大草原の小さな家 その6


大草原の小さな家 その5からつづく

消防車が来たその夜、消えたとは思ってもちょっとまだ心配です。

「もう完全に消えたかな?」

「消えたでしょう。消防士さんも言ってたじゃない」

「うん、だけど、火事の時、一度消えたと思っても、布団なんかまた後で燃え出すこともあるらしいじゃないか」

「それは聞いたことがある」

「見に行こう」

「今?!」

「そう、今」

「こんな夜中に?}

「今見なきゃ意味ないだろ」

「そうでした、そうですね」

夜遅く、街灯もない真っ暗なデコボコ道を夫婦で軽トラに乗って火事跡の現場に。

懐中電灯を照らして山に入って行きます。
いつも見慣れていた牧場内の山ですが、夜に見るとまた不気味。
放牧場から山に入ってすぐ、

「あ、まだ火が残ってる」

鎮火しても焼け残った木の幹に小さな赤い色が光っています。
色が青でないからホタルと見間違えたのでないことは確かです。

周りは水浸しですし、燃え移ったり、広がることはないでしょうけど。
焦げ臭いにおいと煙臭いのがまだ消えてはいません。

「まあ、一応は大丈夫ということかな」

ちょっと気になるところはあるものの、なんとか眠ることはできました。

翌日からは、

「風のある日は火を付けるなよ、山に近い所は要注意!」

「はい、わかりました」

実習生たちは放牧場で牛の食べない迷惑な潅木を見つけても火を使わずに駆除しています。
つまり、クワ、ナタ、カマを使って人海戦術で伐採です。

「固ったいナ、この木」
「根っこまで取らないとまたすぐ生えてくるぞ」
「クワを使えよ」
「それも固いよ、土がガチガチで」
「もっと思い切り振り下ろして」
「えーい!」

   ……ガキッ!

「あら、深く入って抜けなくなっちゃった」
「しょうがないな、なんとかしろよ」
「ようし、ぬわーっ、!!!」

……ボキッ!!…

「あ」
「あ!」
「あああっ!!」

「折れた…」

「折れたんじゃなくて、折った、って言うんだよ、そういうの」

まったく、深く地面に刺さったクワを力任せに起こそうとするもんだから、丈夫な鉄のクワの刃が根元からボッキリ折れてしまいました。

農学系とは言ってもカマやクワの使い方なんて、実家が農家の三ツ井君以外は全然わかっていません。

「ああ、もう!」
「仕方ない、これは後でオレが溶接で修理して使えるようにするよ」
「すいませーん」

と言いながら実習生は顔が笑っています。


昼の休憩が終わる頃に実習生たちは中央広場に集まって先輩の指示を待っています。
住宅のすぐそばの家庭菜園をいじっていると、暇そうに実習生たちが寄ってきます。
先輩の従業員が来るまで手持ち無沙汰なようなのでまた遊んであげることにしました。

「それ、なんですか?」
「ヘチマよ、実は若いうちに食べるのよ」
「タワシを食べるんですか?!」
「タワシじゃないよ、沖縄では、まだ未熟な実を汁や炒め物で食べるのよ」←本当です。
「へええ」

「これは…?」
「あ、それはね、石垣島のサクランボです」(ウソ、本当は唐辛子です)
「へええ、これが」

次のセリフを言う前に実習生は赤い実をプチッともいでパクッと口の中へ。

「あ、それ…」

次の瞬間、奥歯で ジャリ と噛んだ音がして………

  「ギャーオー!!!」 


プテラノドンみたいな叫び声が出ました。

そりゃそうです。島唐辛子と言って、小粒でも辛さは一級。
タイ料理でも使われている一番辛い唐辛子。
タイ語では“プリック・キイ・ヌー”直訳すると“ネズミの糞の唐辛子
形がネズミの糞と似ています。

ひぃっ!ひぃっ!

口の中の火事を外の手洗い用の水道で消しています。

「やっぱりな、サクランボって言うのはおかしいと思ったんだよな」

引っかからなかった人は笑っています。
そういえば以前の従業員だったシマヤさんも農学部出身だけど同じ手に引っかかりました。
そして、その後忘れた頃に、

「まだ緑の実は辛くないんだよ」

と、私が言い終わるか終わらないうちに青い実を摘んで、止める間もなく、

「パクッジャリワオー」

となって、プテラノドンの口から火が吹いていました。

          →その7につづく


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No title

僻地の牧場で住み込みで働こうなんていう人は、動物や自然が好きで純真な心の人が多いんですよ。かわいいです。

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めっちゃ おかしい~!!
勤務中なのに(今事務所に1人ですが)笑ってしまいます。
でもでも すぐ信じてしまう人、好きです。
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