キャンプへ GO その10


   →その9からつづく

二日目のキャンプ地は昨日より地面は乾いて、「ゴリラのベッド」を作らなくても充分快適に眠れそうです。

少し傾斜して水平になっていないことが気にならなければですが。

川で水浴びしてサッパリしてなおさら熟睡できそうです。


「O先生も川で洗いませんか、シャンプーもリンスもまだ残っていますよ」

「いいです!」

都会育ちのO先生は自分のリンスを持って来ているのでしょうか。


焚き火の周りには酒を注いだコップを持って何人かが炎を眺めながらチビチビとやっています。

酒を飲まない私は輪に入ってもお茶しか飲む物がありませんが、オレンジの火を見ていると不思議と心が落ち着くものです。

原始時代はこうして一日の終わりを焚き火の周りで迎えて火のそばで寝たのでしょう。

この場ではリーダーだけでなく全員が原始人の気持ちです。

みんな火を見つめて、静かに何を思っているのでしょう。


酒が回った人も、そうでない人も、一人、また一人と自分の確保した、木下の寝床に行きます。

斜面の地面はビニールシートを敷いて寝てもやっぱり傾いています。

頭を高い方に向けて寝ますが、今度は左右どちらかが低くてそちらに身体が寄ってしまいます。

夜中に寝返り打ったはずみに何かに頭が当たって目を覚ますと、だいぶ離れて寝ていたはずのミイちゃんの顔が目の前にあってビックリ。

ズリズリとまた身体をずらして高い方に移動します。

どんな所でも雨さえ降らなければ寝られるものです。


三日目の朝が来ました。

身体の節々が痛く、腕や足が筋肉痛です。

焚き火の炎はとっくに消えて燃え残りばかりですが、まだかすかに灰が温かい所を見ると、最後の人、おそらくリーダーは夜遅くまで火の番をしていたんでしょう。


昨夜のエビの味噌汁を温めて、朝食を済ませるとまた撤収。

もうだいぶ山の上、標高の高い場所にいるはずです。
沢歩きより、かわいた山道が続きます。

川を登り詰めている間は一本道、ただひたすら沢を上がればよかったのですが、乾いた林の中では木に囲まれて方角がわからなくなってしまいました。

本当に私たちは帰れるんでしょうか。

地図を見ても今居る所の目印がなければ意味がありません。

登山道があるわけでなく、上へ上へと歩きやすい所を探して道なき道を登っていきます。

高い丘の上に出ました。

どうもここら辺が一番高い場所のようです。


島に渡って初めにボートで入った川は、島の北に流れ込むナカラ川という川でした。

その川筋を登って来て頂上辺りに来たということは、現在地も見当が付きます。

予定ではその後、そこから南東に流れるナカマ川の上流に出て、また川に沿って下りれば島の反対側のナカマ川の河口に出ます。
そこからは石垣へ行く船の出る港も近いはず。


「ここがこの辺では一番高いと思うんだけどな」

そこは確かに丘か山の頂のようで、下りて行く道はあっても、上に登る道はありません。

ここに来るまで深い林の中を歩き、時には茂みを掻き分けて通って来ました。
高い所なら見晴らしがよく、海岸線も見えて方向がわかると思ったのです。

しかしそこもまた高い木に囲まれて景色が見えません。

「何も見えないじゃん」

「誰か一番高そうな木に登ってそこから見るしかないな」

「ボクが行きます」

と、東京都出身、元体操部のO先生、スルスルと近くの高い一本の木に取り付いて器用に登り始めました。

あれよ、あれよ、と見ているうちにテッペンまで登り詰めてしまいました。
キャンプの一行にもう一人の猿飛佐助がいたのでした。

寒がりで、濡れるのが嫌いな「ヤギ」で、納豆が食べられないO先生。

誰にでも特技はあるものです。

いえ、O先生はもうすでに獣医師という立派な資格を持っていたのでした。

木の上で周囲を見回したヤギ先生、じゃなくてO先生、

「あ、わかった、港はこの方角だ、定期船が走ってる」

やっと目指す帰りの方向がわかりました。
O先生、ありがとう。

方向がわかれば、あとはただその方に山を下りるだけです。

道はなくとも下に下りていけば必ず水が流れる所に出ます。

その水をたどって行けば川に出てあとは下流の港に着けます。


キャンプも後半になりました。

ほどなく小さな川があり、小さな滝を下りることになりました。

上がって来るときにいくつもの滝を登って来た、ということは、別のルートにしてもまた滝や川を下りて行く覚悟をしなければならないということです。

滝を下りるのは登るのと同じくらい気を使います。
でも落ちても下は川、それほど怖がる必要もないのかも。

と思っているうちに苔でヌルヌルした岩に足を載せて滑って、落ちるようにして下りていました。

「エーイ、もうこうなったら破れかぶれだわ」

落ちるのも下りるのもこのくらいの高さの滝ならたいした違いはないと思い、濡れた岩をプールの滑り台のようにお尻で滑って下りて行きました。

「ああ、ラクチン」

リュックを背負っているから滑りすぎて背中から落ちてもリュックがクッションになってくれて痛くありません。


このまま下っていけば今日中にも下山できそうにも思えましたが、なかなかそうはいきません。

午前中に降りる方向を探して時間がかかったためか、まだだいぶ上流の方で夕方になってしまいした。

日が暮れる前にキャンプできる場所を探さなければなりません。

ナカマ川の本流に来ていることは間違いないと思えます。


川の両側は岩場ばかりでキャンプできそうな場所がなかなか見つかりません。

川に別の支流が流れ込んでいる所に来ました。

「ちょっとここで待っててくれ、この川の上の方に行って見て来る」

荷物を置いてまたリーダーの斥候です。



しばらくして、

「あった、あった、この上に行こう」

リーダーの言うことを信用してみんなついて行きます。

リーダーの見つけてきたキャンプ地は昨日よりさらに急な傾斜地で下がじめじめと湿っています。

川のすぐそばは水に濡れているし、岩ばかりなのである程度の広さを確保すると、川から数十m離れた所になってしまいます。

「ええっ?!ここでキャンプ?」

「もう仕方ないよ、これ以上は進めない」

確かにもう薄暗くなってきています。

早くテント設営、水汲み、寝床の準備、と仕事をしないと真っ暗になってしまいます。

またゴリラのベッド作りです。

今夜は多めに木の枝、木の葉を敷き詰めないと下から湿気が上がってきてしまいます。

とても快適なキャンプ場所とは言えませんが、文句を言っている場合ではありません。

この大量の木の枝のベッドに寝たおかげで、あとでエライ目に遭うのですが、それがわかるのはキャンプが終わって家に帰ってからです。
イトマンはそのことに気付いたのは私たちよりさらに数日後だったのでした。

                   その11につづく→

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No title

キャンプの夜の、その時は快適だったんですよ、はい。

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木のベッドに何があったんだろ~
虫がついてて刺されて大変な目に遭うのかしら。。
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