幻の湖 その5

 
幻の湖 その4からつづく

今回のキャンプは精神的なショックがたくさんあって、フラフラになりながら何とか険しい道を登っていました。
(魚、猿、ミノムシ、と来て、次はどうなるんだろう・・・)

少し行くと道が急に平坦になり、明るく開けた広い河原に出ました。
岩場とは言っても大きく平らな岩で、ほとんどデコボコのない、実に歩きやすい岩の道です。

もうヘビをつかむ心配もないし、またいで通る倒木もチクチクするアダンの刺もない広い空間。
スタスタと自由に歩ける空間。

注意すべき点は強いて言えば川の流れで侵食されて岩に開いた穴があります。そういう穴を「ポットホール」と言うのだそうです。
たまにそこに足を取られる人がいることくらいです。
普通はそんな大きな穴が地面にぽっかり開いていれば気付きます。ふつうは・・・。

頭上に広がる青空。川の流れの音。鳥の声。

向こう岸の木々も澄んだ深緑色をしています。

「大自然てきれいなんだ、タイヘンなこともあったけど、やっぱり来てよか…っ…ワアッ!!」

その時私のすぐ後ろを歩いていた人、(たぶん I さんかO先生)が信じられない光景に目を白黒させていたのでした。

「ヘッ?!消えた!今ここを歩いていた人が、目の前の人が突然消えたよー」

前を行く人たちもその声に慌てて駆け寄ります。みんな集まりました。
ただ一人いないのは、







そうです、わたしです。

見事にポットホールに落ちたのでした。

人間が完全に入るくらいの直径がありました。マンホールに落ちたようにスポンと落ち込んでしまったのです。
リーダーは心配して穴を覗き込みます。

「オーイ、だいじょうぶかあ」

「だめだ、水がにごって何も見えない」

「もしや、川に流されて下流の方に行ったのでは・・・?」

そうだとしたら、大きな岩の床の下を通ってずうっと下流です。


実際には私は、よそ見をして歩いていて、後ろ向きに背中から穴に落ちたので、はまり込んで動けなくなってしまっていたのです。

幸い、リュックがクッション代わりになってどこも怪我はありません。

でも両手両足を空に向けたまま起き上がれません。

仰向けになって手足をバタバタさせてもがいていました。

まるで引っくり返った亀です。

ミノムシの次はカメでした。

「だずげでー・・・ブクブクブク・・・ぐるじいいい・・・ボゴボゴボゴ・・・」

高所恐怖症の私は閉所恐怖症になりそうです。

またもやメンバーに笑われ、助けられることになったのでした。


その後もどこをどう通ったのか覚えていないほど憔悴し、ただ前を行くひとの足元ばかり見て歩き続けていました。
それでもいつかは目的地に着くものです。
3日目についに発見、幻の湖。

苦労してたどり着いた『幻の湖』は、・・・・・・。

「ヤッホー、やっと着いた」

「やった!ついに幻の湖だ」

「あれ?」

「なに、これ」

「これが幻の湖なの?」

「なんかの間違いじゃない?」

「でもこれしかないよね」

「これだよね」

「これかぁ・・・」

憧れの湖、見て驚きました。

「これがウワサに聞く湖か。なんて小さな濁った沼だ」


それは湖と言うより、沼と言うより、池と言うより、



・・・・・・大きめの水溜り。

きれいでも何でもない、ただの茶色い池でした。

何がまぼろしなんでしょう。珍しくもない泥の沼。

山の中にひっそりと静かに存在するという所に幻の湖の価値があるのでしょうか。

それとも本当には美しい湖などはないので『まぼろし』と言われるのでしょうか。

夢の湖は夢のままで終わりました。

今のようにインターネットが普及していれば事前に資料を集めておいて幻の湖の写真も手に入れておいたかも知れません。でも当時は、行ったことのある人がどこの誰かもわからす、様子を聞こうにも聞くこともできないまま出発しましたからこういうことになるのでした。

とりあえず、目的の湖はこの目で確かめることができました。

「せっかくここまで来たんだから記念写真でも撮ろうよ」

「じゃあ、湖に入るか」

「えええっ、この濁った水に?」

「濁った温泉と思えばいいんじゃない?」

「その温泉て、何に効くんだ?」

「高所恐怖症」

「ん?え?」

「閉所恐怖症」

「あ・・・」

「ヘビ恐怖症」

「あああ、こらあ!」


あまりきれいには見えない濁った池でしたが全員首まで浸かりました。

得意の「服のまま入水」です。

水は暖かくはないのですが、真夏に汗をかいて歩き続けてきた身には気持ちの良い水浴びです。

みんなでにごり湯の露天風呂に入っているような雰囲気で記念写真をパチリ。

まあ、誰も怪我もなく、無事に帰還できたキャンプはそれだけで大成功です。

翌年のキャンプでは困ったことが起きて帰れなくなったことがありましたから。

その話はまたの機会に。

  →次の話「大草原の小さな家」につづく

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幻の湖

 初めまして。1980年と1981年の夏に、イタジキ川から”幻の湖”を目指した者です。
なつかしかったです。マヤグスクの滝の一部が崩落しているという噂を聞きましたが本当でしょうか?あれから30年経ちました。

No title

読んでくださってたんですね。

実はスーパーの普通のウナギの蒲焼の方が柔らかくておいしかったです。

この後、話は牧場の生活、出産、育児、とんでもない子連れキャンプ…と続きます。

No title

大変でしたねv-356
でもでも今はいい思い出?!でしょうか。。
回転すしに「大うなぎ」ってありますがこれとは違うんですよね?
西表の大うなぎは美味しかったでしょうか・・
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