カウボーイのお引越し その19

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→カウボーイのお引越し その18からつづく
牧場の住宅内の荷物はほとんど移動しました。
荷物をどけると、今までの家ってこんなに広かったかなあと思えます。
引越しの時には誰でも感じることですが、物が多い我が家は特にそうなのです。
物を目一杯置くから部屋が狭くて寝るときも食事の時もぎゅうぎゅうでした。
「引っ越したら広々とした部屋でゆったりと寝たいなあ」
「任せとけ」
「テーブルも広く使って五人全員そろってご飯を食べる場所がほしいわ」
「もちろんだ」
それまでは小さなテーブルしか置けなかったので子ども三人がテーブルに着くともう一杯で、父さんは少し下がって段ボールか何かをテーブル代わりにして食べていました。
私はみんなが済んだ後に交替で食べていました。
だからこそ室内を広く使ってのびのびと暮らしたい、という願いは強かったのです。
『季節外の衣服やキャンプ道具など普段使わない物をしまっておく』はずだったコンテナ倉庫は、建築が完成した時点でもう大きな道具類や角材、ベニヤ板の残りなどで満タンです。
新居では広々過ごすどころかもっと厳しい狭い空間の生活になっています。
建坪は40坪あるので決して狭小住宅ではないのですけど。
家の中のキャンプ状態の生活はまだ続きます。
荷物は運び終わっても、外回りの金網や地面に打ち込んだ鉄筋、プレハブ勉強部屋の日除けの庇も自分で手作りして取り付けたものでしたから、これも撤去です。
台風にもビクともしないように頑丈に取り付けたから、分解するのにも難儀することになるのです。
やがて夏休みも終わりに近づきました。
夏休み前に引越しを済ませて、休みに入ったらゆっくりと荷物の片付けをして新学期はすっきりと迎えようという計画はどんどん遅れていきます。
そして東京の塾の夏期講習も終わって鉄兵が帰ってきました。
「あれ?まだ引越し終わってなかったの?」
「荷物は運び終わったけど、まだ運ぶ物があるんだよ」
「オレはどこに寝るの?」
「どこでも自由に好きな寝場所を選んでください」
「って、ここでいいよ」
籐の長椅子のクッションの上です。
「オレは・・・」
「お父さんどこか隙間を見つけて寝てね」
「ああ、オレ暑がりだから夜は外で寝る」
家の東側の出口前に高さ30cmほどの「ミカンコンテナ」を並べました。
りんご箱くらいの大きさのミカンコンテナを4個並べてその上にベニヤ板を載せるといいベッドになりました。
「ああ、涼しい!こっちはいいぞー」
「どれどれ」
「ホントだ、風が涼しい」
「こっちの方がいいなあ」
「いいぞ、みんなこっちに来て寝ても」
余っているミカンコンテナをもっと集めて並べてベニヤを載せ、もう一台ベッドが外にできました。
大きなベニヤ板一枚に子供なら二人は寝られます。
山の中腹の斜面で回りは広いキビ畑しかない場所です。
空気も涼しい。天然のクーラー、というか工場で使われるような大型扇風機並の風が吹きます。
「広々寝られるー」
家の中は荷物で塞がっていますから人間は外で寝る方が広いのです。
やっぱりキャンプ家族なのでしょうか
「空が広いな、引っ越してきてよかったなあ」
「星を見ながら寝られるなんていいねえ」
周りに高い建物はもちろんのこと1軒の家もなくて障害物はないし、島に大きな工場もなく、空は澄んで星空観察にはいい田舎です。
「でもなんかあの辺がまぶしくてじゃまだな」
家の東側の斜面の下、強烈に明るい光が出ています。
星空観察にもじゃまですが、寝るにもまぶしくて寝られません。
それは小学校の校庭と校門の前にある防犯用の水銀灯の光でした。
「まぶしいから消してほしいな」
そうはいきません。
消してしまっては防犯灯の意味がありません。
でも足元の低い位置から上向きに照らされるとどうしても目に入って眩しいのです。
「頭と足を反対向きにしてみようかな」
「あ、いいかも!やってみよう」
頭と足の位置を入れ替えます。
「ダメだよ、頭の方が下がる~」
「寝にくいよ」
「よーし、光を遮る壁を作る!」
もう一枚ベニヤ板を運んできてベニヤのベッドの端に立てて水銀灯の光を遮断しました。
「ああ、やっと暗くなった、これで寝られる」
「星もよく見える」
南十字星の見ごろの時期は過ぎていましたが、流れ星なら1年中見られます。
「あのもやっとした白いのは雲?」
「天の川だよ」
空の端から端まで渡る銀の粉の川が天の川です。
「星空もいいけど、なんかちょっと痒いんだけど」
「蚊がいるんだね」
「か、カユイよー」
「蚊だけじゃないんじゃない?ブヨもいるみたい」
「うん、ものすごくカユイ」
雨が降る前はブヨが出没します。
「カユイなあ、そろそろ家の中で寝るか?」
「つまんないの」
「天の川が大きくなった」
?
「ホントだ、空全体に広がった」
??
「天の川が広がったから星が見えなくなった」
???
「コレは天の川じゃないよ。天の川の中も星は見えるんだよ。星を隠すのは雲だよ」
「じゃあ、曇りになったってこと?」
雨が降ってくるのかも・・・。
ポツ・・・、ポツ、ポツ、ポツポツポツ・・・
「雨だ!」
ザ――――――!
「ワー、降ってきた」
「逃げろー」
タオルケットを抱えて我先にテントに、じゃなかった。家に入ります。
「まるでキャンプのときみたいだな」
キャンプ家族なのでした。
→カウボーイのお引越し その20につづく
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