アイ ハブ ア ハブ その5


アイ ハブ ア ハブ その4からつづく

テッちゃんは、夕食の後、川向こうにトイレ(大きい方)に行こうとしていたのでした。

電池が弱くなって暗くなったライトを照らして草むらの中を歩いたものだから、よく見えずに夜行性のハブを踏んだらしいのです。

とりあえずテッちゃんを座らせました。足は見る見る腫れ上がり、足の甲全体が赤くふくれてパンパンになっています。

「どうしよう」

「とにかく毒を出さなきゃ」

傷口から毒を吸い出すという応急処置はだれでも思いつくでしょう。

リーダーは少しの間考えていたようですが荷物から自分の十徳ナイフを出しました。

十徳ナイフ、アーミーナイフとも言います。手のひらサイズの折りたたみナイフで、はさみ、ドライバー、のこぎり、栓抜きなど、何種類もの道具が折りたたまれて入っています。いつも野外活動には持って行っていました。十徳ナイフの道具の中で一番よく切れる“メス”を取り出したのです。ハブに咬まれた所にわざと傷をつけてそこから早く毒を出すというわけです。


 (この時は黙って冷静に見えたリーダーでしたが、あとで聞いたら、実はこれは迷ったそうです。)

「だって、もし動脈にでも傷をつけたりしたら大出血になるだろう」

「よく決断したわね」

「うん、目の前でテッちゃんがズキズキ疼く足の痛みに呻いて入るのを見て、何もせずにはいられなかったんだ」


小さいけれどよく切れるメスを握って近づくリーダー。

「少し切るぞ、テッちゃん、いいか?」

咬まれた跡のすぐ近くに、長さ1、5cm、深さ5ミリの×印に切りました。医師法違反も何もあったもんじゃないですが背に腹は代えられません。深山幽谷のこのテントが野戦病院になってしまいました。

「ウウウウウウ・・・・・」

テッちゃんは口数少なく呻いています。

「テッちゃん、痛いか?」

「いえ、・・・毒が・・・腫れてる方が・・・」

メスで切られた傷の痛みなんか気にならないくらい毒による傷みがはげしいようです。

 足首を紐でしばって毒がそれ以上は上部に回らないようにして、まずリーダーが口で傷口の毒を吸い取ります。チューッと吸って、ペッと吐き出します。何十回か繰り返してから他の人に交替しました。

「なんか、口がおかひい」

リーダーの唇が腫れています。

「口ろ中がひびれてきた」

毒を吸いだす時は口の中に傷のある人、虫歯のある人は止めた方がいいと言われています。でも傷はなくても口の中は全体が粘膜だから毒を吸収するのです。

  →アイ ハブ ア ハブその6につづく


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