カウボーイのお引越し その2

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カウボーイのお引越し その1からつづく


1991年に牛肉の輸入が自由化になったころからでしょうか。

多くの肉牛の畜産農家が経営困難になっていきました。

外国の安い牛肉が入ってくるのですから当然牛の値段は下がります。

ごく一部の高級牛肉が取れそうな牛だけが高値が付き、残りは安い値でしか売れません。

私たちの育てた牛たちは残念ながら大多数の安い方のグループに入ってしまいました。

牛の血統はいいのですがいい草を与えられないので牛がやせていたからです。


「体重が同じなのによその牧場の牛はもっと高く売れてたよね」

「セリの仲買人は見る目があるからね。将来よく太って最高級霜降り肉が取れそうな牛かどうか見分けられるんだ」

おいしい牧草を育てるためには肥料をたっぷりやらないといけないのですが。

「経営が苦しいのに肥料代にそんなにお金は掛けられない」

というオーナーの指示で、肥料なしで牧草地の草を刈るだけになってしまいました。

何年も肥料を撒いていないと牧草地も放牧場も荒れてきます。

牧草は雑草に負けて、チガヤだらけです。

ほとんど枯れススキのような牧草地になってしまいました。

草を刈って干草を作っても牛は喜んで食べてくれません。

「干草の梱包というよりワラの束だね」

「こんな針金みたいな草じゃ牛もよく育たないよ」

肥料をたっぷりやった栄養のある青菜のようにおいしそうな草とは牛の育ちもちがいます。

折りしもBSE(いわゆる狂牛病)や口蹄疫などの影響でますます日本の畜産は苦しくなっていきました。

給料を払う余裕がないのでもうアルバイトも実習生も募集しません。

働くカウボーイは父さんと野鳥さんの二人だけになりました。

牛の数も少しずつ減らしていったので、昔のように大勢でたくさんの干草を作る必要もなくなったのです。

放牧に出すほどの牛の数もないので見回りも要りません。

仕事は楽になりましたが、牛の数が減ったということは売りに出す子牛の数も減っていくということです。

セリに出荷しなければ収入はなく、ますます牧場は貧乏になってしまいました。

そして、

「これ以上赤字を続けるわけにはいかない」

ということで、ついに牧場の経営は終わりを迎えることになったのでした。

牛を全部処分して残務整理することになりました。

ここに来て私たち家族にとって困ったことがありました。

これからの住みかです。

今までは牧場従業員の管理棟兼住宅として家族も一緒に住まわせてもらっていましたが、牧場が閉鎖になったらここを出て行かなければなりません。

島には公営団地も民間アパートもありますが、今子どもたちが通っている学校の学区の村にはありません。

転校する気もありません。

「街に引っ越す?」

「そんなことすると思う?」

「んなわけないよね」

野生児出身の父さんですから、それはありえません。

それにイノシシがまだ二匹居ます。

団地でイノシシは飼えません。

「よし、家を建てるぞ!」

「あの土地に?」

「そこしかないだろう」

もし牧場を出ることなったら、ということも考えて以前から土地だけは買っておいたのでした。

学校のすぐ近くの畑ですが、そこなら広くて家畜も飼えます。

農業もやれます。

しかしそこは農地。

建築許可は簡単には下りません。

それでも牧場は早く出なければならないのです。

立退きの期限は迫っています。

まずは市役所に家を建てるための許可申請です。

しかしこれが何ヶ月もかかることになるのです。

たとえわずかの面積でも宅地には転用できない地域だったからです。

それなら農機具を置く倉庫なら・・・ということで倉庫の建築許可を申請しました。

倉庫だけでも建てないと、二十年近く住んできて増えに増え、貯まりに貯まったたくさんの荷物を保管する場所がありません。

「倉庫は早く作って荷物だけは何とか移動しなけりゃなあ」

「うん」

「人間は何とかなるさ、テント張って住んだっていいんだから」

「そ、そう?そうかな?」

牧場追い出されて私たち家族どうなるんでしょう。

→カウボーイのお引越し その3につづく

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