カウボーイのお引越し その3

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→カウボーイのお引越し その2からつづく



(・・・・「牧場がつぶれる所の話なんか早送りでやれよ」

という注文も出ましたのでこの辺の話はサラリと・・・。)



倉庫建築の許可をもらう、と一言で言いますが、市役所に住民票の移動届を出すように簡単にはいきません。

まず農地を造成するには農業委員会に、建築物を設置するには市の農政課に、そして建築そのものの許可は市の都市計画課と県の建築係りに、とそれぞれ別に許可申請を出します。

その上、建築許可を得るためには土地に面した道路の使用許可が必要です。

うちの土地に隣り合っている道路は林道と農道です。

林道は市の林務課、農道は市の村づくり課の許可が必要になります。

建築業者に依頼すればこういう面倒くさい手続きは代行してくれるのでしょうけど。

「自分の家は自分で作る!」

そうです、家作りも自分の手で、というわけで住宅も自給自足です。

手続きも全部自分でするのです。

市役所に許可申請に行っても1日ではなかなか済みません。

「お帰りなさい、申請出せた?」

「いや、担当の係りの人が不在だから別の日に来てくれだって」

お役所ですねえ。

そしてまた別の日、

「今日はどうだった?」

「担当の人が出張なので出直してくれって」

「さっき電話して確めたのにねえ」

「急に出張になったらしい」

何度も市役所まで往復することになります。

許可が下りてから初めて造成が始められ、土地の測量をしてから設計ができるのです。

お引越しどころか、いつになったら建築が始められるのでしょう。

こうしている間にも牧場の後片付けは進んでいきます。

トラクターもトラックも牛が居なくなった牧場には必要がない物です。

廃車となり、業者が引き取りに来ました。

「このトラックともお別れだね」

「十五年間よく働いてくれたよ」

夜になってもなかなか寝ない夜行性児童の鉄兵を寝かせようと、乗せて夜の道路を走り回った助手席のシート・・・。

草刈りの時にはまだ小さかった子どもを助手席に座らせて運転したハンドル・・・。

天気の良い日は子どもたちが上って遊んだり、キャンプの時に港まで若者たちを運んだりした荷台・・・。

それら、思い出のある物が全部一瞬にしてスクラップになりました。

車をつぶす特殊な機械が来て解体されます。

巨大な鉄のはさみでバラバラにされたトラックの残骸から、金目になる鉄やエンジンやタイヤは拾われて引き取られて行かれました。

残ったスクラップに埋もれた中に見覚えのある物がありました。

「あ、この模様、トラックの座席のだ」

生き物ではなくてもなんともかわいそうな気がして悲しくてなりません。


このトラックは古くなってあちこち錆びて、ボディも少しガタが来ていました。

でも最後までよく走っていました。

ただマフラーがボロで、走るとゴーッとすごい音がしました。

「牧場のトラックは戦車と同じような音がしますね」

と言ったのは、以前、自衛隊にいて戦車も操縦したことがあるという人。

トラックは牧場の象徴のような存在でした。

自家用車のなかった時期もあって、そのころの外出にはいつもトラックのお世話になりました。

トラックでいつも農協にエサの飼料を買いに行きました。

天気の悪い時はエサを濡らさないように荷台ではなく、助手席の足元や座席の上にギュウギュウに積んだものでした。

20kg入りの飼料袋を十五袋も積んで、帰りにそのまま学校に子どもを迎えに行ったこともありました。

「わ、な、なんでエサ積んであるの?!」

「ちょうど農協の帰りで、下校時刻になったからまっすぐ来たよ」

「僕たちどこに乗るの?」

「このエサ袋の上に」

「うわ、狭い」

「隙間にも乗れるよ」

「ムギュー・・・」

今はただ、長い間ご苦労様でした、と戦車トラックの冥福を祈るばかりです。


カウボーイのお引越し その4につづく


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