カウボーイ募集中 その5 趣味は野宿(?)



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カウボーイ募集中 その4からつづく


デスク君に夜逃げされてしまいました。

「逃げられたよー」

「夜逃げだ、いや、昼逃げだ」

「それはどうかな。気が付いたのは昼間だけど、夜中のうちか明け方に逃げたのかも知れない」

「そんなにいやだったのかな、牧場の仕事」

「いやなら就職希望しないだろう。体が続かなかったんかなあ」

「まだ石垣島からは出てないはずだよ」

「車で逃げるったって今日はフェリーは出ないぞ」

石垣にフェリーが入港するのは週1~2回でした。次に入港するまで数日間ありました。

「港で待ってたらやって来るぞ、きっと」

「止めとけよ、そんなにいやな者を無理に引き止めても仕方ないだろう」

「そうだね」

夜逃げと言っても牧場にとって実害があったわけではないのです。

金品の持ち逃げをしたわけではないですし。

デスク君にしても3日間分の給料をもらわずに行ってしまったし、石垣までのフェリー料金を払って来た上に、また帰るフェリーの切符を買うわけです。

厳密に言うと、石垣に来る往路分のフェリー代に相当する額のお金は、本社から支度金として給付されていたのでした。

でも引越しにもお金はかかったでしょうし、デスク君としては何も得はなかったのでした。

本社は支度金を払ったのが無駄になってしまいました。

これは面接した本社の役員がデスク君の体力を見抜けなかったためと思うしかありません。

雑誌の募集広告に美辞麗句並べ立てたせいではないと信じてます。




「今頃どうしてるかなあ」

「港の近くにいたら見つかると思って車でグルグル逃げ回っているのかな」

「次のフェリーが出るのは来週だな」

「それまで港からなるべく遠い民宿にでも泊まってるんじゃないか」

「どっちにしても車を持って島からは出られないよ」

牧場の者も牛のエサを買いに行ったり、セリ市場に牛を出荷するための申し込みに農協に出かけたり、と何日に1度かは街に行きます。

どこかで会うかも知れないのです。

見つかるのを心配して、フェリーが出航するまでハラハラして隠れているのでしょうか。



「そうだ、履歴書の連絡先っていう欄に実家の電話番号が書いてあったな」

「電話してみよう」

デスク君のお母さんが電話に出ましたが何も聞いてないそうです。

かえって心配させてしまいました。


翌週にはフェリーが入港していました。たぶんこの船に車を積んで帰って行くのでしょう。

あとで牧場の宿舎をよく見たら、デスク君に貸した牧場の作業用のツナギ服がありません。

ふつうなら出て行く時に脱ぎ捨てて行くはずです。

おそらく、夜中か夜明け前に目が覚めて、着替える間もなく慌てて車を出して行ったのでしょう。朝のエサやりの時刻が来る前に。

思えば気の毒なデスク君です。

前の会社は辞めてしまい、家財道具と希望と夢を持って、正社員で雇ってもらうことになって喜んで来たのに。

わずか三日で夢破れて夜逃げせざるを得なくなったのです。

どんな傷心の思いで牧場を出て行ったのでしょう。


ちょうどデスク君が到着した日に産まれた子牛がいました。

記念に、とデスク君の名前を子牛に付けてやりました。

でもこの子牛はなぜかひどい虚弱体質で、1ヶ月もしないで死んでしまったのです。

名前のせいではないと思いますが。


デスク君と同じ頃に、本社で面接した人がいました。

ヒロシ君は旅の途中で、従業員の決まるまでの間だけ、という約束でしたから、本来ならデスク君とこの方と二人の従業員に来てもらう予定でした。

東京の人で会社勤めをしていたのですが、動物が好きで野外活動にも興味のある人です。

今度は大丈夫でしょうか。

履歴書を見ると、動物の専門学校を卒業していますし、馬の牧場で働いた経験もあるようです。

あとで聞きましたが野鳥の会にも入っているそうです。

趣味のところに「野宿」と書いてあります。

野宿ですよ、野宿

キャンプでなく野宿・・・。


デスク君のフェリーが出て行って、入れ替わるようにその人は来ました。

車は持って来ていません。

衣類や本などの荷物は事前に宅配便で送って来ていました。


「どうぞ、よろしくお願いしまーす」

(どうか今度こそ逃げられませんように・・・))

「あ、はい、はじめまして、よろしくお願いします」

デスク君のことは言わないわけにはいきません。どうせいずれ分かることでです。

「もう一人従業員が来ているはずだったんですがね・・・」

「そうだと聞いていました。もう働いていますか?」

「実は、先週来たんですけどね・・・今はもういないんです」

「は?」

「着いて三日で夜逃げしちゃったんですよ」

 「え・・・!!・・・」 

「野鳥の会」の新人従業員の方、口を開けたまま固まってしまいました。

デスク君が体力的に無理だったことなどすぐに説明しました。

理解してもらったとは思いますが、「野鳥さん」にとってはだいぶショックだったようです。

「あなたは夜逃げしないでくださいよ」

「ええ、まあ、夜逃げはできませんねえ」

それはそうです。

車を持っていませんし、送って来たたくさんの荷物を持って徒歩では逃げられません。

それとも山へ逃げて「野宿」するでしょうか。

いえいえ、牧場の生活や仕事はそんなに辛いことばかりではありません。動物や自然が好きな人ならきっと気に入るはずです。


カウボーイ募集中その6につづく



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<長崎のゆかりさん
コメントありがとう
たくさん話したいこともあるのでメアド教えてください

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