アイ ハブ ア ハブ その10


  →アイ ハブ ア ハブ その9からつづく

ハブの血清は獣医のO先生に断られてあきらめましたが、リーダーはどうしてもテッちゃんのことが心配で、ろくに眠れません。
そして夢にうなされるのです。


「グスン・・・、テッちゃん、短い人生だったなあ。こんな山の中でハブに咬まれて死んじゃうなんて・・・」

「ホントに・・・クスン、クスン・・・。実家に知らせて家族に来てもらわなきゃね。シクシク・・。」

「ああ、両親が来るまでは遺体が腐らないようにしておかなきゃな」

「こんな山の中じゃドライアイスも氷もないけど」

「とりあえず川の中に遺体を沈めておくんだ。遺体が浮かんで来ないように重い石を載せておけよ」
 

!!とんでもない縁起の悪い夢を見たものです。

翌日の午後、出発するKさんを空港に見送りしました。

実家の農業を手伝っていたり、農業自習でアメリカの農場にも居たことのあるKさんなら協力隊の試験も合格することでしょう。

空港でKさんとお別れした後、燃料や食糧も買い込んで、また次の日から西表です。
今度はいつものようにウキウキしたキャンプの準備気分ではありません。
もしキャンプに残っている人たちに何かあったとしても、すぐには助けを呼べる場所ではなく、連絡も取りようがないのです。

そして心配でろくに眠れないうちに夜が明けて、すぐ出発となったのです。


船の中にいるときも、西表の川沿いに山を登っているときも、リーダーの頭の中は
『テッちゃんたちのことが心配・・・・』

・・・・・・・・とにかく   『心配』 ・・・・・・・

  の二文字でいっぱいなのです。

だんだんキャンプの場所に近づいて来ますが、今日は全然ワクワクではなく、胸の中は、もやもや、ドキドキ・・・・。

「あ、ヘリコプターだ」

「ホントだ、何でこんな山の上に」

ヘリコプターがこれから登ろうとしている山の上に向かって飛んでいます。
一行の頭の上をバラバラと音を立てて低空飛行するヘリ。

「う、・・・このヘリ、テッちゃんの遺体を運ぶヘリにちがいない」

リーダーは確たる根拠はないけど直感でそう思ったのです。

「どうやって下界に連絡してヘリを呼んだんだろう?」


実は、このヘリ、ウリミバエという害虫を根絶するために沖縄県の事業でウリミバエの不妊虫を空から撒いていたのでした。

このウリミバエ、瓜類の作物に卵を産みつけ、実をダメにしてしまう害虫で、沖縄県の野菜が他府県に出荷できない要因になっていました。

ウリミバエの不妊虫、つまり「交尾しても幼虫が生まれない特殊なウリミバエを増殖して、それを大量に放虫することでこれ以上ウリミバエが産まれないようにする、という計画です。

何十年もかかって地域ごとにこの事業が行なわれて、最後に1990年から三年間、石垣島や西表島にも大量のウリミバエ不妊虫が放出され、1993年についにウリミバエは根絶されました。

おかげで石垣島産のゴーヤなどの瓜類の野菜も自由に島外に持ち出せるようになったのです。
このキャンプの頃はウリミバエ根絶事業真っ盛りだったわけです。


牧場の近くにもよくこのヘリが飛んでいたものでした。

ちょっと考えればわかりそうなものですが、頭がテッちゃんのハブのことでいっぱいだったリーダー、もうそれ以外には思いつきません。

そして険しい山道もすごいスピードで登りきってしまい、あんなに朝早い時間にキャンプ地に到着したのでした。



 →アイ ハブ ア ハブ その11につづく

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