イノシシ天国 その13

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イノシシ天国 その12からつづく

「ああ。弱ったなあ」

前門の虎、後門の狼・・・じゃなくて前門のシシ、後門のシシ・・・です。

もうとっくに子どもたちを迎えに行く時刻になっています。

比較的弱そうなイノシシがいた方の南側のドアを細めに開けて外の様子をそおっと窺います。

「ホッ、居ない・・・今がチャンスだ」

車はいつも通りに裏口に近い所に停めてあります。

でも何本もの木に囲まれて見通しが悪いのです。

イノシシに出くわしても素早く逃げるのにも歩きにくいですし。

ここはちょっと遠くても安全な方の出入り口を使うべきでしょう。

ドアを開けると車に向かって飛び出します。

〝明日に向かって撃て〟

いやそんなにカッコよくないか。

一応戦う場面になっても襲われないように護身用の長い棒を持って。

タタタタッ、バタン!

運転席に乗って車のドアを閉めてひと息。

さっきまでイノシシがでんと構えていた裏口には今のところ姿は見えません。

でも周りが藪だらけですからその中に隠れているかも知れません。


学校で子どもたちを迎えて帰る車の中で・・・。

「お母さんこの棒何?」

「イノシシ避け」

「?」

「イノシシが逃げちゃったんだ」

「何匹逃げたの?」

「たぶん四頭くらい」

「え?!」
「え!」

「あとでイノシシの檻のところに行って確かめるよ」

「まだ見てないの?」

「だって家の周りをイノシシがウロウロしてて怖いんだもん」

「ええっ!」
「ええっ!」

「今朝はいつもの裏口を開けたらそこに居た」

「えええっ?!」
「はああっ?!」
「えええっ?!」

「だから今日はプレハブのドアの近くに車を着けるからそっちから家に入ってね」

「・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・」

プレハブというのは、母屋にほとんどくっ付けて設置されたプレハブ小屋のことです。

子どもたちが大きくなって家が狭くなってきたので、それまで空き地に置いてあったものを移動して子どもの勉強部屋にしたのでした。

プレハブを購入した当初は実習生の寝起きする住宅に、その後は物置になっていました。

プレハブのドアの正面に車を停めて、少し様子を見ます。

「今は居ないみたいだな、よし、今だ、行けっ!」

車とプレハブ小屋の入り口まで2mほどですが、念のためにそこに私が護身用の棒を持って立ちます。

子どもたちはバタバタと最短距離でプレハブ小屋に入りました。

「わ、押すな」
「ずるい、お兄ちゃんだけ先に行かないでよ」
「ヤダー、くるみが先だ」
「こら、襟首引っ張るな」

わずか半間の引き戸を半分ほど開けたところで、三人がわれ先に入ろうとするもんだからラッシュアワーのようになってしまいました。

順序良く入った方が早いでしょうに。

「争ってないで早く入りなさい」

ドアのところで団子になって詰まっている子どもたちの背中を押して中に押し込むと上がり口でつまずいて、ランドセルを背負ったまま将棋倒しのように重なってしまいました。

「わ、わ」
「痛いよー」
「ムギュー、重いー」

「ホホホ、よかった、無事に帰れて」

「ちっとも無事じゃないじゃないか」

「まあ、とにかく、窓を渡って母屋に行っておいてちょうだい」

プレハブの部屋の奥の、高さ1mほどの窓を開けてやりました。

子どもたちは次々と、今度は順番に窓枠を乗り越えて向こう側に渡って行きました。

母屋の窓とプレハブの窓は向かい合っていてその距離は40cmくらいしかありません。

窓から窓へ渡れば子どもでも簡単に母屋に移って行かれます。

ドア・ツゥ・ドア・・・じゃなくて、ウィンドー・ツゥー・ウィンドーです。

そうでなければ家の外をぐるっと回って入らなければなりません。

「イノシシが家の周りに何匹もいるから外に出たらダメよ」

「わかってるよ」

今までも夜はハブが出るから外に出てはダメ、と言って来たのに、今度は昼でも家の中に閉じこもっていなければなりません。

「つまんないよー」

「仕方ないわよ、イノシシに取り囲まれてるんだから」

向こうの囲いには何頭残っているんでしょう。

窓から外を見て、イノシシが近くに居ないのを確認して素早く見に行きます。


「あ、いない、一匹もいない」

裏に回って見ると、表からは草に隠れて見えなかったのですが金網には大きな破れ目が・・・。

これでは元の場所に戻してもまた出てきてしまいます。

金網を直さなければ。

いえ、こんなにイノシシがウヨウヨ周りに居たのでは落ち着いて修理できません。

イノシシを追い込むのにも手が足りません。

当分は家から出られません。

外出する時は靴を抱えて窓からプレハブにササッと移って車に乗る時の三秒間だけは外の空気が吸えるというわけです。

脱走イノシシに対する三秒ルールです。

ライオンや熊が逃げ出したわけじゃないですから、それほどピリピリしなくてもいいと思うのですが、あのカミソリのように鋭い牙を知っている者にとっては、子どもを不用意に戸外に出す気にはなれません。


昔の話ですが、山中の細い一本道(おそらくけものみちと重なっていたのでしょう)を一列になって歩いていた人たちがありました。

そして反対側から来たイノシシと鉢合わせしてしまいました。

イノシシもビックリしたのでしょう。

逃げ場もなく、人間たちの間を勢いよく体当たりしながらすり抜けて通っていきました。

運悪く股の間をイノシシに通られた人がいました。

昔のことなので厚手の作業ズボンなどは履いておらず、着物でしたから、その腿の内側を牙で直に斬られて出血死してしまったという話です。


真偽のほどは確認のしようがありませんが、ありそうなことです。

うちでは毎日ふんだんに食糧は与えているし、人を襲って食べたイノシシというのは聞いたことがありません。

肉食ではないし。

でもまあ、あまり刺激せずに静かにしていた方がいいのです。

しばらくは三秒ルールを守っていました。

イノシシたちはそんなに遠くには行かないし、これ以上悪いことにはならないと高を括っていたからです。




→イノシシ天国 その14
につづく

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