アイ ハブ ア ハブ その2


アイ ハブ ア ハブ その1からつづく


酔って調子に乗った若者たち(若くない人もいますが)の、岩からの飛び込み遊びはまだ続いています。

「よし、オレは一番高い所から飛び込むぞー、見てろよー」

どうぞ、お好きなように。でも危ないなあ。学校の遠足だったら担任が青くなって必死で止めるだろうな。

リーダーはとんでもない高い岩の上まで登って、酔ってフラつく身体を支えようとそばに生えている枯れ木の枝に寄りかかりました。
体重をかけられて枯れ木の枝は乾いた音を立てて見事に折れ、そこから真下にまっすぐ、飛び込んだ、というか、折れた枯れ枝といっしょに川に落ちました。

 バッシャーン 

水の音はしましたが、実は落ちた場所は水中の浅い所に大きな岩がありました。

水面から岩までの水深は膝より浅かったのです。

高飛び込みをしたはずのリーダー、深く潜るどころか水面に浮いたままじっと動きません。

しばらく起き上がって来ません。胸を打ったようです。

「あれれ、だいじょうぶ?」


数分して、

「ううん、痛いよお、うううん……、おかあちゃーん……」

と岸に上がって、近くの乾いた大きな岩の上に転がって休んでいます。

「だいじょうぶ?」

「いたいよー」

「どうしよう、だいじょうぶかな」

「うーん」

「テントに行く?」

「・・・・・・・・」

「ねえ、どうしたの」


・・・・・・グー、グー、グー・・・・・・

「あ、眠っちゃったわ」

裸のまま岩の上でグウグウ寝てしまいました。眠れるくらいならたいしたことはない、ということでしょうか。


夜になるとみんな酔いも覚めておとなしく食事をしてテントで寝ることになりました。

「胸ぶつけたところ、まだ痛い?」

「うん、ちょっとね」

「病院行く?」

・・・って今日はムリですが。

「石垣に帰ってまだ痛いようならね」

港からバスと遊覧ボートを乗り継いで、滝を越えて一日がかりで着いた山の中ですから、ここから病院なんて行かれません。それに西表島には小さな診療所しかありません。こういう場所に来て大きな怪我をするのは命取りです。

痛いと言っていましたが眠れないほどではないのでそのうち治って来るでしょう。


その夜、雨が降りました。久々の雨です。

夜中になっても雨は降り続いています。大雨です。

テントの屋根はピンと張っておきましたが、今は雨水の水溜りができて重みでたわんでいます。

内側に漏れてきたらテントの中はタイヘンなことになります。寝られなくなってしまうのです。

テントの生地は防水とは言っても通気性がいいように、合成繊維ですがビニール地のように完全に水を漏らさない生地ではないのです。濡れた屋根は表面張力でかろうじて水が浸みて来ないだけです。テントの屋根は水の重みで垂れ下がって低くなっています。屋根の水溜りはだいぶ大きくなっているようです。

こんな時にうっかり内側から指一本でも触れば表面張力は破れてその地点からポタポタ雨漏りが始まり、止めることはできなくなります。起き上がる時も絶対に内側からテントの屋根に触ってはいけません。
こういうのを一触即発と言うのでしょう。

雨が続いて、実はもっと怖いことを心配する必要があったのです。

川は増水して来ています。真っ暗だし、テントの中にいて川は見えませんが、音からして相当の水かさです。

「おい、ヤバイぞ、このままじゃテントが流されるぞ」

テントは水に近い便利な所に張ったのでした。設置した時は何日も晴天が続いた旱魃の時です。
こんなに大雨が降ったら・・・・・・。

     私たち、どうなるの?



   →その3につづく


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