アイ ハブ ア ハブ その11


アイ ハブ ア ハブ その10 からつづく

テッちゃん、まだ十分に歩けはしませんが、元気に生きていました。

「よかった、無事だったか」

「何が?」

キャンプに残った方は、ここでは何の刺激もないし、することもなく平和で退屈だったわけで、下山組の人の心配がわかりません。

「来る途中にヘリコプターが上を飛んでてさあ」

「うん」

「心配したんだよ」

「はあ?・・・?」

テッちゃんも含めてテントの私たちはキョトンとしています。


この日、応援隊の持って来てくれたふんだんな食糧のおかげで久々にゆったりした気持ちで食事ができました。

みんなが来てくれてにぎやかにもなったし、急に心強くなりました。

「テッちゃん、どうだ、足の具合は?」

テッちゃんの足の腫れは徐々に引いてきていました。

「靴は無理でもゴムぞうりなら履けるくらいになりました。ゆっくりなら歩けます。」

「そうか、よかった」

「これで下山できますね」

この二日間、川向こうのテントで一人で寝ていた野田君もうれしそうです。

「今夜はもう一晩ここに泊まろう。明日の朝早くに出発だ、いいな、テッちゃん」


翌朝は朝食が済んだら片づけをする前にまずテッちゃんが一人で先に出発します。
まだ少しずつしか歩けないし、しかもぞうり履きなので時間がかかります。

「テッちゃんは荷物も持たなくていいよ、空身で行きな」

「じゃあ、お先に」

一歩一歩山道を下りて行きました。
とにかく他の人たちより先に行かないと、すぐ追いつかれてしまいます。

「テッちゃんにはすぐ追いつくよ、オレたちはゆっくりしてから出かけよう」

朝食ものんびり食べて休憩、そしてテントの撤収。
テッちゃんの荷物もみんなで分担して持ちます。

健脚ならふもとまで一気に下りて行かれますが、テッちゃんのスピードに合わせて、途中で一泊する予定です。

待ち合わせの場所は、今夜のキャンプ地であるマヤグスクの滝の下の広い川原ということにしました。


川に沿って下りて、少し下流まで来たときです。

「あれっ、見たことある物が・・・」

川岸の草に何か白っぽい丸い物が引っかかっているのを見つけました。

四日前に流されたプラスチックのキャンプ用食器でした。

「あ、またあった」

流された食器は下りる道すがら全部回収しました。

昨日応援部隊が登って来たときは山の中を通ってきたので気が付かなかったのでしょうか。

それとも頭上のヘリに気を取られて下を見ていなかったのか。


午後までかかってキャンプ予定地の川原に到着です。

今日はここまででストップ。一泊です。


翌朝、テッちゃんの足はさらに回復していました。

「また荷物なしで先に出発してね」

「はあい、じゃあ、お先に行かせてもらいます」

「来た時の道なので迷うはずはないと思うけど、念のためにテッちゃんが通過した証拠に目印をつけて行ってもらうことにしよう」

「木の枝や小石を使って地面に通過した時刻を表すんだよ。それを確認しながら行けば安心だ」

オリエンテーリングみたいなものです。

「わかりました」

テッちゃん、数日前にハブに咬まれたとは思えないくらい元気に歩いていきます。


地面の時刻の目印によると、テッちゃんはずいぶんと足が達者になったようです。

私たちは追いつくどころかどんどん離されて行っているように感じます。


下流の軍艦岩に着きましたがそこにテッちゃんの姿がありません。

「あれ?テッちゃん、道間違えたのかな」

「そんなはずはないよ、すぐそこまで目印が順調に付いていたの見ただろう」

「追い抜いちゃったのかな」

「まさか」

「この辺をよく探してみよう」

「オーイ、てーっちゃーん」

「せんぱーい、テツヤせーんぱーい」

もう1時間も探しています。テッちゃんどうしたんでしょう?


 →アイ ハブ ア ハブ その12 につづく

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