イノシシ天国 その8

人気ブログランキングへ

 最新記事がトップに来ています。

最初から読まれる方はここ「キャンプへGOその1」からどうぞ。


→イノシシ天国 その7からつづく


場所は牧場の中でも住宅からいちばん遠い東の端の区画でした。

100m四方くらいの四角い放牧場で、一辺は道路に面しています。

あとの三辺は森や藪に接していて、昼間はそのどこかにイノシシは隠れています。

夕方になって雨がポツポツ降ってきました。

1歳にもならない鉄兵を負ぶって傘を差して道路に立って日暮れを待つ私。

手には双眼鏡とトランシーバーを持って。

こんな姿、通りがかりの人が見たらどう思うでしょう。

荷物を持っていないから家出人には見えないかもしれませんが。

子守で散歩しているにしては双眼鏡とトランシーバーという持ち物はいかにもおかしいでしょう。

幸い夕暮れ時の田舎道は誰も通りません。

背中の鉄兵はお散歩と思っているのか、機嫌は悪くないようです。

周りが薄暗くなって目を凝らすと、

(あ、イノシシだ!)

「もしもし、聞こえますか?今、イノシシが西から東に横切って行きました。ドーゾ」

当時は無線通信の際は会話の交替ごとに「over」という意味で「ドーゾ」をつけるのが一般的でした。

「そうか、オスかメスか?ドーゾ」

「多分、両方。だって2頭見えたから。ドーゾ」

「イノシシは今どの辺りにいるんだ?ドーゾ」

モリを構えて放牧場の中央辺りにいるはずの父さんですが、草の陰に身を隠して姿勢を低くしているので、そちらからはイノシシがどこに居るのか見えないようです。

鉄兵は同じ所に立っているのが飽きてきたのか、背中で手足を大きく動かしてバブバブ言っています。

「あ、こっちに来た。・・・と思ったけど、またそっちに移動した。ドーゾ」

「そっちってどこだよ、どこにいるんだよ、ドーゾ」

放牧場より一段高い道路にいる私からは、イノシシは見えますが、草の高さより実を低くしてかがんでいる父さんの姿は見えません。

父さんからは私の姿は見えてもイノシシは見えません。

「アレ?見失った。ドーゾ」

「双眼鏡で見てくれよ。ドーゾ」

「もうこんなに暗くなって見えないよ。ドーゾ」

雨はまだショボショボ降っています。

背中の鉄兵は退屈してスヤスヤ眠ってしまいました。

子どもを負ぶっていつまで雨の中を見張りしているんでしょう。

「イノシシ見えなくなっちゃった。もうムリじゃない?ドーゾ」

「まだ見えてるよ。ドーゾ」

父さんはマサイ族並みに視力がすごく良かったのでした。

「もう疲れたから帰ってもいい?ドーゾ」

「もう少しがんばってほしいんだけどなあ、ドーゾ」

「どうぞ、って言ったから帰ります。ドーゾ」

「おいおい、ちょっと待ってくれよ。ドーゾ」

「ほら、どうぞ、って言ったじゃない。ドーゾ」

「わかったよ、今日はもうこれ以上はムリだな」

やれやれまたくたびれもうけでした。

でも、獲れなくて内心ほっとしました。

生け捕りとは言ってもモリで突いたらイノシシも大怪我です。

ちょっと残酷だし。

マサイ族スタイルのイノシシ狩りも失敗でした。

でもそんなに無理して獲らなくてもうちにはもうすでに大きなイノシシがオス、メス、2頭飼っているのでした。

数ヶ月前に和歌山の父さんの実家に帰省した時、山に近い所でイノシシをたくさん飼っている人がいました。

そこで売ってもらったのです。

そこから車で大阪の空港まで運び、飛行機に乗せて石垣まで連れて来たのでした。

鍵のかかる檻に入れてペットとして預けるのですが、この料金が人間様並みだったのです。

このときはまだ安売り切符など一般的でなく、せいぜい往復割引の10%引きくらいしかありませんでしたから痛い出費でした。

「家にもう2匹いるんだからこれでいいじゃない?」

「いや、あれは本土のイノシシだろう、こっちのイノシシとかけ合わせしてみたいんだよ」

石垣や西表にいる野生のイノシシはリュキュウイノシシという種類で、本土のいのししとは大きさや毛の色など少しちがいます。

瞳の色や黒目の大きさもちょっとちがうのですが人種のちがいくらいなものでしょう。

どっちを外国人と言っていいのかわかりませんが。

(外国人じゃなくて外国猪でした。)

巨大ネズミ捕りや草の陰からモリで突くのでは獲れませんでしたが、その後も西表でワナで獲ったり、オスとメスから子どもが産まれたりして少しずつイノシシの頭数は増えて行きました。




→イノシシ天国 その9につづく


↓毎回クリックありがとうございます
↓みなさまのクリックで順位が上がります
↓1日1回のクリックを
にほんブログ村 小説ブログ コメディー小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 子育てブログ 自然育児へ
にほんブログ村
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

野生児の妻

Author:野生児の妻
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
FC2カウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード