赤ちゃん礼讃 その8

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赤ちゃん礼讃 その7 からつづく

クリニックの先生の指示通りに、毎日ボロボロに汗をかいて働いていたある日・・・。

「私、病院行って来ようと思うんだけど」

「どうかしたか?」

「あのさあ、今まで順調だった生理がもう1週間もないんだけど」

(いよいよかな?ドキドキしますねえ)

「ふうん、どうしたんだろうね。なんか悪い病気じゃなきゃいいけどねえ・・・」

(あら、ふつうは、『ホントか?!』とか言って期待するんじゃないの?こういう場合。それとも男はニブイの?)


実は私には勝算がありました。

3ヶ月前のことです。



「もうすっかり内膜症は治ってますよ」

「先生、本当ですか?」

「よかったですね。順調に排卵があるし、今から投薬を止めたら3ヶ月くらいで妊娠しますよ」

「ありがとうございます」


そう言われたのが3ヶ月前、ということは・・・。

****************

島の病院の産婦人科は込んでいて長い時間待たされます。

「心配だからオレもいっしょに行くよ」

とついて来た夫は総合の広い待合室で座っています。


検尿してしばらく経ってから呼ばれました。


「ええっと、尿検査では一応、妊娠反応プラスになってますけどねえ・・・」

看護師さんは慣れた調子で淡々と、穏やかに告げてくれました。

「え?え!は、アハ、あ、そ、そうですか、ウフ、ウフ」

冷静を装っても顔が自然とほころんでしまいます。


産婦人科で妊娠がわかったら自分はどんな反応をするだろう、とかねてから想像していました。



「せ、先生、ほんとうですか!!あ、ありがとうございますう、ウウウウ」

と、うれしさのあまり泣き崩れる・・・・・


・・・・のかなあ、ドラマみたいだけど。

などと思っていたのですが。


現実には顔がヘラヘラと慢心の笑みになってしまうのが気恥ずかしくて、口を無理に結んでいました。

その顔で診察を受けたものだから頬がヒクヒクしてしまい、余計に恥ずかしくなりました。

「妊娠プラスですけど、もう少し後にならないと胎児の形がエコーに映らないんですよ。また来週来てください」

「は、はい、ありがとうございます」

早く顔中で笑いたかったのでそそくさと産婦人科を出てきました。

子沢山がふつうのこの島では、子どもができた、ということは特別にめでたいことや珍しいことではなく、ごく当たり前のことなのでしょうか。

いえ、私くらいの年齢なら、当然4人目か5人目の妊娠と思われたのでしょう。

それであまり大げさでない対応だったのかも知れません。

それでも私たちにとっては記念すべき受胎告知なので、あまり軽々と、

「はいよ、ラーメン一丁あがりっ」

みたいに日常的な会話にはしたくなかったのでした。

でもまあ、吉報でよかったです。


総合待合室に行くと、夫が不安げにこちらを見ています。

大きな待合室ですが、いつもながらぎっしり込んでいます。

当時は島で唯一の総合病院だったので、外科、内科、耳鼻科など、外来の患者たちとその付き添いの人たちで、受け付けと会計窓口の前の待合室はごった返しています。

ざわざわした待合室の奥のベンチの夫にVサインを出してニコッと笑い、合図を送ります。

『やったね!』

という口元で。

普通はこれで分かると思うのですが、彼はいぶかしげにこちらを見たまま突っ立っています。

(アレ?わからないかな、Vだよ、Vサインだよ、V、V)

顔の横でブイブイやって合図を送っているつもりでした。

まだ彼はまじめな顔でずうっとこちらを見て立ったままじっとしています。





赤ちゃん礼讃 その9 につづく

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