キャンプへ GO その3





 
その2からつづく

今朝、石垣の牧場を出発した時は、服装は山歩きでも、ほとんどの人がぞうり履きのままでした。
まだまだ乗り物で移動し、本格的登山の開始までは時間があるからです。

「まだ靴は履き替えなくていいの?」
キャンプリーダーの夫に一応聞いてみます。

「まだいいよ、今から白浜までバスに乗るんだから」

夫は西表キャンプは慣れているし、高校、大学と山岳部。

高校のときは山岳でインターハイ出場、大学のときは長○県の国立信○大学山岳部出身というツワモノ。
キャンプの時は彼の意見は重視されます。

今回のキャンプ参加者のうちほとんどが素人みたいなものです。

牧場に泊まりこみでいたミイちゃんは野外活動には興味がある娘ですが実際の経験は少ないし、
「イトマン」さんはキャンプというのを勘違いしてるみたいだし、力持ちのKさんは秋田の田舎育ちで山は得意なようですが、雪国の山と亜熱帯のジャングルとでは勝手がちがうでしょう。
私はというと、都会育ちで結婚するまでこういう経験はなかったし、獣医のO先生は元体操部で身軽そうですが、東京育ち、数年前に東京の大学を出たばかりだからジャングルには慣れているとは思えません。

「ここから歩くんじゃなかったか」

もともとキャンプに乗り気でなかった私は計画の詳細にもあまり興味がありませんでした。
早く言えば他人任せ。

西表島の船浦港に到着しても、ここからすぐ歩き出すわけではありません。
定期船会社が運営するマイクロバスに乗って、集落まで、あるいは途中の好きな所で降ろしてもらえます。
バス代は無料。

今日はここから30分ほどの距離にある白浜港という所まで行きます。
白浜にも石垣から来る船はありますが、石垣―白浜を結ぶ定期船は本数も少なく、時間帯も限られているので、今日は船浦港までの定期船に乗って、そこからバスで陸路ということにしました。

白浜も船浦よりさらに小さく静かな港です。
バスから降りた観光客や地元の人たちが集落の方に歩いて行ってしまうとほとんど人が居なくなります。
港に昔からある1軒の売店と、そこにサンダル履きで歩いてアイスキャンデーを買いに来る子どもの姿を見ると近くに村があることを感じさせてくれます。

ここでみんな一度重いリュックを下ろし、しばし休憩。

「オーイ、トイレ行きたいヤツ、ここでしておけよ」

夫はそういうと、自分はリュックから財布を出してテレホンカードを持って公衆電話に向かいました。

ここから近くで船を持っている人に電話をして迎えに来てもらいます。

ボートをチャーターして川を遡り、これからのジャングルツアーの歩き出しの地点まで送ってもらうのです。

「すぐ来てくれるってよ」

ここで靴に履き替える人もいましたが、リーダーはまだぞうりのまま。
ここはベテランの真似をしておくか。

数分待って到着した小さなボートににもつを載せて人間も乗るとほとんどいっぱいになりました。
しばらく海岸に沿って進み、マングローブの茂みが続くと河口です。
西表の川はどれもマングローブがあって大自然そのものという感じです。

「アマゾンのジャングルに来たみたいだね」
「アマゾン行ったことあるのか?」
「いや、ないけどさ、フフフ」
「ふふん」
いつもは強面の夫もうれしそうに鼻歌です。
キャンプにいるときが一番生き生きしているように思えます。

ボートは川に入るとガクンとギアを落としゆっくり進みました。
上流に行くに従い、川幅はだんだん狭くなっていき、両側のオヒルギ、メヒルギなどのマングローブがボートの近くまで来ています。
水深もそれに連れて浅くなっているはずです。川の水は茶色なので川底は見えませんが、船長は地元の川を知り尽くしているのでしょう。右に左に見えない川底の岩を避けるように進んで行きます。

ボートのスピードはさらにゆっくりになって行きます。
最後にはエンジンを切って惰性で進みます。
川面の水がボートの側面にチャプンと当たる音、船長が操る長い木の棒がボートの縁にゴゴンと当たる音以外は、マングローブの向こうのジャングルからの音、というか気配です。

ここは日本なのでしょうか……


ここまで来るとキャンプに興味のない人でもドキドキしてきます。

キャンプ勘違いのイトマンさんも顔が輝いて見えます。
きっとワクワクしているのでしょう。

数時間後に彼に訪れる不運をまだ誰も知りません。

周囲のジャングルの木々の葉も一昨日の大雨できれいに洗われて光っているようです。


                   →その4につづく
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コメント第一号

ありがとうございます
毎日UPできるかわかりませんけど、少しずつ書いていこうと思います
よろしくお願いします

続きが楽しみです。

コメントはこちらでしたね。
拍手のところに入れてしまいスミマセン。。
3話目にしてイトマンに愛着が沸いてきました。
何が起こるのか。。
楽しみです!!
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