アイ ハブ ア ハブ その6


アイ ハブ ア ハブ その5からつづく


口のしびれたリーダーに替わって他の人が毒の吸出しをすることになりました。交替はしたものの、うまく吸い出せないでいます。

「やあ、こうした方がいい」

と、力のあるKさん、両手でテッちゃんの足をギュウギュウ押して傷口から毒を搾り出しています。

「イタタタ・・・・」

「え?テッちゃん、だいじょうぶ?いたい?」

「いや、・・・・やってください・・・・うううう・・・」

テッちゃんの足はもう足首の上のふくらはぎ近くまで腫れて、足の指やくるぶしのシワはなくなってしまいました。
足が普段の二倍くらいの大きさにふくれ上がって、ふくらはぎから先がスキー靴のようです。

Kさんはなおも力を入れて雑巾をしぼるように両手で足をつかんで絞り上げます。
傷口から血液とリンパ液の混ざった汁が滲み出てきます。
二人がかりで足首と指先を持って絞り上げると一番よく毒が出ました。
知らない人が見たら拷問していると思うでしょう。(これが楽しいキャンプなんでしょうか?)

しばらく絞っていると汁が出なくなってきました。
傷がふさがってきたのです。
大出血を恐れるどころか、もう一度メスで切って毒を出しやすくすることになりました。

このメスは実によく切れます。十徳ナイフはスイス製の高い製品でしたが、この中のメスだけは一度も使ったことがありませんでした。使うチャンスがなかったのです。

テッちゃんの足の荒療治の間、3人の実習生たちは上からライトを照らす役目、つまり照明係をしていました。

何時間経ったでしょう。切ってしぼって毒を出したおかげでテッちゃんの足の腫れは膝の上よりは行かずに止まってくれました。ここで絞るのは終わりにします。まずは一安心。

さてこれからどうしようか、ということになりました。ここは大きな滝を登って来た山奥です。浦内川の軍艦岩まででも丸1日かかります。

「この足じゃ歩けないよなあ」

「だいいち靴がはけないよ」

大きく腫れ上がって象のようになった足が入る靴はありません。

「ボクがおんぶして山を下りる」

と、力持ちのKさん。

「いや、マヤグスクの滝の巻き道、人を担いで行くのはムリだよ」

昨日の雨で川が増水しているので、登って来た時のように谷スジを歩くことはできません。

テッちゃん、無事におうちに帰れるんでしょうか。



  →アイ ハブ ア ハブ その7につづく


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