カウボーイ募集中 その6 冷凍された恋人



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→カウボーイ募集中 その5からつづく

新しく来た「野鳥さん」はここの牧場の生活が合っていたようです。

ヨシダさんが辞めたあとの宿舎に入ってもらいました。

そこはデスク君が3日間過ごしていった部屋でもあるのですが。

実はヨシダさんが牧場に就職してから、古い倉庫を改造して人が住める小屋に作り直したのです。

牧場の住人が協力して自分たちで地面を掘ってパイプを通し、水道を引きました。

ブロックとセメントで流し台を作りプロパンガスのコンロ台も作って台所にしました。


このトタン屋根の倉庫、窓やドアは手作りなのでアルミサッシのように密閉はできません。

隙間だらけなのがかえって夏場は涼しく、時にはフクロウなどの野鳥が飛び込んで来ることもあります。


「野鳥さん」この小屋がすっかり気に入ったようです。



「ねえ、前から聞きたかったんだけど、どうして前の会社辞めてここに来たの?」

「一番の理由は、満員電車が耐えられなかったんです」

なるほど、都会の通勤ラッシュ時の混雑はすごいですからね。

この石垣島も街中はある程度車も人も行き交ってにぎやかですけど、牧場まで来れば人混みとは無縁です。


野鳥さんは、野鳥だけでなく野生生物一般や天体観測にも興味がある人でした。

この地域にしかいないカエルや虫の声に聞き入ったり、季節には浜辺でウミガメの産卵を調査したり、晴れた夜はは星の観察と、ここの環境は彼の趣味を満喫するのに最適でした。

夜は外は街灯も近所の家もなく真っ暗ですから星の観察には最適です。


体力も人並みにあるみたいだし、夜逃げはないでしょう。


野鳥さんが来てくれたおかげで私も少し楽になりました。

野鳥さんが来てすぐに私の妊娠がわかって、ヒロシ君にも無理を言って、あと一人従業員が見つかるまでもう少し長く働いてもらうことにしました。


「野鳥さん、本当に鳥が好きなんですね」

「ハイ」

寡黙な野鳥さん、必要なこと以外ほとんど話しません。

「人間と鳥、どっちが好き?」

「鳥ですね」

時々道路で車にはねられて倒れている野鳥の死骸を見つけることがあります。

そういう時は必ず拾って帰って野鳥さんにプレゼントします。

普段はあまり笑わない野鳥さんもその時だけは実にうれしそうです。

「それ、どうするの?」

「観察します」

野鳥さん、恋人のように鳥の死骸を優しく抱いて、柔らかい羽をなでています。

「観察した後は?」

うちの野生児の「カシラ」なら焼き鳥にして食べるというところです。

「しまっておきます」

「腐っちゃうよ」

「大丈夫です、冷凍しておきますから」

というわけで、野鳥さんの部屋にある冷蔵庫の冷凍室は野鳥の死体で一杯です。

「溜めておいてどうするの?」

「時々出して眺めます」

「それで抱いて寝たりするの?ククク・・・」

「そういう時もありますね」

へ?

変わった人です。こういう純粋な人はこの牧場ではからかいの対象になります。

「あのさあ、チベットの方では、鳥葬っていうのがあるんだって」

「はい、聞いたことがあります」

「人が死ぬと山の上に亡骸を置いて、その肉を鳥に自由に啄ばんでもらうんだってね」

「ええ」

「どう?そういうの、鳥が大好きなら自分もそういう葬式にしてもらいたい?」

「そうですね、いいですね」

はあっ?まじめな顔して言わないでよ、野鳥さん。



野鳥さんは自然やアウトドア以外にはあまり興味がなく、娯楽やオシャレにお金も使いません。

「東京の会社ではいいお給料だったんでしょ。こっちの方が給料安くて困らない?」

「東京にいた時より給料は半分くらいになりましたけど、貯金は東京にいた時より多くできますね」

そうかも知れません。ここではお金を使うことがないからです。

店も、自動販売機さえないのです。



野鳥さんの部屋にはテレビもありません。

「テレビ見たくないんですか?」

「はあ、別に」

ラジカセはありました。CDもいくつか置いてあります。

「どんな音楽聴いているの?」

CDを見てみると、

『日本のカエルの声全集』

『クジラの歌』

『日本の虫の声、スズムシ、コオロギ、クツワムシ、ウマオイ、・・・』


「何だ、これ・・・動物の声ばっかり・・・」


その時、部屋の中を鳥か何かがスーッと飛んで行きました。

「!・・・今の何?」

「フクロウですね」

「飼っているの?」

「自然に入ってきて居ついたのでそのままにしてあります」

「かわいいの?」

「ええ」

うれしそうです、野鳥さん。長く住んでいてほしい人です。



次回につづく


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