遭難アドベンチャー その4



人気ブログランキングへ
最新記事がトップに来ています。

最初から読まれる方はここ「キャンプへGOその1」からどうぞ。

おすすめは、 「アイ ハブ ア ハブ」


 →遭難アドベンチャー その3からつづく


『すまん、すまん、遅くなったなあ』

『燃料切れになっちゃって、カノカワから何時間もかかって岩伝いに歩いて来たんだよ』

そう言って岩陰から二人がひょっこり現れるんじゃないかと、海岸の西の方も気をつけて見ていましたが、期待むなしく夜は更けていきます。

どうして帰ってこないのでしょう。

舟が座礁して動けなくなった?

燃料切れになって近くの岸に舟を寄せて上陸した?

何かアクシデントがあったにちがいありません。

でも仮にそうだったとしても、二人で海岸を歩いて、または海の中を腰まで浸かってザブザブと進んででも帰って来るはずです。

夜中になってもカノカワから帰って来ないというのは、・・・遭難?!

浜辺で暗い海を見ながら、みほちゃんとアーちゃんと相談しました。

「アーちゃん、あの二人は明日の朝まで帰って来ないかも知れないね」

「おばちゃん、どうしたらいい?」

「うーん、もし、今夜中に帰らなかったら、一番近い村まで助けを呼びに行く」

「一番近くって、大原港のちょっと手前でしょ」

「来る時はボートで1時間はかかりましたよね」

「全員で歩いていくの無理です」

「私が一人で行く。子どもたちはあなたたちに預けて行くからお願いね」

「それはいいですけど、おばちゃん、だいじょうぶ?」

「岸の岩伝いに歩くか、海を泳ぐか、とにかく何としても人のいる場所までたどり着いて助けを呼ばなきゃ。朝早く出れば昼までには着くと思う」

半日もかからないで村まで行けるとは思いますが、必ず救援隊を連れてすぐ折り返して来るという保証はありません。

何かがあってその日は戻れないということもあるかも知れません。

「すぐ助けを呼んで戻って来るつもりだけどね。もしもその日のうちに助けが来ないということがあっても、ここを動いたらダメよ」

「うん」

「万が一、その間に台風が来たりしたら、その時はテントを森の中に移して、台風が通り過ぎるまでじっとして待っているのよ」

「うん、わかった」

夏はいつ台風が来るかわかりません。

まして天気予報も知ることができません。

都会育ちの女子高校生二人と幼児とを無人の海岸に残して行くのも心配ではあります。

「夜は絶対に草むらの中を歩いたらダメよ、ハブがいるからね」

「はい、わかってます」

一応打ち合わせはして、あとは夜が明けるのを待って出発です。

この期に及んで、まだ私は水平線の向こうを見ていました。

時々小さな灯りが横切るのが見えます。

漁船が漁に出るのでしょう。

その度に、もしかするとうちの舟ではと、かすかに期待していたのでした。

 暗い水平線を見ながら考えていました。

もしも夫が最後まで帰って来なかったらどうなるんだろう。

牧場の住宅は、住み込み従業員とその家族のための管理棟なのです。

従業員が行方不明になったら、家族は退去しなければならないでしょうか。

もし、そうなった場合には、飼っている動物、ヤギ、ニワトリなどは誰かに引き取ってもらうことにして・・。

引越しの荷物整理だけでも一ヶ月はかかるだろうな。

転居先が見つかるまでは私が牧場の仕事をするという条件で管理棟に置いてもらうことにするか。

その後、いずれは親子3人で本土に戻る方がいいだろうか。

いやいや、しばらくは捜索を続けるから、この島の付近には滞在しないといけないのにどうしよう。

スーやんはどうなる?

父ちゃんと同い年だというのにまだ結婚もしていない。

気の毒に。

親御さんに何と報告したらいいんだろう。


・・・などと考えを巡らしていました。

夫が遭難したというのに何と冷静な判断。

あ、まだ遭難と決まったわけじゃないんですけど。

でも夜中まで待っても帰って来なかったので、もう助けを呼びに行くしかありません。

「夜が明けたらと思ったけど、村まで何時間かかるかわからないからもう出発するわね」

まだ暗いうちに焚き火の明かりで準備していました。

「おばちゃん、気をつけてね」

「うん、子どもたちを頼んだよ」

無人島から救援を求めに行くみたいです。

まあ、実際にそれに近い状態でした。

浜に残った私たちの方ももう食糧がないのですから。

水着の上に短パンを履いて、そのポケットに最低限必要な物を入れます。

テレホンカードと西表の知り合いの人の電話番号のメモを濡れないようにビニール袋にしっかりくるんで厳重にヒモで縛ります。

「おばちゃん、これを持って行って」

みほちゃんが非常用のビスケットを自分のカバンから出して来てくれました。

「これは非常用にあなたたちが持っていれば?」

「実は他にもお菓子を少し持っていたの。私たちの分もまだちょっとあるから」

「ありがとう、もらって行くね」

小さなビスケットのパックをポケットに詰め込みました。

泳いでいく私までも遭難しないとも限りません。

それにしても、さすがに女子高校生。

お菓子を忘れずにキャンプに携帯するなんて。

飲み水は持たなくてもいいだろうと判断しました。

来る途中に岸に滝が見えたのを覚えていたからです。

上陸すれば、滝と、海に流れ込む川があるはずです。

港からここまでにそんな川が2ヶ所くらいありました。

あとでそれは甘い考えだと判るのですが、この時には気付きませんでした。



足ヒレ、シュノーケル、水中メガネ、の三点セットを持ってザブザブと暗い海に入って行きます。

水深は腰の深さ。

海岸からあまり離れない距離で港の方向に向かって泳ぎ出します。

空は暗くても岸の方を見ると、山の輪郭が夜空にうっすらと見えています。

学生時代の水泳部の合宿では一日に一万メートルは泳いでいました。

記録を出すためにかなりのスピードで。

でも今はスピードよりも最後まで泳ぎ切ることです。



泳ぐうちにだんだん潮が引いて浅くなって来ました。

今日は大潮ではないので干潮になっても海面にリーフは現れません。

干潮時にリーフの上を走って渉るという作戦は使えません。

小潮だから朝の干潮は午前九時頃のはずです。

夜明け前に泳ぎ始めたから途中で膝下の水深になるかも知れません。

そうすれば海の中を歩けます。



泳ぎ続けるうちに夜が明けてきました。

この期に及んでもまだ時々後ろを振り返り、ボートが帰って来ていないか確かめていました。


どれくらい泳いでいたのでしょう。

いつの間にか空はすっかり明るくなって朝になっていました。

亜熱帯の夏の太陽は、日の出からすぐに高い位置に昇って照り付けてきます。

今までずっと岩場が続いていましたが、ここへ来て砂浜が見えてきました。

数十メートルに渡って白い砂浜が見えています。

上陸して休憩することにしました。

波打ち際に腰をを下ろし、みほちゃんにもらったビスケットをかじりました。

のどが渇いて水が飲みたくなって水を探しましたが、滝は大きな岩の転がった海岸よりずっと上の山の方にありました。

小屋ほどもある大岩をよじ登って水を飲むために滝の所まで行く気力はありませんでした。

目的地はまだまだ先です。



→遭難アドベンチャー その5につづく


↓毎回クリックありがとうございます
↓みなさまのクリックで順位が上がります
↓また2位になっています。
↓1日1回のクリックを
↓ここです


にほんブログ村 小説ブログ コメディー小説へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

野生児の妻

Author:野生児の妻
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード