大草原の小さな家 その7



大草原の小さな家 その6からつづく

牧場の夏の仕事で一番タイヘンだけど、大事なのが干し草作りです。

干し草作りと聞いて思い浮かぶ情景は・・・、

刈った草を人の身長ほどもある巨大なフォークで荷馬車に歌でも歌いながら山盛りに積んで、
馬に引かせてゴトゴトと、牛小屋に向かって夕日の中を進む。
山盛りに積んだ干し草の、さらにその上に家族が腰を下ろして荒野の中の細い一本道を揺られて行く。



なあんてことは忙しい現代の牧場にはありません。

そんな悠長なことをしていたら何百回も往復しなければならなくて、五十回くらい日が暮れてしまいます。



「今日は草を刈るからな、午後はがんばってくれよ」

草はカマで刈るのではありません。

1枚の牧草の畑でも1辺が長い所では200mはあります。
カマで刈るなんて、そんなことをしたら百回くらい日が暮れてしまいます。

午前中トラクターで牧草地をダダダーッと走って2時間ほどで刈ってしまいます。

ここでしばし休憩。

半日ほど日に当てて草を乾かします。
真夏の亜熱帯の強烈な日射しに照らされて夕方にはカラカラの干し草になっています。十分に干しておかないと腐って冬まで貯蔵できません。

春や秋には二日がかりで干して、刈った草を一晩牧草地にそのままにしておきます。
もちろん天気予報を見て雨が降りそうもないときだけです。
そういうときは干し草の香りが風に乗って数百mも離れた住宅の方にまで漂ってきます。
香ばしいというか、お日さまに当ててふっくらした布団のような、太陽の香りです。

次にまたトラクターで畝を作ります。
畝は幅約1m、長さは畑の1辺、つまり数百m。

畝を作ったらまた別の部品をアジャスターで取り付けたトラクターが走って
干し草を一抱えほどの大きさの束にしていきます。

稲刈りのコンバインのように畝に沿って干し草をかき集めて、
1辺が50cmほどの四角いかたまりにして細紐でしばってズッシリ重い草の小包のような物ができます。

トラクターに取り付けた機械の後ろから紐で縛られた直方体の干し草のかたまり(「梱包」と呼んでいます)が
ポトン、ポトンと、まるで固い「ウ○コ」のように地面に落とされていきます。

ここまでは全部機械でやります。
もしこれを全部手作業でやったら、200回くらい日が暮れて……(あ、しつこいですね、すみません)

人間はトラクターを運転、操作するだけです。

では何が人手がいるのか、というと、


地面に落ちたウ○コ…じゃなくて梱包をトラックで牛舎の近くの草専用の倉庫に運ぶのですが、
トラックの荷台に積む仕事が大変なのです。

数mおきに転々と落ちている梱包を拾って荷台に積みます。
広い草地で刈った大量の草はトラック何十台分もあります。

荷台には牛を運ぶ時のために鉄の柵が取り付けてあります。
これは簡単には取り外せないようになっていますから、開けられるのは後ろのフタだけです。
トラックにできるだけたくさん積んで移動しないと、
何百回も往復しなければならず、300回くらい日が…。ハイ、すいません。

荷台の横に付けた柵は1mくらいの高さがあります。
地面からすると柵の上までは3mはあります。

この柵越しに15kgほどはある梱包を投げ入れるのです。

上手に放り入れないと柵に撥ね返って戻ってきてしまいます。
ものすごく重いバスケットボールを使ってシュートするみたいなものです。

運動神経のよさそうな若い実習生でも、重いものを持つということは普段からやっていないと見えて初めはコツがわからず、なかなか入りません。

何年もやっていて慣れている従業員のヨシダさんやうちの夫、数ヶ月やってきたテッちゃんなどは
重い梱包をポンポンと玉入れのように投げ入れています。

トラックを運転して、働く人のスピードに合わせて少しずつ移動していく役は私が担当。

夕方陽が傾いてもまだ暑さは変わりません。
夏の石垣、これがまた日が長いのです。日没が夜8時頃です。

ジリジリ照る夕日を浴びて、トラックの荷台は草で山盛りにしていきます。
その山盛りの草の上にさらに実習生と従業員を乗せてゆっくりトラックは倉庫へと移動します。

デコボコでおまけに斜面を上がり下がりして進むトラックの荷台で揺られている実習生たち、風に吹かれてなんだか満足そうです。

草を満載したトラックは倉庫ですべて下ろして空にするとまた草地へ。

これを20回か30回か繰り返しているうちに本当に日が暮れました。
トラックのライトの灯りを頼りにまだ仕事は続きます。
暗くても熱射病になりそうな暑い日中に働くよりは楽です。

「あ、梱包の上に何かいる!」

フクロウです。

少なくなった梱包の上に止まってネズミかヘビかカエルをねらっているのでしょう。

トラックが近づくと音もなく飛び立っていきました。

真っ暗になってやっと広い草地のすべての梱包が運び終わり、この日の仕事は終了です。

シャワーを浴びていつもはバラバラに食事をしていた牧場のカウボーイたち、
こういうときは集まって庭か屋上でビアガーデンが始まります。

「みんな、今日はご苦労さんだったな」

「いえいえ、たくさん働いてビールがおいしいです」

「ところで来週、西表にキャンプに行かないか?
 週一回は休日という約束だったけど、今までほとんど休みなしで仕事してもらっていたからさ」

「西表ですか、行ってみたいです」

「キャンプ、楽しそうですね」

(楽しそう…だって?あらら、だいじょうぶかなあ)


その8につづく


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