在に行ってみよう」

田舎の島では駐在所のおまわりさんは住民の生活といつもかかわっています。

ゲントクさんが連れて行ってくれた駐在所には駐在さんと奥さん、それに駐在さんの小さい子たちが4人くらいいました。

沖縄県はどこも子沢山でうれしくなります。

「たぶん、油切れだろう。船を頼もう」

すぐに駐在所から近くで船を持っている知り合いに電話してウフバマまで行ってもらうことになりました。

「よかった、ウフバマに子どもたちを置いて来ているんですよ。女子高校生二人と。昨日から食べる物もほとんどなくて」

「まあ、タイヘン!じゃあ、何か食べ物を持って行ってあげなきゃ」

駐在の奥さんが奥の住宅の方に入って行って数分後に戻ってきたときにはおにぎりを持って来ていました。

「ご飯が炊いてある分だけで急いで作ったの」

駐在の奥さん・・・。ここでも親切な人に会いました。仕事とは言え、ここまでしてもらおうとは思いもしませんでした。

船の準備に少し時間がかかりました。

それはそうです。

急に言われたのですから。

船を出してくれるのはゲントクさんの知り合いのTさん。

この船にゲントクさん、駐在さん、私、が乗って、4人でウフバマに向かいました。

苦労して泳いで来た道のりもエンジン付きのボートで戻るとなんと速いことか。

トウフ岩も、見えたと思ったらもう通り過ぎていきます。

ウフバマの海岸に着くと、高校生と子どもたちが波打ち際まで出てきて飛び上がって手を振ったりバンザイしたりして喜んでいるのが見えます。

(ワーイ、おかあさんがかえってきたー)と言っているにちがいありません。

もう11時になっていました。

船から下りて、まずはもらって来たおにぎりを渡しました。

子どもたちは波打ち際で立ったままムシャムシャと食べ始めました。

釣りに出た二人はやはり帰って来てはいません。

来る途中もカノカワの方を気をつけて見ていましたが、うちの舟らしき物は見えませんでした。。

「カノカワの方に行ったかも知れんな」

「はい、カノカワの方に行くと言ってました」

「カノカワを捜索しても見つからなかったら海上保安庁に連絡してヘリをたのむか」

本当に大きな騒ぎになってしまいました。


  つづく


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