ひ弱な野生児 その7 公園デビュー



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ひ弱な野生児 その6からつづく


近所に家がないことをいいことに、夜通し騒いで遊び、昼は一日中昼寝。

外に出る時も服を身に着けず・・・。

と、野生的というより野放図に育って行きました。

周りに友達もいないので比較することもできなくて自分の行動が変わっているとも思いません。

いつまでも接する人間が両親のみというのも健全とは言えません。


街へ連れて行って公園で遊ばせようとしました。


海に近い芝生の公園は静かなものです。

「誰も来てないわねえ」

それもそのはず、石垣島は若いお母さん方の多くが仕事を持っています。

保育所も、私立の他、保育料の安い市立保育所というのが小学校とほぼ同じ数だけあります。

公園に子どもを遊ばせに来る人はほとんどありません。

保育所でなくておばあちゃんに預けている家庭もありそうに思えますが、そのおばあちゃんも働いているのです。

まあ、遊んでいればそのうち誰かくるでしょう。

「滑り台があるよ、行こうか」

手すりにつかまって滑り台の階段を登り始めた途端、

「アツイヨー!」

鉄の手すりは強烈な日射しに焼けて、触れるとヤケドしそうなくらいに熱くなっていました。

ベンチに腰を下ろしても暑い。

「こりゃ、日中は外で遊ぶ気にならないわ」

保育所に行っていない子も家の中で遊んでいるのでしょう。

夏場は日が沈むのが午後8時ころですから、夕方になっても涼しくなりません。

ちなみに、市の中央にある大きな公園は森の遊歩道や吊り橋もある自然公園みたいな所ですが、閉門は午後9時になっています。

午後6時や7時では夏はまだガンガンに日が当たっていて帰る気にならないのです。

こうして遊ぶ相手もないまま孤独な幼少期を過ごすことになるのでした。

大草原の子育てはさびしいものです。

周りに同世代の子どもが一人もいないということは、子どもにとっていいこととは言えません。

友達とケンカしたり、オモチャの奪い合いがあったりして社会性が育つはずなのです。

他人との係わり合いがすっぽり抜けてしまっています。

接する人といえば両親と従業員、それと季節によって1~2ヶ月牧場に滞在して実習する学生です。

多くは20歳前後の大学生ですが、子どもから見ればこの人たちといちばん年が近いのです。

実習生のお兄さん、お姉さんたちは自然が好き、動物が好き、と言う人が多かったのです。

そのせいか子どもによく付き合って遊んでくれるやさしい人たちでした。

友達に飢えていた鉄兵は大学生にすぐなついてピタリとまとわりついて離れません。

実習が終わって本土の大学に帰る日になると空港に送りに行くのに鉄兵もいっしょについて来ました。

見送りにの人と別れて搭乗口に向かう学生の後について行こうとする鉄兵。

「あ、ここからは入れないよ」

止めるのを振り切って、学生につかまって強引に出発ゲートをくぐろうとします。

当然、係員に止められて入れません

悔しそうに涙をこらえています。

離陸して空港から帰るときからずっと機嫌が悪い鉄兵。

夜になって珍しく地面に転がって手足をバタバタして大泣きしていました。

「ワーン、またボク、ひとりぼっちになったー!」

そばで見ていた私も、カウボーイたちも、何と声をかけていいかわかりません。

「また来年遊びに来るよ」

「春休みになったら来てくれるよ」

と言っても、小さい子には1年先も百年先も同じことです。

〝遠い将来〟などというものは子どもにとってはないものに等しいのです。

時間の流れる速さはおとなと子どもとではちがいます。


春と夏の長い休みには数人ずつ実習生が来ます。

出会いも多いけど、実習の終わりには辛い別れがあります。

実習生やアルバイト学生が去って、広い牧場でまた鉄兵は一人ぼっちで遊ぶ毎日でした。


一人ぼっちの鉄兵の唯一の友達は家の裏にある大きな桑の木でした。

鉄兵が産まれる2年前にクワの木を家の西側に植えたのです。

そのときはまだクーラーがなく、夏の西日避けに木の日陰が欲しいと思って植えた時はまだ小さな苗でした。

亜熱帯の高温多湿の気候が合っていたのでしょう。

クワの木はぐんぐん大きくなってあっと言う間に屋根まで届く大きな木になりました。

歩き始めるようになるともうこの木に登って遊ぶようになり、木の股に腰掛けて景色を見るのが好きでした。


毎年暑い季節には桑の実がたくさん成って、木に登って摘んでは食べていました。

一人でいてもこの桑の木に登っていると落ち着くようでした。

数年後には遠くからでもよく見えるほどの大木になり

「この木はボクのトモダチ」

と公言していました。



木が友だちのちょっとオタクの鉄兵を連れて里帰りすることになりました。

飛行機の料金は3歳未満の子どもの同伴は無料なので、オムツも取れているのなら気軽に連れて行かれます。

おじいちゃん、おばあちゃんと顔を合わせて、さっそく都会の駅前の公園へ連れて行きます。


ブランコも滑り台も砂場も小さい子でいっぱい。

砂場でトンネルを掘ったり山を作ったりしている子たち。

その隣で砂のお団子を作っていた鉄兵、他の子が作ったトンネルに近づくといきなり、

グシャッ! 

「あ、こわしちゃった!」

「オマエ、なにするんだよ、ボクのトンネル」

せっかく作ったトンネルを突然理由もなく壊されて相手も本気で怒っています。

ケンカが始まりました。

でも鉄兵はどうしてケンカになったのか分っていないようです。

同世代の子どもと接したことがないからです。

相手にやられていやだと思うことを経験しないと、相手が何をされるといやがるか、を覚えないのです。

子どもは子どもどうしで遊ばないと学べないことがたくさんあるのです。


ケンカは治まりましたが、もう一つ、公園で気軽に友だちを作って遊べない理由がありました。

何年間も社会と離れた牧場で暮らしていた私には知らないことがあったのです。

都会の公園では幼児の意図しない大人の人間関係がすでにできあがっていたのでした。


気がつくと、遊具で遊ぶ子どもたちを遠巻きに見ながら、ベンチでおしゃべりをしているオシャレなママさんたちは、いくつかの固まりになって女子学生のような会話をしています。

隣り合ってベンチに腰掛けていても、グループがちがえば話しかけることもしません。

子どもたちもお母さんのグループの子どうしで遊んでいるようです。

ここでやっと思い出しました。



まだ公園で鉄兵を遊ばせる前、同じ年頃の子を持つ東京の友人が聞いてきたのです。

「鉄兵クンは〝公園デビュー〟は無事にすみましたか?」

そのときは意味がわかりませんでした。

そう言えば、雑誌か何かで読んだような気がする。

民放のおもしろいワイドショーも見られない石垣ですからそういう情報にも疎かったのでした。

「そうか、これが公園グループ、公園デビューというものか」

グループに入れなかったママの子どもは遊ぶ友だちがいないということでしょうか。

もし途中で仲たがいなどしてグループからはずれてしまったら、その親子はどうなっちゃうんでしょう。

特にお母さんがその公園に行くのが気まずくなっちゃいますね。

そんな想像をしながら、話す相手もない私は、砂場で一人遊ぶ鉄兵の姿をボンヤリ眺めていました。

すぐ隣の私よりひとまわり以上も若いお母さんたちのグループは、カタログショッピングの話などをして笑っています。

アイドルのようなカワイイ甲高い声ですが、おっとりとした話し方です。

笑い声も地声より1オクターブ高い声じゃないかと思えます。


夕方、陽が落ちる直前になると、さっきのグループの一団がベビーカーを押して子どもたちを連れて、ぞろぞろと公園の隣のファストフードの店に入って行きました。

公園の親子たちは次々と帰って行き、ついに誰もいなくなった公園に鉄兵と私だけが残されました。

でもそんなことを気にするようすもない鉄兵は、滑り台、ブランコを一人で自由に使い放題に使って楽しそうに暗くなるまで遊んでいました。

牧場に戻ってからは家の周りの大きな木にロープをぶら下げて手製のブランコを作ってやりました。

相変わらず鉄兵は一人で空想の世界に入ってブツブツ独り言を言いながら遊んでいます。



ひ弱な野生児 その8につづく


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