ひ弱な野生児 その3 誘拐ではございません



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ひ弱な野生児 その2からつづく



赤ちゃんをかついで走って行ってしまったのであきらめて待っていました。

何分も経たないうちに近所の奥さんが慌てて小走りに近づいて来ます。

「あ、あ、さっき男の人がお宅の赤ちゃん抱いて出て行ったけど!・・・」

奥さんは焦っています。

「はい」

静かに答える私。

「あの人・・・」

「ええ」

「赤ちゃんの・・・パパ?・・・なの・・・よ・・ねえ・・・」

自信なさそうに、ちょっと不安げに、遠慮がちに私の顔を見ながら質問しています。

表情から判断しようとしています。

誘拐犯人だったら緊急事態です。すぐに教えてあげなきゃ・・・と思ったのでしょう。

でも赤ちゃんを見に来たパパならそれは失礼に当たるからウッカリ変なことは言えないし・・・。

どうしたらいいか判断に迷う所です。

ご近所に心配かける真冬のお散歩です。


やっと戻って来ました。

子どもは久々のお散歩で適度に疲れたようです。

ぐっすり眠ってしまいました。

父さんの方は、歩き回ってすっかり暑くなりました。

室内に入ってすぐに上着を脱いだのですが・・。

「あれ!まあ、半袖?」

「うん、寒くないもん」

「石垣はそうだったろうけど、ここは亜熱帯じゃないよ」

「寒くないよ、どこも暖房効いてるし」

上着の下は半袖Tシャツ1枚とは。

しかも古ぼけていつも牧場で仕事に使っていたボロのTシャツです。

「もうちょっときれいなシャツがあったでしょ」

「これもきれいだよ」

「汚いよ、シミだらけじゃないの」

「ああ、これは洗っても落ちないの。洗濯してあるから汚くないよ」

そういう問題じゃないんだけどなあ。



『ターザンも、都会に来ればタダの○○』

という川柳の通り、カウボーイ父さん、都会が似合いませんねえ。

「そうそう、羽田から来る途中、浜松町でキョロキョロしていたら、『にいちゃん、仕事あるよ、働いていかない?』って知らない人から声かけられたよ」

「それって日雇い労働の呼び込みじゃないのよ」

地方から当てもなく東京に出てきて職もなくボンヤリしている人に見えなくもないです。



親子のご対面も数日間で、カウボーイは帰る日が来てしまいました。

「早く帰って来てくれよ」

別れが名残惜しいのは女房よりも幼いわが子に対してのようです。


 牧場の仕事から解放された私は子育てに専念できて母乳もよく出て子どもとゆったり過ごす時間ができました。

初めての子でしかも長い間待ち望んでできた子、ということでつい甘やかしがちになります。

ベビーベッドに一人で寝かせるとさびしがって泣くので添い寝になってしまいます。

大きいお腹で運んできたベビーベッドですが、オムツ替えの時ばかり活用していました。

寝相の悪い私なので、寝返りを打ったはずみに、横に寝た赤ちゃんをつぶしてしまうんじゃないか、と出産前は心配をしていたのです。

それには理由があったのです。




中学時代、修学旅行の時に隣に寝た同級生は翌朝になるとひどく不機嫌な態度になるのでした。

「あなたって、ホントに寝相が悪いのねっ!フン!」

夜中に何度も蹴られたと言っていました。

それきりその日はほとんど口を利いてくれません。

私は知りません。

眠ってしまえば何も覚えていないのです。

寝ている間のことは責任が持てません。


知らない間に子どもの上に乗ってしまったら・・・。

ところが不思議なことに母親になると無意識のうちにこどもを抱いたままおとなしく眠れるものなのです。



牧場でアヒルを何十匹も放し飼いにしていました。

アヒルは倉庫の棚の上など、好きな場所に勝手に巣を作って卵を産みます。

一度に十個以上の卵を産んで温めます。

ヒヨコになるまで約1ヶ月。

親鳥は1日に1回エサを食べて水を飲むに来る以外はほとんど一日中卵を抱いています。

休む時も羽を拡げて

卵を守り、雨が降っても卵にかからないようにカバーしています。

そしてヒヨコに孵ると今度は羽の下にヒヨコを置いて外敵から守っています。

あんなに朝も夜も羽を広げて毎日よく疲れないなあ、とアヒルの親に同情したものでした。

今は私がそのアヒルと同じことをしています。

アヒルに同情する必要はなかったのです。

あのアヒルは子育てをして幸せだったのでしょう。



牧場の動物から学んだことはたくさんあります。

アヒルは水鳥なので、水に浮かぶためにいつも羽に脂を塗っています。

お尻に皮脂腺があって、そこから出る脂をクチバシで体中に塗って羽繕いをします。

それで雨に濡れても平気な顔をしています。

ヒヨコはまだ皮脂腺が発達していないので親鳥がクチバシで塗ってやります。

といっても、予防接種のように一羽ずつ順番に塗っていくわけではありません。

親のそばから離れそうになったヒヨコを巣に押し戻したり、可愛がったりするときに親の脂がヒヨコの身体に付くようです。

鳥にとってクチバシは手の代わりなのです。

ヒヨコの方も、親鳥の背中に乗って遊んだり、羽の下にもぐったりしているうちにも自然に親の脂が付くのでしょう。

こういうことになぜ気が付いたか、というと、「匂い」です。

アヒルの脂は独特の匂いがあって、ヒヨコも同じ匂いがします。

ところが孵卵器でかえしたヒヨコや産まれてすぐに親と離れたヒヨコにはこの匂いがないのです。


親に育てられたヒヨコは多少の雨でも元気に育ちます。

いつもお母さんが羽で守ってくれています。

雨がかかっても、脂を体に塗ってもらっているから水をはじきます。

濡れても親が温めてくれます。


対して親鳥と離れて人工飼育しているヒヨコは水に弱いのです。

ヒヨコ小屋にちょっと雨が吹き込んで体に水がかかると、油気のない羽毛は濡れそぼって、体は冷え切って震えています。

すぐにドライヤーで乾かしてヒーターで温めてやらないと死んでしまいます。

人間も動物もスキンシップが生きていく上で必要なのです。



アヒルを見習って私も母子べったりで一冬過ごしました。

毎日のんびりとしていると不思議なもので、高齢出産なのに母乳がよく出ます。

定期的に飲ませているので、おっぱいが張ってくる頃には赤ちゃんも飲みたくなる時間帯で泣き出します。

お腹にいた時はへその緒でつながっていた母子が、産まれてからは今度はおっぱいでつながっているのだと実感する時です。


つながっていると言えば、・・・


妊娠中は、辛い物を食べるとお腹の子に影響するのでは、と心配してくれる人もありましたが、

「胎盤で唐辛子はろ過される!」

などと適当な理屈をつけて激辛タイ料理をパクパク食べていました。

母乳にもお母さんの食べた料理の味が影響するとも聞きましたが、

「ピリ辛の母乳なんてなるわけはない!」

とやはり構わずに食べていました。

ただ単に自分が食べたかっただけですけど。


そしてその歳に猛威をふるっていたインフルエンザが下火になった春先に、親子で亜熱帯の牧場に戻って行きました。

それから大自然の中でのびのびとした育児が始まる・・・・・・はずでした。

ひ弱な野生児 その4につづく



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