自宅でホームレス

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「屋上で野宿する」話の6回目です。

「シロアリ・シロアリ」から続きます。


ネズミとシロアリに追い出されたような形で屋上に野宿することになりました。

野宿と言ってもトタンの簡単な屋根がかけてありますから、夜露と多少の小雨はしのげます。

蚊の襲撃には蚊帳が守ってくれます。

ちょっとホームレスになった気分でもあります。


「今日は涼しいねえ」

「うん、台風が近づいているんだって」

「風すごいね」

扇風機はもちろん必要ないですし、タオルケット1枚では心もとない感じです。

夜更けになるとさらに気温が低くなり、今まで熱帯夜だったのがウソのようです。

(タオルケットでなくて毛布か掛け布団持ってくればよかった)

でももう疲れていて、寝始めたら階下に布団を取りに行くのもめんどうです。

暑いよりはましと思って寝たのですが夜明け前に寒くて目が覚めてしまいました。

「ううう、寒い・・・」

台風が近いので強風です。

軽いポリエステルの蚊帳など風になびいて、鯉のぼりのようにハタハタと宙を泳いでいます。

蚊帳の裾をゴザの下に折り込んでめくれないようにしてから寝たはずなのに。

タオルケットも風で動いていました。

隣で寝ているくるみはぐっすり。

(仕方がない、くるみが眠っているから寒いのは我慢していっしょに寝てやろうか)

体を寄せ合ってタオルケットを重ねて寝ていますがやっぱり寒い。

台風接近で今は風速5mくらいはあるでしょうか。

屋上は風速7m以上あると思います。

こんな日に外で寝るなんて馬鹿げてるようですが、ネズミとシロアリから逃げて来てここしか寝る所がないのです。

階下まで布団を取りに行くのはめんどうですから、この周りに布団代わりになる物はないかと目で探しました。

ダンボールでもないかな。

ますますホームレスの生活のようになってしまいました。

しかし40坪の自宅の屋上でホームレスっておかしくないでしょうか。

寒い、寒い、と思っていたら、くるみが、

「お母さん、寒い!」

「うん、寒いね」

「さっきから寒くて何度も目が覚めたんだけど、お母さんが眠っているから悪いなあ、と思って我慢してたの」

なんと、お互いに何度も目が覚めてその度に相手が寝ていたので遠慮していたのでした。

「下に降りようか」

「うん、行こう」

枕とタオルケット、目覚まし時計などを持って降りて行こうとしましたが、ふと気がついて、

「どこに寝るんだ?」

寝室はベッドもベッドの下のベニヤ板の床もはがしてゴミだらけの床下のコンクリートむき出しになっています。

西の部屋のきりんが寝ている3畳に押しかけるには本だのCDだの小物や服が散らばっていて、片付けるのがやっかいです。

西の部屋の北の窓側の所も本来2人くらい寝られるはずなのです。数ヶ月前まではきりんはそこで寝ていたのですから。

でも今はシロアリから救出した寝室の布団が山積みにされています。

この布団の脇にはこれまた本や文房具、服などごちゃごちゃと置かれてあります。

布団の山の上に牢名主のように座る事はできても二人は寝られません。

元々布団を1枚敷くのがやっとのスペースしかない場所です。

食事している椅子を3脚並べてベッド代わりにすると言っても一人分しかありません。

「ちょっと待ってて。下で寝る場所を確保してから荷物を持って降りよう」

もう、あの場所しかない!

先に下りてきりんの勉強部屋に行きました。ここは引っ越した直後には二段ベッドを置いてきりんとくるみの寝室にしていたのでした。

その後西の部屋や東の部屋を使うようになって、北の窓が一つしかないその部屋のベッドはほとんど使われなくなっていました。

使われない二段ベッドは当然荷物置き場になりました。

最近になってきりんがこの荷物置き場のベッドの片づけを始めたのでした。

くるみも私も手伝って、荷物をどけてベッドに置きっぱなしだった布団も干してベッドの底板もはずして大掃除をしていた途中だったのです。

はずした底板をまた上の段にはめて、はがした布団を急いで敷いて何とか寝られるようにしてからくるみを呼びに行きます。

いつもは風通しが悪くて暑苦しいコーナーですが、上の段なら扇風機を置いてなんとか寝られます。

こんな日のホームレスの私たちにとっては「黄金の御殿」です。

それから台風は大東島の辺りに停滞して、強風の他に雨も吹き付けてきました。

もう屋根ではしばらく寝られません。

二段ベッドの上の段に二人で寝る日が続きました。

実はもう一つベッドを置いた部屋があるのですが、去年から同居する事になったおばあちゃんが寝ているので使えません。

父さんは始めは台所の椅子で寝るホームレスでしたが、そのうちきりんが寝ていた布団に寝るようになっていました。

「ちょっと、そこどいてよ、私が寝るんだから」

「いっしょに寝ればいいじゃないか」

「いやよ」

「オレはいやじゃないよ」

「私はイヤなの!!」

「気にするなよ」

「気にする!」

そうでしょう、中学生や高校生の娘がお父さんといっしょに寝るのを喜ぶのは珍しいでしょう。

仕方なくきりんは反対側の布団の山を片付けて荷物の隙間で寝ていました。

誰かがホームレスのはずれくじを引くことになるわけですね。


天気がよくなったら、東の部屋を乾燥させてベッドを入れて寝室を準備できますし、また屋上でも寝られます。


でもこんな時に限って台風は動きが遅くいつまでも天気が悪いのでした。


「屋上で野宿する話」はこれで終わります。

→次は「カウボーイのお引越し」の話へ


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シロアリ・シロアリ

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「屋上で野宿する」話の5回目です。

→「ネズミ屋敷」からつづく

ネズミを追い出し、閉め切った家は暑くてたまらず、人間も家には居られなくなりました。

まあ、そうでなくても夏は涼しい屋上の方が気持ちよく寝られます。

屋上の野宿が数日続いたある日、階下の部屋で荷物の片づけをしていた時です。

ネズミ騒動の前まで寝室に使っていた部屋です。

床のベニヤ板に段ボール箱を置いてありました。

台所で使うラップ類を入れて何気なく置いてあった箱ですが、久々にふと開けて見ると、中の新品のラップやアルミホイルの紙の箱がボロボロ。

「な、な、なんだ!!」

取り出すとダンボール箱の底にシロアリがたくさん!

「う、うわぁ――っ!」

「どうした?!」

「またシロアリが――」

そうです、シロアリが出たのは、今年になってこれでもう5回目だったのです。

1回目は台所の床に置かれた段ボール箱とその後ろの木製の食器戸棚。

家自体はコンクリートとブロックですから、木造住宅のように壁や柱を喰われることはありません。

でも壁のブロックの隙間や地面に直についた床から侵入したシロアリは壁に着いている木製の家具、紙製の箱、布製の物を食べ尽くして行きます。

家の内側の壁はブロックむき出しで上塗りもしていません。

ブロックの隙間から出てきたシロアリが渉って来られないようにシロアリの食糧になりそうな物は壁から少し離して置くべきでした。

食器戸棚の下半分の引き出しは全てはずして外に中身ごと放り出し、殺虫剤でシロアリ退治。

2回目は反対側の壁に面した、くるみと鉄兵の勉強部屋。

これも壁に触れていた本棚とその中の雑誌類などほとんどやられていました。

ビニールで包まれたもの以外の紙製、木製の物はボロボロ。

丈夫なカラーボックスもスカスカの紙のようになってしまいます。

そして3回目はくるみの部屋の壁を挟んだ隣の部屋、つまり食糧などを置いてあるコーナーの壁。

4回目は台所の壁を挟んだ隣の部屋のベニヤ板で作った棚。

実は今回、この4回目のシロアリの場所とラップ類の箱の置かれた場所はすぐ近くだったのです。

迂闊にも段ボール箱をちょっとの間だからと、無造作に置いてそれがブロック壁に触れていたのでした。

「あああ、また大掃除だ」

場所は寝室。

「布団を全部外に出して、ベッドもだ」

これは大仕事です。

窓から簡易ベッドを苦労して出してしばらく日に当ててシロアリが居なくなるまで室内に入れられません。

これで本当に屋上で寝るしかなくなりました。

曇りで気温も下がって涼しい夜も、風がなくて蚊が多い夜も。

「いつまでベッドと布団を外に干しておくの?」

「まだまだ、1匹でもシロアリが残っていたらまた増えて同じ事だろ。徹底的に居なくなるまで家に入れちゃダメだ」

「10日間くらいは寝室は使えないと思った方がいいでしょう。

西の3畳の和室はきりんが一人で寝ています。

父さんは相変わらず屋上のトタン屋根の下に牛乳コンテナとベニヤ板で作った簡易ベッドで寝ています。

くるみと私は同じ屋上でも少し西寄りの位置にコンテナを並べてゴザを強いて寝床を作ります。

その位置でないと朝日がまぶしくて日が当って暑くて、夜明け過ぎには寝ていられなくなるからです。

夜になると目覚まし代わりのケイタイと文庫本を持って屋上のキャンプ場・・・じゃなかった簡易ベッドに寝に行きます。

風のない夜は蚊がまた「ぶんぶんぶん」。

そこで棚の奥から引っ張り出してきたのが昔懐かしい「蚊帳」です。

もう何年も使っていませんでしたが取り出してみるとポリエステル製の蚊帳はどこも傷んでいませんでした。

十分使えます。

トタン屋根の下に紐で四隅を結んで、これでかの襲撃に向かえます。

「これが蚊帳なの?おもしろーい」

今の子は蚊帳を知らないんですね。

「どうやって入るの?」

「裾を上げて虫をいっしょに入れないように気をつけて、サッと素早く入るんだよ」

快適な睡眠も2、3日の間だけでした。

台風が近づいて天気が悪くなってきたのでした。

「寝られなくなるまで屋上でがんばるぞ」

と言うか、そこしか寝るところがありません。

(ネズミとシロアリに占領されて人間が外で寝る事になるとは・・・)

しかし、天気が変わるとだんだん悲惨なことになっていくのでした。

→「自宅でホームレス」につづく

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ネズミ屋敷

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野宿でも扇風機からつづく
「屋上で野宿する」の4回目です。


夏休みも終わって新学期が始まったある日、家にネズミが出入りしていたのを発見。

ネズミ出没は今に始まったことではないのですが、網戸を齧って穴を開け、そこから出入りしていた大きなネズミ。

2匹で追いかけっこ、つまり交尾しようとしていたのです。

穴から外に出たのを見つけたチャンスに、

「窓を閉めろ!もう入れるな」

この「番」(ツガイ)のネズミがまた家の中に入って巣を作られたらたまりません。

子ネズミを産んで、あっという間にネズミ算式に増えてしまいます。

いつもの穴から入れなくなったネズミの夫婦はどこか入るところはないかと家の周りをチョロチョロ。

(夜行性のクセに昼間から出てくるな!)

かくして、ネズミが2度と入れないように脱衣所、トイレ、寝室と全ての窓を閉め切ってしまいました。

「ううう、暑い」

風通しの良い高台の家、と自慢していましたが、風通しがよいのは窓を開けた時です。

窓を閉め切っていたら風も入らないしただただ
  「暑い!」 

1m置きの扇風機も生暖かい風を送ってきます。

1日中閉め切った部屋は夕方、夜になるとサウナのようです。

「暑いよー、窓開けたらダメ?」

「ネズミが入るだろう、ダメだよ」

調理をするとますます熱気がこもります。

「わ、わ、わ、こんな部屋では暮らせない!俺は2階へ行くぞ!」

父さんは、自分の皿にご飯とおかずを盛るとお箸を持ってさっさと屋上に行ってしまいました。

確かに屋上は風が吹き抜けていい気持ちです。夜はもちろんひんやりした空気。

昼もトタンの屋根が完成したおかげで日陰にいれば家の中で蒸し焼きになっているよりずっと涼しいです。

(よかった、屋上への階段と日除けのトタン屋根があって・・・)

屋上を寝室に使ったり、階下の室内で扇風機かけっぱなしで過ごしたり。

家の中はネズミを閉め出した・・・と言うより、ネズミに閉じ込められたという気がします。

快適に過ごしたかったらやっぱり屋上で野宿でしょうか。

まあ、雨の日は涼しいから閉めた室内でも居られますし。

ネズミに家の中を占領されて野宿を余儀なくされるのと、ネズミを追い出して閉め切って暑い部屋から逃げての野宿とどっちがましか。


・・・・と思っていたら、ネズミよりもっと厄介な生き物が家に侵入していたのに、この時は気づきませんでした。

→「シロアリ・シロアリ」につづく


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