キャンプへ GO その12

 その11 からつづく

何時間川を流れていたでしょうか。
みんなリュックを浮き輪代わりにしたり、キャンプで寝る時に使う、発泡ウレタンのマットにビート板のようにつかまったり、いろいろ工夫して疲れないように浮いていました。

私も、流木につかまって浮いてみましたが、これはあまり浮力がなくてかえってじゃまなので手放しました。
滝登りよりは力も要らないし楽は楽ですが、それでも何時間も水に浮いているのは腰が痛くなります。
まあ、海で遭難した人のことを思えば、流されていればいつかは目的地に着くし安心です。
確実に下流に進んでいるのですから。
ワニやカバに襲われる心配もないですし。

と思ったら、

「あれ、なんかあまり進んでない気がする」

「なんだか、ただ浮いているみたい」

「流れ、止まってない?」

そうです、川幅が広く傾斜の緩やかな川は、河口に近づくとだんだん流れが遅くなり、ほとんど止まっているように見えました。

もしかすると潮も関係しているのかも知れません。
海の近くなると、満潮時には海水が川の方に逆流して来るくらい高低差のない河口です。

今回は山のキャンプで、海は関係ないと思い、潮の満ち干は気にしていませんでした。
これではますます到着地まで時間がかかってしまいます。


「おいおい、定期船の最終に間に合わないぞ」

「急げーっ」

「速く進めえー」

ウレタンマットを持った人はバタ足を始めました。

今までは手足を動かすよりは何もしないで川の流れに身を任せた方が抵抗なく進んでいましたが、ほとんど動かない水の中では人間が泳いだ方が速いのです。

バシャバシャやっていると数分で疲れてしまいます。
時々足が着かないか、と身体を起こしてみますがもちろん背が立たず、また泳ぎだします。

港まではまだまだ遠く、船に間に合うんでしょうか。

「あれ、あそこ、水の色が違う」

「あ、島だ」

「わあ、上陸できる」

川の中に中州が現れました。

やっと陸上で休憩できます。リュックは水を吸って重くなっていましたし、陸上では浮力がなくなった分、足が地面に着いて立つと身体が重く感じます。

それでも人間は陸棲の動物です。楽になった感じがします。

ここでリュックを下ろし、中の水を捨てて軽食タイムです。
手も足もふやけてシワシワになっていました。
出発してから初めての長い休憩ですが、最終便の時刻が迫っているのでゆっくりはできません。

「さあ、またがんばろう」

河口を目指して泳ぎだし、数十分すると川岸に木製の古い桟橋が現れました。
もう何年も使われていないようです。昔はこの岸近くにも家があって生活していたのでしょう。

人が住まなくなって何年経つのか、桟橋のすぐ上はジャングルのようです。
この桟橋に上がって休憩したかったし、できれば古い村の跡も見てみたかったですが、今はそんな時間はありません。

桟橋を横目で見ながら河口に向かって真っ直ぐに泳いで行きます。

すると、遠くからエンジン音が・・・。

「船だ!」

「こっちに来る!」

川を遡って近づく船が見えます。私たちを迎えに来てくれたのでしょうか。
そんなはずはありません。

観光客に川のマングローブを見せるための遊覧船です。ちょうど港を出て川を遡って来る途中、私たちが下って来るのに偶然出会ったのでした。

何でもいいからうれしいのです。

「ワーイ!乗せて―――っ」

みんなで手を振って大声で呼びました。船に気付いてもらおうと思って。
いえ、そんなにしなくても船長は気付きます。

船がすぐそばに来ると、デッキにいた観光客達はいっせいにこちらを見ています。

そりゃ、驚いたことでしょう。原始の南国ムード漂うマングローブの川を遊覧していたら、上流からリュックを背負った人間が何人も固まって泳いできたのですから。

カバが泳いでいた方がまだ驚かなかったかも知れません。

観光客たちが集まって船の片側に寄って、珍しそうにこちらを眺めています。
船が人の重さで傾かないか心配です。

船がすぐ横を通り過ぎる所まで来ました。船長の顔もはっきり見えます。

「乗せてくださーい」

「アンタたち、そこで何してるの?」

こういう場合、何と答えたらよいのでしょう。

          →その13につづく




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