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カウボーイのお引越し その13

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→カウボーイのお引越し その12からつづく


大きい仕事が終わって一区切りがついたところで2、3日休みになります。

が、これから数日間は毎日しなければならない作業があります。そ

れは屋根に入れたコンクリートが生乾きのうちに水を撒くことです。

「早く乾いて欲しいのに、なんでわざと水を撒くの?」

「こんなに暑いカンカン照りの日は水を撒きながら乾かさないとヒビが入っちゃうんだよ」

そうか、セメントの中心部分と表面とで乾き具合がちがって、ということは縮み方もちがうからヒビが入るのかな。

子どもの送り迎えに学校に来たついでに現場に寄って毎日二回ほど広い屋根の上にジョウロで水を撒きます。

撒いたそばからどんどん蒸発していきます。

夏至を過ぎていました。

水道はまだ敷設されていません。

飲み水は毎日運んできていましたが、仕事で使う水は溜め池の水を使っていました。

家を建てる前に整地してもらった近所の土建業の人にお願いして、敷地の山側に直径3mほどの穴を掘ってもらったのです。

ここに山から流れてきた雨水を溜めます。

建物の方に水が流れてこないように、また溜めた水は何かと利用できて便利なので、一石二鳥です。

このため池のおかげでセメントを練る水にも使えたし、汚れた手足を洗うのにもとても役立ちました。

池まで行って手を洗うのは不便なので、モーターポンプで汲み上げてドラム缶何本にも移して使いました。

池があふれるくらいの大雨が降ることもあります。

それも想定内です。

この辺りのスコールの雨量はすごいのです。

池の上部に太いパイプを入れて、その先は地面の下を通り、畑の下の低い土地の方に余った水が送られるようにしておきました。

これで大雨でも池は氾濫しません。

このパイプを通ってきた水はドラム缶に受けて、またここでも溜めて置きます。

こちらでも畑や家畜にこの雨水を使うのです。

むだはありません。

もちろん屋根のコンクリートに撒く水もこの雨水です。

屋根が乾くまでサポートの柱ははずせません。

その間にまだまだすることはたくさんあります。


200m離れた道路の水道管から水を引くこと。

外壁のブロックに上塗りのセメントを塗ること。

電柱を立ててもらい電気を引くこと。


隣の民家(200m先)近くの水道管の本管から道路のアスファルトをはがして、という王道の方法で支線を引いてもらうと、何十万円もかかります。何百万円かもしれません。

どうしても業者でないとできない部分以外は自分たちでパイプを通すことにしました。

本管から現場までの土地の半分以上はうちの畑です。

隣接の畑の持ち主にも許可を取って畑の中を深く掘ってパイプを埋めます。

またまた小型パワーショベル「鉄兵丸」が大活躍です。

そして本領発揮のマムさん。

外壁は雨が降っても水が滲み込まないようにブロックの上にセメントを塗ります。

室内では浴室だけをセメントで壁塗りをします。

ここだけはシャワーの水がかかります。

こういう仕事は器用な棟梁が慣れていてきれいに塗ってくれます。

サポートをはずすと、中は広い空き倉庫状態です。

次なる仕事は、固まったコンクリートの柱や天井の型枠のコンパネの板をはがすことです。

バールではがした板から釘を抜き取っていくのは子どもたちの仕事。

みんな慣れたもんです。

台所の柱の型枠の板もはがされました。

一度爆裂して急いではめ直したあの柱です。

「ん?なんか、目がおかしいのかな?」

「おかしくないよ」

「気のせいか、この柱ゆがんで見える」

「気のせいじゃないよ、あふれたセメントがふくらんで固まったんだよ」

柱の途中、根元近くがふくらんでいます。

凸面鏡か凹面鏡の部屋にいるようです。

「なんか目が回る・・・」

まあ、鉄筋が入って、セメントが固まったんですから構造上問題はないでしょう。

見た目の問題です。

いえ、この柱の前に冷蔵庫や食器棚を置いてしまえば見えなくなるからいいかな。

「この柱、お腹がふくらんだみたいで、なんかこういうの教科書で見た覚えがある」

「なに?」

「あ、思い出した、エンタシスだ」

「は?、何だ?」

「やっぱり遺跡だあ」




→カウボーイのお引越し その14につづく


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カウボーイのお引越し その12

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カウボーイのお引越し その11からつづく


屋根の型枠ができあがって、あとは大量の生コン注入となりました。

その日は大勢の人に来てもらって仕事をするので、終わってから、いわゆる「棟上式」(むねあげしき)をします。

近所の人も呼んで、無事に棟上が出来たことをお祝いして料理や酒を振舞うのです。

今までは人手の要る作業の日は女の私も頭にタオルを巻いて男たちといっしょに作業をしていました。

でもこの日は棟上式の準備が忙しいので朝から料理作りに専念します。

二、三品作ると言っても、村のほとんどの人が来ますから相当の量になります。

刺身、お寿司は店で買って来るとして、天ぷらなどは手作りです。

牧場の家で作ったのではここまで運ぶのに遠すぎます。

建築中の場所にはガスも水道もまだありません。

そこで村の公民館の台所を借りて料理することにしました。

私一人では大変なので、友人のナッちゃんに手伝いに来てもらうことにしました。

ナッちゃんは数年前に牧場で過ごして今は石垣の人と結婚して主婦になっています。

大量の魚、イカ、野菜に衣をつけて二人で次々と揚げていきます。

島では冠婚葬祭の行事その他、人が集まるというと料理は刺身と天ぷらがメインです。


「何かというと天ぷらだけど、いいのかな?」

「いいんです、天ぷらで」

自信を持ってそう答えるナッちゃんは大阪出身ですが島の地元の人と結婚しています。

大家族で親戚の集まる時はたぶん大量の天ぷらを今まで作って来たのでしょう。

「こんなにいつも天ぷらで飽きないのかなあ」

「飽きないんですよ」

笑ってそう言ういつもニコニコ明るいナッちゃん、

ナッちゃんの作る天ぷらを親戚の人たちはきっと喜んで食べてくれているんでしょう。

幸せそうなナッちゃん、

私より二十歳くらいも年下で主婦暦も短いナッちゃんに沖縄風のおいしい天ぷらの作り方を教わります。

冷めても衣がベチャつかず固くもならない。

野菜を揚げても水っぽくならない。

天ツユや醤油をつけずにそのままで食べられる下味付きです。

天ぷら作りに夢中になっていましたが、現場の生コン注入はどうなったでしょう?

だいぶ前に公民館の前の道路をミキサー車が通って行きました。

ここの台所の窓から道路を走る車はよく見えます。

「ナッちゃん、悪いけど、ここちょっとお願い。向こうの様子も見てくるね」

「はいはい」

車で2分。歩いても行かれる距離です。

いえいえ、それどころか道路から山の方を見ると高台に建つコンクリート色の四角い大きな物が遠くからも見えます。


「みなさん、ありがとうございます。わあ、屋根の生コンうまく入ったんだね」

「うん、ちょっとアクシデントはあったけどね」

「何?」

「柱が爆裂しただけだよ」

「爆裂?!」

柱の型枠を留めたネジ釘が一部はずれて、板の隙間から生コンがあふれ出したらしいのです。

「で、柱は無事?」

屋根も崩れず普通に建っていますから無事は無事だったと見えますが。

「急いで板を当てなおして事なきを得たんだけどね、・・・・まあ・・・」

「だけど・・・?」

「ここだよ」

たくさんのサポートの柱の隙間を縫ってこわごわ屋根の下を覗くと・・・。

ちょうど台所と脱衣所の境に当たる柱です。

型枠はきちんと直されて生コンが納められています。

下を見るとあふれたセメントが床にこびりついて固まりかけています。

つるつるに平らに出来上がっていたコンクリートの床にちょっとセメントが垂れてデコボコになったかなあ。

でも壁際の隅っこだし、まあいいか。

自分たち家族が住むだけだし。

しかし、数日後に型枠のコンパネをはがした時に結果が分かることになるのですが。


「もうそろそろお仕事終わりそうだね」

「よし、棟上式のお祝いの準備だ」

建物の中はサポートの柱だらけだからお客さんはもちろん、家族も入れません。

棟上のお祝いの席は建物の外にビニールシートを敷いて、ということになります。

セメントの後片付けが済むころにはぞくぞくと村の人が棟上のお祝いに集まってくれます。

買ってきた刺身やお寿司と、公民館でナッちゃんに手伝ってもらって作った大量の天ぷらを並べます。

大人たちが食べて酒を飲む席の隣に子どもたちのテーブルもセッティング。

「ワーイ、お寿司だ!」

「ポテトチップおいしい」

近所の子どもたちも集まっていっしょに食事するのは楽しいことです。

ご近所からは棟上のお祝いもいただいて薄暗くなるまでこの山の中腹の建築現場がにぎやかな宴会場になります。

今まで毎日仕事に来てくれていた棟梁やマムさんも、忙しい仕事はこれで一区切り。

今までは、夏の台風が来る前に棟上を終わらせようと毎日暑い中がんばっていたのでした。


明日は朝寝坊ができそうです。



→カウボーイのお引越し その13につづく


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カウボーイのお引越し その11

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→カウボーイのお引越し その10からつづく

子どもたちも学校から帰ってからよく働きました。

セメントが固まった後に型枠のコンパネをバールではがしたり、板に打った釘柄おペンチやくぎ抜きで抜いたり、曲がった釘をハンマーで叩いてまっすぐに直したり・・・。

大工仕事の経験の少ない大人よりもハンマー、ペンチの使い方が上手になったかと思えるほどでした。


「お母さん、夕方もっと早くに迎えに来てよ」

「そうだよ、早く帰って勉強したいんだよ」

壁と屋根が出来上がったら、先ず真っ先に運び込むのは子どもたちの勉強机でしょう。

「設計図よりトイレの奥行きを60cmほど広くしたんだけど、いいよな」

「え、ええ、まあ、広くなる分にはいいんじゃない?」

(ふうん、設計図どおりじゃなくていいんだ。)

「なんか初めの設計よりだいぶ広くなってない?」

「せっかく建てるんなら、めいっぱい広くしたいじゃないか」

それはそうですけどね。

「屋根を支える強度を増すためにここに壁を入れてもいいかな」

「いいんじゃないの」

現場での設計変更もありなのでしょう。

建築主がその場にいるんですから。

地面に何か白い紙が落ちています。

「アレ?設計図のコピーだ。風に飛んで落ちてたけど・・・」

「ああ、もういいんだ、それ」

(設計図なくていいのかな。)

地面にコンクリートを流して床を造り、ブロックの壁がある程度できあがると、いよいよ家を作っているんだという実感が湧いてきます。

本当は家じゃなくて農業倉庫ということになっているんですけど。

「床面積、けっこう広いね」

「40坪だからね」

「家の中でローラースケートできそう!」

「自転車も乗り回せるね」

広い住宅に引っ越すのが楽しみになってきました。

「広い」「大きい」とその時は思っていました。

実際、広いです、荷物がなければ。

床もセメント打ちっ放しで土足で上がるようにする予定だったので、家の中で自転車や三輪車に乗って遊ぶのも可能なはずでした。

建築も大詰め、屋根にコンクリートを流し込むための型枠作りは時間がかかります。

ていねいにやらないと流し込んだ生コンの重さに型枠や支えが耐え切れなくなってしまうからです。

屋根を張り出した所が庇になるのですが、

「庇は、設計図では90cmになっているけど、そんなに要らないね」

「ああ、60cmで充分だな」

え?庇が短いと夏は陽が入って暑いのでは?

「そうだ、家が出来上がったら屋根の上にトタンを載せて屋根の日除けと庇にするから、コンクリートの庇は短くていいんだ」

ホントかな。

日曜大工で日除けを一人で作ってくれるのかな?

ちと不安でもありますが・・・。

ここは建築主の言葉を信じることにしましょう。
 

梁は大きく、太い鉄骨を入れます。

生コンを入れる前に「サポート」と呼ばれる鉄の柱を屋根の下に数mおきに何本も入れておきます。

このサポートもレンタルです。

屋根のコンクリートが固まるまではめておくのです。

電気の配線も始まります。

今までは電動ドリルや電動高速カッターなど、電気が必要な時もありましたが、発電機を使って自家発電していました。

建築が完成する頃には電柱を立てて正式に電気を引く工事をします。

室内の配線は電気屋さんにお願いします。

丈夫なパイプの中に電線を入れて、屋根の厚いコンクリートの中に埋めるというわけです。

電気配線の準備もできて、そしていよいよ屋根の生コン注入です。

この時に天井の梁も、部屋の境目にある柱の何本かも、同時に生コンを入れて固めます。

それがいわゆる棟上(むねあげ)で、一応大まかな家作りの大工仕事が終わります。

棟上が無事に行われたら、もう建築は九割完成したも同じです

その後は外壁の塗装、ドアや窓の取り付けをアルミサッシ屋さんにやってもらって、完成になります。

内装はしなくても使えます。

棟上の日は近所の人が何人も手伝いに来てくれます。

この日が上棟式になるのです。

この日はご近所の人達を呼んでお祝いをするのでその準備も必要になるのです。





→カウボーイのお引越し その12につづく


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カウボーイのお引越し その10

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→カウボーイのお引越し その9からつづく


柱の骨組みができて土台の骨組みと組み合わせて立ち上げます。

柱は垂直になるように正確に測ります。

それには水準器という道具を使います。

丈夫で厚い大きな板状のモノサシみたいな形です。

厚さ3cm以上ある板の中に色のついた液体の入った小さなシリンダーのような物がはめ込まれてあります。

密閉されたシリンダーの中には少しだけ空気が入っています。

その空気の粒が、泡というか透明の玉のように液体の中を泳ぎます。

水準器をちょっとだけ傾けると、わずかでも高い位置に空気は行こうとして動き出します。

完全に水平に置かないと空気の粒はシリンダーの中央の位置に止まってくれません。

なあるほど、こうやって水平、垂直を取るのか。

いろいろと勉強になるのです。

水準器 ↑水準器

ミキサー車で生コンを入れてもらい、一日経って乾いて固まると、丈夫な、コンクリートの土台から柱の骨組みが生えているように見えます。

高さが加わって、作業は立体的になりました。

高い所で仕事をするので足場が必要になりました。

足場用の鉄の組み立ての板はレンタルです。

柱の骨組みにコンパネで型枠をします。

また生コンミキサー車を呼びます。

翌日にはコンクリート製の柱が青空に向かって垂直に伸びていました。

「パルテノン神殿みたい」

「あれは円筒形の柱だろ」

「だって柱だけが何本も建ってるから」

「それにパルテノン神殿、ってあれ、遺跡じゃん」

新築の家を作ってるのに遺跡はないでしょう。

とにかく、ここまで出来上がるとなんとなく完成した家の形が想像できます。


「ここが浴室になるんだ。ここが台所で、料理して、運んでこの辺で食事する、と、・・・ウフフフフ・・・」

「何を楽しそうにニヤニヤして歩いてるんだよ、おい、下を見て歩けよ。その板踏むなよ」

自分たちで家を作るのは楽しいものです。

次は壁作りです。

床、壁、柱、屋根と全てコンクリート流し込みにすると材料費が高額になってしまうので、壁はブロックにします。

レンガのようにただ積んだだけでは弱くなってしまうので間に鉄筋を入れます。

ブロックには大きな穴が開いています。

この穴の位置に合うように鉄筋を土台に垂直に挿します。

これに上からブロックの穴を通して積んで行きます。

一段積む毎にブロックとブロックの隙間にセメントを塗って糊の代わりにしてくっつけます。

一段ブロック積んで、セメント塗って、また一段ブロック積んで、の繰り返し。

数段毎には横にも鉄筋を入れます。

踏み台に乗って高い位置からブロックを入れて下までゆっくり下ろします。

上半身と膝の屈伸を一度にやっているようで、いい運動です。

こういう作業は人手が要るので、荷物詰めの方はちょっと置いといて私も現場組に参加します。

「ヒェ~~~、一日中やって腰が痛いよー、まだ半分以上残ってるよね」

「二割くらいしか進んでないよ」

形はシンプルでも広く住みたいと大きめに設計したので、壁の面積も大きくなりました。

壁のブロック積みに何日もかかりました。

窓の部分は寸法を測って四角くおかないといけません。

そうしないと窓のない家になってしまいます。

壁ができたら、次は天井の型枠を作って一気に生コンを流し込むのです。

その後、ドアと窓が入ったらすぐに荷物運び、引越しを始めることになっています。

牧場の家も早く出ないといけません。

もう頻繁に立ち退きの催促が来ていたのです。

いつ引越しが始まってもいいように荷物のまとめも準備しておく必要にせまられています。

私は現場組からまた荷物詰の孤独な作業に移りました。

家が出来上がるのと荷物のまとめが終わるのとどちらが先かというところです。



→カウボーイのお引越し その11につづく


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カウボーイのお引越し その9

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→カウボーイのお引越し その8からつづく

牧場で荷物作りに精を出している間に、建築は着々と進んでいたのでした。

放課後は子どもたちが毎日柱の骨組み作りの手伝いです。

3mもある鉄筋に30cm置きに短い鉄筋の横棒を梯子のようにつけていきます。

短い横棒にする鉄筋は、長い鉄筋を高速電動カッターで切断して作ります。

長い鉄筋に短い鉄筋を細い針金で一つ一つしっかりと結び付けていくのは根気の要る作業です。

これが一番時間がかかるけど、後でやり直しの効かない大事な仕事なのです。

土台のコンクリートを流し込む前に、溝に鉄筋の柱の骨組みを横倒しにして入れます。

その骨組みに垂直に柱の骨組みを立てて、固定します。

もう一つ、排水管も土台を固める前に入れておきます。


「もしもし、今何してる?」

現場からの電話です。

近くに公衆電話がなく、業者に連絡するにも牧場に電話するにも不便なので、最近になって携帯電話を買ったのです。

携帯電話が大嫌いな父さんでしたが、少なくとも工事が終わるまでは必要なので仕方がありません。


「決まってるでしょ、荷物作りだよ」

「ちょっと来てくれ、流し台の位置を確認したいんだ」

現場に行くと、マムさんが排水の太いプラスチックパイプを準備していました。

彼はどちらかというと水道管や浄化槽の設置の方が専門です。

「台所がここで、流し台がここに来る予定だから、流しの排水はこの位置でいいです」

土台を作る時にもう床下の排水パイプを入れてしまうのです。

なるほど。

浴室、洗面所、トイレの排水管の位置も同様に決めておきます。

溝を掘って排水パイプを納めます。

骨組みを入れた土台の溝にはコンパネというベニヤ板で内側に壁を作ります。

このベニヤ板の中に生コンを流し込んで固めるのです。

生コンが乾いて固まったらベニヤ板をはがします。

こうして四角いコンクリートの出来上がり。

土台だけじゃなくて床も柱も梁も天井も、コンクリート製の「直方体」という形に分類される物は、基本的にほとんど全てがこの手法で作られます。

その度にたたみ一畳より大きなコンパネを必要な形、大きさにカットしてしっかり釘を打ちつけて型枠の形を作るのです。

青い絵の具で染めたような晴れた空に、男たちが金槌でカンカン、コンコンと打つ音が響きます。

家を作る大工さんの音です。

コンクリート住宅なのに木造家屋を作っているような音がするのはこれだったのです。

生コンを流し込むのはある程度型枠が出来上がってから、まとめてミキサー車に来てもらって一気に入れます。

それまでは毎日カンカン、コンコン、そしてコンパネに正確に印を付けて巻尺で測り電動カッターで切っていきます。

合計で何十枚もコンパネが必要になります。

これも業者にまとめて注文します。

配達されたコンパネはコンテナ倉庫の中に積み上げられます。

コンパネの型枠を補強する角材や、夜間にドリルやカッターなどを保管するのでコンテナ倉庫はもうすでにいっぱいです。


コンテナ倉庫コンテナ倉庫



「季節外の衣類や寝具、普段使わないキャンプやダイビングの道具はコンテナ倉庫に入れておけばいい。そうすれば居室が広く使える」


と言った計画はどうなったんだ?

大体、牧場にある我が家の荷物全部を持って行って新しい家に入るのか?


荷物の段ボール箱は次々と野鳥さんのいた住宅に運び込みます。

もう野鳥さんの2DKの家の2部屋は畳が見えていません。

箱の側面には品目別の名前ではなく、「テレビの部屋」とか「玄関」とか元あった場所の名を書くことにしました。

ぬいぐるみと文房具が同じ箱に入っている状態ですからそう書くしかないのです。

どうせ箱を開けても、洗面所にあったものは洗面所に、台所にあった物物は台所に納められることになるのです。

(アレはどの箱に入っているのかなあ)と思ったら、前の家ではどの部屋にあったかを思い出せばいいのです。


「野鳥さんの家はそのうちに床が抜けるよ。これ以上は入らないんじゃないかな」

「まだ台所があるだろう。台所にも荷物を入れろ。野鳥さんの台所はけっこう広かったぞ」

「たくさんは入れられないと思うよ」

「何で?」

「だってもう床が抜けているもん」

「あ、そうだった」

実は野鳥さんのいた住宅は、牧場ができる前から建っていた物で、先住の人が手作りして使っていた物でした。

相当古くなって、だいぶ前から台所部分の床は根太が腐って抜けていました。

床が抜けたところに薄い板とシートを載せてありましたが、歩く時は気をつけないとズボッと足が落ちてしまいます。

それでも床に注意しながら入るだけ入れていきます。

(新しい家にぜーんぶ荷物を運べたとして、人間が入る場所があるのかな。私たちはどこに寝ることになるんだ?新居の隣にテント張って寝るのか?)


→カウボーイのお引越し その10につづく


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カウボーイのお引越し その8

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→カウボーイのお引越し その7からつづく

荷物を箱に詰めたはいいけども、荷造りした箱の置き場がありません。

このままでは寝るところがないどころか、家に入れません。

「荷物詰めた箱をどこかに置けないかな」

「隣りの野鳥さんがいた所に運んでおけよ、空いてるんだから」

野鳥さんが引っ越した後はもちろん、がらんとした空き家になっています。

10m離れたそこの住宅は独身従業員が数人泊まれるような広さでしたから荷物を運び込むのには適した場所でした。

男の人たちが昼間の炎天下で建築の仕事をしている間、私はせっせと荷物作りです。

「明らかに捨てるべきゴミは持って行かないでしょ?」

「そりゃ、もちろん」

衣類、書類、食器、おもちゃ類・・・と大まかに分類しながら箱に詰めて箱の外に油性ペンで品名を書いていきますが、捨てるかどうか迷うものがほとんどです。

普通の家ならためらわずに捨てているであろう物ですが。

そして夕方になると牧場から自家用車で現場に行きます。

迎えに行かないと家族が帰って来られません。

下校の早い小学生のきりんくるみはもう学校から歩いて現場に来て手伝っていました。

日が落ちて少し涼しくなった頃には、部活を終えた中学生の鉄兵も現場到着。

片づけを手伝ってバイクと車で牧場に帰ります。

「お母さん、今日は何箱作った?」

「やっと四箱かな」

「そんな調子じゃ終わらないぞ。もっと大急ぎで荷物作ってくれないと」

「だって種類別に分類して、しかも捨てる物と捨てない物に分けるのに時間がかかるんだもん」

「分けなくっていいよ」

「え?」

「何でもかんでも詰め込め」

「だけど、食器とか、衣類とか、大まかに分けないと・・・」

「いいんだよ、靴と食器がいっしょの箱に入っていても」

「はぁ?」

「とにかく運んでしまわないと。向こうに運んで、箱を開けてから片付けながら分類すればいいだろ」

「それはそうだけど、ゴミまでは運ばなくてもいいじゃないの」

「捨てるかどうか迷うくらいならそのまま全部運ぶんだ。捨てるのは向こうに行ってからでもいつでも捨てられる」

「まあ、そうですけど・・・」

こうして部屋の中のものはゴミでも何でも区別なく箱詰めすることになりました。これでますます運ぶ物が増えそうです。

引越しというと、箱の数を減らすために、工夫して隙間がないようにぎっしり詰めるのですが、今はそんなのはどうでもいいのです。

次の日からは手当たり次第に箱にどんどん詰めていきます。

箱詰めのスピードは一気に速くなりました。

次々と荷造りの箱ができて、溜まると野鳥さんのいた家に運びます。

家の奥から箱を並べて積み上げていきます。

野鳥さんの家も箱で畳が見えなくなりつつあります。

「おっと、お昼だ」

荷造りに夢中になっていてウッカリしましたが、昼の弁当を届ける時間です。

慌てて簡単なお弁当を作って急いで出発。

お弁当のおかずはリクエストにお答えしてごくごくアッサリした物。

脂っこい物はこの暑さでのどを通らない言われたからです。

現場に着くと、父さん食べるものがなくポツンとしていました。

棟梁とマムさんは歩いても帰れる自宅にお昼を食べに行っています。

「遅かったじゃないか」

「ゴメンゴメン、お腹がすいたでしょう」

「早く食べないと午後の仕事が始まるよ。昼の休憩をする時間がなくなっちゃう」

暑い時期に外で働く人は昼の休憩をしないと夕方まで体がもちません。

石垣島は北緯24度、ほぼ北回帰線上にあります。

ということは、夏至の頃には太陽が南中すると高度89,1度、ほとんど90度、真上です。

5月でも87度、やっぱりほとんど真上です。

同じ頃、東京では、夏至で77,8度、5月で74,2度ですから、ここは亜熱帯なんだと再確認。

お弁当のふたを開けた父さん、

「あれ?実に質素なお弁当・・・」

「だってアッサリしたのって言ったじゃない」

「でも、ご飯とタクアンと明太子しか入ってないよ」

「おかず足りない?」

「いえ、充分です。こういうのが食べたかったんです」

戦前の弁当みたいなお昼を食べて休憩です。

食事の後に昼寝をしようにも日陰がありません。

鉄のコンテナも庇がないですから、建物の陰に、というわけにもいきません。

午前中に一回ある水飲み休憩の時間や昼の休憩時に使える日除けが必要です。

長い鉄パイプを骨組みにして上にブルーシートをかけて日陰の休憩場所を作りました。

直射日光が当たらなければ、海からの風が吹きぬけて、けっこう涼しいのです。

ここは村のはずれの林道を山に向かって200m上がったところです。

現場の周囲は見渡す限りの畑と草地です。

真夏の濃い緑の上を渡ってくる風のなんと気持ちのよいことでしょう。

畑の下の方に村の学校がよく見えます。

教室の廊下で子どもたちが動いているのが小さく見えています。

音楽室から合奏の音楽が聞こえてきます。

学校がすでに村の一番はずれにあったのです。

そこからさらに山の中腹に上ったところですから、斜面の下の方の村が一望できます。

高台なので風当たりが強くて夏も意外と涼しいのです。

ということは、冬は北風がビュービュー吹いて寒いということかも。



カウボーイのお引越し その9につづく


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カウボーイのお引越し その7

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カウボーイのお引越し その6からつづく

現場への水運びと建築材料の買い物のほかにもう1つ、大事な仕事が私にはあったのです。

引越しのための荷物まとめです。

新しい倉庫が完成したら、いえ、完成しなくても壁と屋根ができてドアと窓で塞がれるようになったらすぐ荷物を移動しなければなりません。

住宅の明け渡し期限はとっくに過ぎています。

でも建築ができるまでは引っ越すこともできないので、何とか牧場オーナーに待ってもらっているのです。

もう一人のカウボーイの野鳥さんは早々とアパートを見つけて引っ越して行きました。

野鳥さんは独身男性ということもあって、もともと荷物は少ない方でした。

動物は、イヌを二匹飼っていましたが、ペットOKのアパートだったので問題はありません。

我が家の方は五人家族、おまけにこの二十年間、飼った物、もらった物、拾って来たものが山のようにあります。

拾うことはあっても捨てるということはしないカウボーイ家族です。

強いて言えば生ゴミと鼻をかんだ紙くらいでしょうか。

壊れた電気ポットでも、もう乗らなくなった小さな自転車でも、動かなくなって廃車にしてもいい車でも、そのまま牧場の片隅に置いてあります。

今の時代は捨てるにもお金がかかるからでもありますが、一番は、

「まだ何かに使えるかも知れない」から取っておくのです。

壊れた鍋は家畜の水飲みに、古い水道の鉄パイプは牛舎の柵の修理に、金網の切れ端は鶏小屋の穴塞ぎに、となんでも用途はあるのです。

電気ポットのヒューズが切れてしまった時、捨てておいた別のポットの中からヒューズだけを取り出して付けて復活させました。

使用中の車が壊れるたびに、臓器移植のように廃車から部品を取りだして修理に使って重宝しました。

「この際だからどんどん要らない物を捨てようよ」

「要らない物なんてここにはない!」

「だけどさあ、こんなの要る?食べないでしょ」

数年前に賞味期限が切れた調味料、いつのものか判らない乾物。

「悪くなってないだろ。水に浸けて戻せば食べられる。捨てない!」

そんなに全部持って行ったら家にに入り切らないんじゃないの?」

「イヤ、入る。入れるの!」

でもねえ、倉庫とは言ってもせっかく新築の家に引っ越すのに、またガラクタに埋もれて暮らすのか?

ええい、捨てちゃえ。

何年前のものか分からないカラメルソースのビンがいくつも出てきたので昼のうちに他の空き瓶のゴミといっしょに出して置きました。

すると珍しくその日は仕事が早く終わって帰った父さん、

「おい、これが間違えてゴミといっしょになってたから回収しておいたぞ。捨てるなよな」

(拾うなーーっ!!)

「普段使わない荷物は住居の方じゃなくてコンテナ倉庫に入れて置く」

家そのものが倉庫ですから、収納の押入れなどは初めから設計図にありません。

なので、分厚い鉄でできたコンテナ倉庫を買いました。

家ができるまでは建設の資材や道具をしまうのにも鍵のかかる倉庫が必要です。

倉庫を作るための倉庫です。

よく港で見かける直方体の鉄の塊のような巨大コンテナです。

中古ですが頑丈なのを二棟買って現場においてあります。

注文して運んできたセメント袋など、雨がかからないようにこの中にしまっておきます。

重い鉄の扉を開くと中は8坪くらいの広さ。

これが二棟あるから相当の物が入りそうですが、牧場の我が家の荷物はそれ以上です。

普通は引越しの歳に涙を飲んでいろんなものをジャンじゃん捨てて行くんじゃないのか?


毎年転勤の時期の三月には街のゴミ捨て場には転勤族の出した物でまだ使える上等な物がたくさんあります。

転勤というと海を渡って外の島に移動するのですから、飛行機や船で運ぶことを考えると捨てて行ったほうが安くつくということでしょう。

うちは引越し先はわずか四kmですからトラックで往復する回数が増えるだけです。

どうせ一回の往復では運べません。

それどころか何十回運搬しなければならないのか気が遠くなります。

建築が始まってすぐに荷物整理に入りましたがそれだけで何ヶ月もかかりそうです。

建築完成のほうが早くなるかも知れません。

「先ずは使わない本やよそ行きの服から段ボールに詰めて・・・」

荷物の入った段ボールが廊下や部屋の隅に積み上がって行きます。

「これじゃ、荷物で生き埋めになっちゃうよ、もう置く所がない」



カウボーイのお引越し その8につづく


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