カウボーイのお引越し その21

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→カウボーイのお引越し 20からつづく

家族で迎える「引越し完了の日」というのをずっと以前から想像していました。

子どもたちは生まれてから今まで、そして私たち夫婦にとっては結婚してから二十年近く住んでいた牧場です。


引越しの朝、家から見える山や海に家族はお別れを告げるのです。

「ここからこの景色をみるのはこれが最後ね」

今までの牧場での暮らしの年月に思いを巡らすのです。

荷物を積んだ引越しトラックとそれに続く家族の乗る乗用車。

出発しても後ろを振り返り、遠く小さくなって行く牧場の景色を名残惜しそうにいつまでも眺める私たち。

家族は泣くだろうか。

私は泣くだろうか。

「台所と食事の部屋との距離が遠い」

「学校が遠い」

「調理台が狭くて低い」

・・・・・・・・・・・・・

早く引っ越したいと常時願ってはいたものの、いざ引っ越す最後の日となると、寂しくて離れ難くなるだろうか?・・・と。


ところがどっこい、今日が最後という日は夜になっても引越し作業が終わりません。


「今日の5時には引揚げるって言ったじゃないか!いつまでかかってるんだ!!」

「今荷物まとめて出て行きますよ。だいたいあなた、ここの管理人じゃないでしょ」

牧場を閉鎖した後、この施設を借りて牛を飼うことにしていた人が、早く出て行ってくれと言って来ているのです。

私たちが牧場従業員でなくなってからは、住み込みではないですが別の人が管理人をしています。

ちょっと険悪な雰囲気になりました。

荷物は大方運び終わって、あと残っているのはレジャーボートだけです。

西表で父さんが遭難して、その後、西表の川で沈没したあのボートです。

でももう真っ暗になってこれ以上は作業できません。

管理人さんに電話して、ボートだけは明日の朝に取りに来るということを許可してもらって、今日の引越しは完了ということになりました。


「ボートは明日必ず取りに来るから」

父さんははっきり言って出発となりました。

旅立ちの感傷も何もあったもんじゃない・・・。


これで最後だと、車には荷物をこれ以上どうやっても積めないと思うほどの満載になりました。

父さん運転のトラックの荷台にももちろん山のように荷物が積まれています。

トラックの荷台の一番後ろに荷物がこぼれ落ちないように鉄兵が乗りました。

荷物の最後尾に鉄兵が立ったまま張り付いて、荷物が落ちないように押さえています。

片手はトラックの横の手すりにつかまって、もう一方の手は荷物を押さえ、おまけに片足を上げて低い位置の荷物が落ちないよう器用に膝で押さえていました。

中一の鉄兵は頼りにになる存在になっていました。

そのトラックの後ろに私の運転する乗用車。

この車には、最後にかき集めてトラックに載せきれなかった荷物でぎゅうぎゅうでした。

その荷物の隙間にきりんとくるみを押し込んで乗せました。

「ううう、つぶれそう」

「くるみはどこに乗ってるの?」

「ここだよ」

布団か何かかさばる物のわずかな隙間から声がします。

「だいじょうぶ?」

「だいじょうぶだよー」

姿は荷物に隠れて見えませんが声の様子では息ができているようです。

二人とも小柄でよかったです。

乗用車のそのまた後ろに最後まで手伝ってくれた父さんの弟が一人で乗る軽の車。

この車にも何だかんだといっぱい積んであります。


前をゆっくり走るトラックから荷物といっしょに鉄兵が落ちて来ないかハラハラしながら後について出発しました。

後ろを振り返って小さくなって行く牧場や建物に別れを告げるどころではありません。だいいち真っ暗で何も見えません。

合計3台の車を連ねての夜逃げのようです。

カウボーイのお引越し その22 につづく

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