遭難アドベンチャー その2



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おすすめは、 「アイ ハブ ア ハブ」


→遭難アドベンチャー その1からつづく


「スーやん」は父さんの高校時代の友人でプロのカメラマンです。

同級生ながら彼は独身。

身軽なこともあって、石垣に今まで何回も遊びに来ています。

登山やキャンプに慣れたスーやんがいっしょなのは心強いです。

牧場近くの海から荷物をボートに積んで西表に向けて我々家族とスーやんと出航です。

途中で波があれることも想定に入れて、ライフジャケットを着用。

と言ってもジャケットは2着しかありません。

本当は人数分ないといけないのですが、ルール違反はいつものこと。

舟から放り出されたときに一番心配な4歳の鉄兵にまず着せます。

大人用のジャケットは鉄兵の膝まであります。

もちろんゆるゆるです。

「これじゃすっぽ抜けちゃうよ」

海に落ちた時に脱げてしまっては意味がありません。

「よし、脱げないようにしっかり装着だ」

舟に積んであったロープでライフジャケットの上から胴体をぐるぐる巻きにしてしまいました。

「これで脱げないよ、安心だ」

なんだか簀巻きにされているようでもあります。

もう1着はきりんに着せたいところです。

でも2歳にもなっていない身体はあまりにも小さ過ぎます。

ジャケットは私が着け、きりんは私が背中にしっかり括り付けることにしました。

こういうことを考えてオンブ紐を持ってきました。

これで、もし海に落ちてもしばらくは親子で浮いていられます。

ライフジャケットさえあれば海岸近くまで泳いで進む自信はありました。

なんてったって元競泳選手。


デッキの上で簀巻き状態の男の子、小さい子を負ぶって日除けの手ぬぐい頬かむりの母親。

帽子は波しぶきとスピードのある風に飛ばされそうでデッキでは使えません。

甲板の端にいると、揺れたときに落ちそうで怖いので、舟の中央に寄って子どもとくっついて体育座り。

あれ、この光景・・・テレビか何かで見た覚えがある。

「ボートピープルだ」

かつて中国やベトナムから小舟に乗って亡命する家族は身を寄せ合って、こんな恰好だったとニュースや映画で見た記憶がありました。

おまけにうちで言うキャンプは汚れるのを覚悟で最初から汚い古い服装で来ています。

楽しいキャンプに行く途中なんですけどね。


「西表に近づいたぞー」

どうにか海を渡り切ったようです。

牧場からはすぐ目の前に見える西表島ですが、石垣島との間には石西礁湖と呼ばれる海峡があります。

「湖」という名が付いていますが、ここには北上する強い海流があります。

油断すると流されます。

西表では海岸線に沿って島の南に回ります。

石垣島とは反対側です。

定期船の出入りする大原港を右手に見てさらに海岸に沿って港や村から離れたキャンプ予定の無人の海岸に向かいます。

岩の岸が続き、時々小さな白い砂浜が見えます。

「あの浜?」

「いや、まだまだ先、もっと大きな浜だよ」

だいぶ港や集落から遠いようです。

「あれがトウフ岩だよ」

岸の近くに直方体の巨岩が見えます。

トウフのように四角い岩です。

「このトウフ岩まで来てやっと半分かな」

「これじゃ子連れで歩いて来るのはきついわ」

もしこのボロボロの恰好でそうしていたら、満州から命からがら引き上げて来た親子に見えていたでしょう。


ようやくこれがそうでは、と思われる白い長―い砂浜の海岸が見えました。

「これがウフバマね」

「そうだけど・・・・・」

うれしそうじゃありません。

「上陸できる?」

「ダメかも知れない」

先週の台風の余波で波が荒れています。

もう1日経てばもう少し静かになったかも知れませんが今は岸に白い波が打ち寄せているのが見えます。

「もうちょっと近づいて見るか」

「気を付けてね」

舟はスピードを落として上陸する予定の海岸にゆっくり寄って行きます。

岸はすぐそこになりました。

波は近くで見るともっと大きく荒く、このまま進んだら舟が転覆するか制御不能で岩にぶち当たるかだというのは素人の目にも明らかでした。

「こ、こわい」

「もどろう」


せっかく目的の浜まで来て、岸まであと数mという所まで近づいたのですが、ここは安全第一です。

命あってのモノダネです。

ボートは海岸に沿って元来た方向に引き返すことになりました。

港の近くまで来て、舟はまたゆっくりスピードを落としていきました。

千葉から来る従妹の高校生のアーちゃんとその同級生のみほちゃんは1日遅れて到着の予定です。

明日、西表の港まで来てそこで待ち合わせる計画です。


「どうせ明日はアーちゃんたちを大原港に迎えに来なきゃいけないんだ。いっそ今日はどこか港の近くで泊まることにしよう」

と言っても、民宿に泊まるとか、船着場のベンチとか、そういう文明の匂いのする所に泊まるはずがありません。

キャンプ家族ですから。

「どこか波の静かな・・・・」

「浜?」

「川だ」

舟は港に近い川に入り、静かに遡って行きました。

上流に行くと川幅は狭く、両側は木に囲まれて緑一色になりました。

「ここがいい、今日のテントを張る所」

舟を岸に付けて上陸すると林の中はほぼ平らな場所です。

「木陰で涼しそう」

さっそくいつものようにテントを張ってキャンプの準備です。

海で魚を獲って食べるのは、明日アーちゃんたちと合流してからのお楽しみとなりました。

川辺でのキャンプもなかなかいいもんです。

テントを張るとさっそく子どもたちは川でのお遊びです。

まだ一人で歩けないきりんは岸の木に捕まらせて水に入れ、水遊びの好きな鉄兵は岩の上を流れる川を滑り台のように流されて喜んでいます。

何度も水中滑り台を繰り返して遊んでいます。

きりんも浮き輪にはめて流れの静かな淵に浮かんで喜んでいます。

お腹が空くと上がって来て昼食を取り、休む間もなくまた川で遊びたがる鉄兵。

室内でパズルや絵本ばかりで過ごしていたのと同じ子どもとは思えません。

やはり自然の中で遊ぶのは楽しいのでしょうか。

暗くなりかけてやっと上がって来ます。

夕食を食べて焚き火のオレンジの火を見ているうちにおとなしくなったと思ったら、いつの間にかテントに入ってタオルケットにくるまって眠っていました。

「あら、もう寝ちゃった」

「川で長いこと遊んでいたからね、疲れたんだろう」

「まだ8時よ」

いつもなら宵の口、でも林の中のキャンプでは暗くなったら眠くなるのです。

原始人には昼夜逆転はなかったことでしょう。

林の中は木に囲まれているので日陰ですが風がなく、そういう場所は夜になると天気によっては困ることがあります。

ブヨの襲撃です。

蚊より小さく、でも刺されると猛烈に痒くなります。

眠っていられません。

雨が近づくような蒸し暑い夜に大量発生して人間を襲います。

頭の中、首筋、手、足と衣服から露出している部分すべて攻撃の対象になります。

「か、痒いヨー」

もがいても何しても襲われ続けます。

「寝袋に入れ」

肌を露出しないように靴下を履き、タオルで頭や首をガードして寝袋、タオルケットなどに潜り込んでいるしかありません。

子どもたちも寝袋に頭まで押し込んで多少息苦しいのもガマンです。

夜半過ぎにはブヨの大群の襲撃は終わったようでした。

翌日はまた、お腹が空いてご飯を食べに上がって来る以外はずうっと川遊びです。

健全な子どもの生活です。

このまま川のキャンプをしていたら、安全で楽しいバカンスだったはずなのに。

ああそれなのに、それなのに・・・。


 →遭難アドベンチャー その3につづく



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