キャンプへGO その2






前回よりつづき→

イトマンと私たちとで「キャンプ」の言葉のイメージがかけ離れているのはムリもありません。

沖縄では普通、砂浜のピクニックのようなことを指して「キャンプ」と言います。
家族、親戚、職場の人など大勢が集まり、車で海岸近くまで乗りつけるのです。
鉄板焼きの道具や氷と飲み物の入った大きなクーラーボックスを浜まで運びます。

テントも設置。日除けのためですから、ファスナーで完全に閉められる山用のでなく、運動会のような風通しのよいテントです。

バーベキューなどして夜まで食べて飲んで、ときにはカラオケセット持参で騒いで。

暗くなっても発電機と電球を持ってくれば明るい。
まだまだにぎやかに過ごせます。

ビーチパーティとも言いますが、ちょっとしたお祭りのようです。

小さい子や老人連れでも、歩くのが苦手な人でも楽しめるし、都合によって遅れてきたり、早く帰るのもアリです。
泊まるときはテントの下でゴロ寝。
だいたいキャンプは暖かい季節にするので寝袋に入る必要もないのです。タオルケット1枚あったら充分。

イトマンに電話で話したとき、夫は
「キャンプに行こう」
とだけ言って、詳細を伝えてなかったようです。
あるいは敢えて言わなかったのかも。

キャンプに参加してから、そう思いました。
あの行程を聞いたらイトマンも参加を遠慮したでしょう。

何となく不安感を残したままキャンプ出発の朝を迎えます。

参加者は、大柄なイトマンと私たち夫婦、うちの牧場に夏の間だけ手伝いに来ていた夫の親戚の女の子ミイちゃん(仮名)、牧場の牛の治療によく来てくれて懇意になっている若い獣医のO先生、隣の牧場に住み込みで働いている力持ちのKさん。計6人。

(言い忘れていましたが私たちは石垣島の広大な牧場で働いています。
大きな牧場のオーナーです……と言うのはウソで、住み込みで働くカウボーイとその妻です。
カウボーイの生活の話はまたの機会にするとして、キャンプの続きです。)

食料、食器、テントなどの荷物を参加者で分担してリュックに詰めます。
みんな大きな荷物になりました。でも、新婚旅行のときはこれに海で使う足ヒレ、水中眼鏡、シュノーケル、の3点セットと魚を獲るモリや網まであったのですから、それに比べればずっとましです。

翌朝、いつもよりだいぶ早く目が覚めると天気は快晴。
昨日イトマンが来る前に大雨が降って、キャンプの天気が危ぶまれていたのがウソのよう。
ところが、この前日に降った大雨が西表でとんだ災難に遭うことになるのですが、このときは少なくとも私は何も気づきませんでした。
深く考えずに牧場から石垣港に向けて出発。

荷物と人間を載せると軽乗用車ではあふれてしまうので、こういうときは牧場の3tトラックを借ります。
トラックの助手席には2人しか乗れませんからあとの人は荷物といっしょに荷台に乗ります。
本当はトラックの荷台は荷物運搬の補助のために1名しか乗れないことになっているらしいのですが、田舎ではよく荷台に何人も乗って走っています。
港から帰りの運転は牧場で留守番してくれる従業員の一人、シマヤさん。

シマヤさんも山登りやキャンプは得意ですが、牛の世話があるので今回は牧場に残ってくれます。
どんな時も生き物のいる牧場は無人にはできません。

トラックの荷台は、走ると夏の朝の風を受けて気持ちのいいものです。
これから始まるキャンプに、みんないい大人ですが遠足や運動会の朝の子どものような表情になっています。
数時間後に悲惨なことが起こることになるイトマンもこのときは予想もできずニコニコしています。

港のある石垣島の中心地に近づくと交番の前を通らなければなりません。

「伏せろっ!」

交番が近づくと、往きは運転席にいるリーダー役の夫が窓から顔を出して号令をかけます。
普段からその交番に警官は不在のことが多いのですが、念のため、荷台の人は隠れるのです。
荷台の横の縁に当たる部分、高さわずか30センチの板の陰に隠れます。
かがんだだけでは身体が隠れません。
荷台の床に腹ばいか仰向けになって身体を厚さ30センチ以下にするのです。

まあ、見つかっても逮捕されるほどではないでしょうが、時間を食って西表に行く船に乗り遅れると困ります。

交番を通り過ぎて安全地帯に来ると、また運転席から

「オーイ、もういいぞー」

警報解除になってみんな起き上がります。
港はもうすぐそこでした。

牧場から空いた道路を30分ほど走ってきて石垣港に到着。
ここから西表行きの定期船に乗ります。
西表島には定期船の発着する港が3港あります。
今日はそのうち島の北側にある船浦港に向かいます。

船の甲板にみんなの重いリュックをバケツリレーのように運びこんで、最後に人間が乗船。
私たちは居心地のよい奥の船室に入ります。
ここはクーラーが効いて夏でも涼しくて気持ちよく過ごせます。
西表まで高速船でも1時間。
今日これから始まろうとする強行スケジュールに備えて、しばし休息。昨夜も遅くまで準備し、今朝も早起きして居眠りするには船のエンジンの振動も役立っています。

西表の港に到着。
石垣のように人や車でごった返した雰囲気はなく、船から降りる人たちと迎えの軽トラックが来ている以外は自然のまま、深い緑の香りがします。

さすが島の8割以上がジャングルの西表島。


道なき道を行くキャンプはまだ入り口に着いたばかりです。
                      →その3につづく
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