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イノシシ天国 その3

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イノシシ天国 その2からつづく

彼女はいいのかな、イノシシの鼻のハンコのついた婚姻届出されても。

一生に一度・・・とは限らないけれど、とにかく一生の記念の婚姻届なのに。

彼女はどこに行ったんでしょう。

捜すと、遠くの牛舎で牛を見ています。

牛が珍しいんでしょうか?

ふつうの人には珍しいんでしょう。

呼びに行こうかと考えているうちに、もう男2人でトンちゃんを抱きかかえて鼻にスタンプ台のインクを付けようとしています。

「これでハンコ押せますかねえ」

「牛の鼻紋を取るのと同じさ」

牛には「鼻紋」というのがあります。

人間でいう指紋のようなもので、鼻の頭にある細かいシワの模様が一頭ずつちがっているのです。

これで牛の個人・・というか、固体を識別するのです。

農家が和牛を売る時には登録証明書というのが必要です。

戸籍謄本みたいなものです。

牛の父親の牛、母親の牛の名前や生年月日、祖父母の牛の名まで記載されています。

それほど血統が重要視されているのです。

その登録証明書に鼻紋のコピーも貼り付けられています。

今まで何百頭の牛の鼻紋を取ってきたことでしょう。

牛の鼻紋なら慣れたものですが、イノシシの鼻紋とは・・・。

「ダメだなあ、トン吉の鼻の頭が濡れてるからインクがうまく付かないよ。」

牛は鼻の穴が下向きについているから、鼻紋を取る鼻の頭はタオルでちょっと拭けばインクがよく付きます。

でもイノシシはブタの仲間ですから鼻の穴が前というか上を向いています。

拭いても拭いても鼻水なのか何なのか、いつも濡れていてインクが付きません。

「あれ、ダメだあ。うまく鼻の捺印ができないよ」

あああ、婚姻届をすでに汚くしてしまいました。

これであきらめるかと思ったら・・・、

「ようし、こうなったらチョキでやるか」

チョキ?イノシシの足先?

イノシシはブタと同じ偶蹄類ですから脚の先のヒヅメは二本のチョキの形のいわゆる豚足です。

「わ。汚いなあ、泥だらけだよ、トン吉の足」

当たり前です、裸足で泥の上を歩いているんですから。

「雑巾で拭いて・・・」

濡れ雑巾を持ち出して二人がかりでトン吉の足の裏をゴシゴシ拭いています。

そんなにしてまでもブタの捺印にこだわらなくてもよさそうなものですけど。

トンちゃんは何をされてるのかわからないでしょうが、飼い主にされるがままにおとなしくしています。

「おお、今度はインクがバッチシ付くぞ」

「ここと、ここに・・・」

ペタッ、ペタッ。

「アハハハ、トンちゃんの足跡だ」

何をやっているんでしょう、この人たち。

まあ、数年前、丑年の年賀状のデザインに、牛の鼻紋を年賀ハガキにペタペタと何十枚も押して出したことのあるカウボーイさん、これくらいのことはやってもおかしくはないのです。

二人の保証人の住所氏名と印のほかにトンちゃんの印鑑・・じゃなくて鼻の穴の捺印の失敗したシミのような汚れと、チョキの足跡が二つ三つ。

「おーい、保証人の印鑑押してもらったよ」

「あ、ありがとうございまーす」

婚約者に婚姻届を見せたかどうかは知りませんが、そのまま出したようです。

後日、N村さんに会って聞いてみました。

「あの婚姻届、市役所に出して受理されたの?」

「ああ、それはだいじょうぶでしたけど・・・」

「な、何?」

「窓口の人に『ずいぶん汚いねえ』って言われました」

と笑っていました。

まあ、いい記念になったのかも知れません。

その後N村さん夫婦にはお子さんも何人も産まれて仲良く暮らしているようですから、イノシシの婚姻届はお守りになりはしても結婚の支障にはならなかったことと信じているのです。


→イノシシ天国 その4につづく

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イノシシ天国 その2

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→イノシシ天国 その1からつづく


それ以来、夫は休日の度に日帰りか一泊で西表にイノシシのワナの見回りに行くことが何度か続きました。

あるとき、港に迎えに行くと、いつになくニッコニコしています。

甲板に置いた荷物は行く時に持っていたリュックの他に麻袋が一つ増えていました。

「見てごらん」

船から下りる前に手招きをするので近寄ると、何かが入っている麻袋の口をそっと開けて見せたのです。

「ん?」

「へへへ」

「イ、・・・イノシシ?生きてる!」

ワナにかかった若いオスのイノシシをゲントクおじいさんに譲ってもらって持って来たのでした。

「に、逃げないの?」

「四本の脚をしばってあるから大丈夫」

そう言うと他の乗客の目を気にしてまた麻袋の口を閉じました。

帰りの車に荷物を積んでの帰り道で聞きました。

「どうするの?」

「飼うんだよ」

まだ私たちに子どもができる前でしたから、動物を飼ってわが子のようにかわいがりたいという気持ちはわからないでもないのですが。

「でもイノシシねえ。・・・」

「馴れればかわいいもんだぞ」

牧場に着いて麻袋から出してやってもまだイノシシは四本脚をきつく縛られていて動けません。

鋭い牙が危険なので口まで縛られています。

人間が怖いと見えて、背中をちょっと触ってもキーキー鳴いて身をよじって逃げようとします。

「しばらくはイヌみたいにロープでつないで飼うってもんだな」

家の前の空いた草むらに杭を立てて、それにイノシシのロープをつなぎました。

始めは杭の周りをロープを引っ張ったままグルグル走り回って落ち着かなかったのが、毎日エサをやっていると本当に馴れてくるものです。

自分に害を与えないとわかると人間も恐怖の対象ではなくなるようです。

「な、かわいいだろ」

「うん、イヌみたいなもんだわね」

「イヌより賢いかも知れんぞ、なあ、トンキチくん」

「ブヒブヒ」

「トンチキ?」

「ちがうよ、トンキチ、トン吉だよ」

なんか陳腐な名前の付け方・・・。

「トン吉か・・・。トンちゃん、・・・トンちゃん」

「ブウブウ」

トンちゃんはイヌのように飼い主によく馴れて、ロープを引いてお散歩に連れて行くこともできました。

もっと馴れてくると、ロープなしでも逃げないどころかどこまでも飼い主についてきます。

だいたい、イノシシやブタは意外に賢いのです。

少なくとも牛よりは賢く、きれいずきです。

牛は小屋の中どこでも糞を歩きながらぼとぼと落として、時にはそれがエサ箱に入ったりもします。

ブタはエサの近くや寝る場所では糞をしません。

小屋の中でも隅の方の決まった所に行ってします。

つまり自分でトイレの場所を決めてするのです。

自分の経験から、家畜の中で頭のいい順番で言うと、


ウマイノシシ(ブタ)ウシヤギヒツジの順ではないかという気がします。


さてトンちゃんと遊んでいると訪ねて来た人がありました。

知り合いのケーキ職人のN村さんです。

今度結婚することになったので婚約者の女性と挨拶に来たのです。


「これですか、イノシシ飼ってるって」

N村さんがチラと見ると、トンちゃんは知らない人に警戒するように飼い主の後ろに隠れました。

「彼女と籍を入れるんですが、実はその婚姻届の保証人にお二人になっていただきたいんです」

「かまわないけど、僕たちでいいの?」

「ええ、ぜひお二人に」

共通の友人ということだからでしょう。

「ハンコと朱肉持って来るわ」

婚姻届には保証人の欄があります。

成人2名の署名と捺印が必要なのです。

サインして婚姻届が完成。

と、

「トンちゃんの鼻でハンコするか?」

え?イノシシの鼻で捺印?大事な婚姻届に?

冗談じゃないですよ、止めて下さいよ、と言うかと思いきや、N村さん、

「おもしろいですね、やりましょう」

笑っています。

そんなあ。漫画じゃあるまいし、ブタの鼻の穴のスタンプ押した婚姻届、役所で受理されるんでしょうか。



イノシシ天国 その3につづく

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イノシシ天国 その1

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秘密の山小屋 その7からつづく


石垣島や西表島の山中には野生のイノシシがたくさんいます。

時々は山際の畑に出てきます。

そしてサトウキビをかじったり、イモ畑を掘り返して荒らしたりするので害獣ということになっています。

猟友会の人が猟犬を連れて鉄砲で獲ることもあります。

もう一つはイノシシの通り道にワナを仕掛けて獲る方法があります。

このワナを使って猟をするのにも「狩猟免許」が要ります。

うちの父さんは、海の魚介類だけでなく山でも獲物を獲るのに興味を持っていて、イノシシ狩りがしたくてたまりません。


「西表でおもしろい遊びができるよ、一度来て見ない?」

そう教えてくれたのは、牧場に一時期居候していたことがある元「キャンパー」の若い男性。

キャンパーネームは「隊長」。

なぜそう呼ばれるのかは不明ですが、キャンプ場にいた他のキャンパーたちからはそう呼ばれていました。

キャンプ場では本名ではなくキャンパーネームで呼び合うのが一般的なようです。

そしてキャンプ場で知り合って親しくなると、故郷に帰ってから都会で会うことになっても互いにキャンパーネームで呼び合うことが多いようです。

この「隊長」さん、私たちはキャンパーではないので彼のことは本名で呼んでいました。

苗字に「ちゃん」をつけて、「○○チャン」と。呼んでいましたが、ここではキャンパーネームで書いておくことにします。

「隊長」は牧場を出た後、西表島に渡ってアルバイトをしていました。

そしてこの「隊長」の紹介で、老齢ながらイノシシのワナ猟の名人という方と知り合いになりました。

この老人が後に遭難キャンプの時に捜索してくれたゲントクおじいさんなのです。


「オレ、西表に行って来るわ」

「はいはい、行ってらっしゃい」

「イノシシのワナの仕掛けを見せてもらうんだ」

「今度は山の猟師ですか」

「もしイノシシ生け捕りできたら、うちで飼ってもいいか?」

「はあ?」

一晩泊まりでイノシシのハンティングツアーに行きました。

まだ我が家に子どもが生まれる前の話です。


この日はゲントクおじいさんと「隊長」とうちの夫(まだ父さんではなかった)の3人で山に入りました。

何日も前にゲントクさんが掛けておいたワナの見回りに行ったのです。

ゲントクさんの家の裏山にいくつものワナを仕掛けておいて、後でそれにイノシシが掛かっているかどうか見に行くのです。

山の中と言っても人間の通る登山道をイノシシが歩くはずはなく、森の中のけものみちのようなイノシシの通り道を見つけてワナをかけてあるのです。

木を掻き分けてわなを探して歩くのだけでも時間が掛かります。

一日で今までかけた全部のワナを見回ることはできません。

次の日は山の反対側方面・・・という風に数日かかって一回りするのです。

このとき、一つのワナにイノシシが掛かっていたそうです。

イノシシの脚を紐で縛ってかついで下山。

ゲントクおじいさんの家まで運び、解体して肉の多くは冷凍庫に保存。

ご存知、イノシシ肉は高く売れます。

ゲントクさんは若いころイノシシ猟で生計を立てていたこともあったそうです。

また、肉の一部はその夜の料理に、そしてイノシシを担ぐ役目を手伝った人にもお土産として分けてくれました。


「お帰り」

「おもしろかったよー!」

西表からの定期船から降りて、開口一番の感想でした。

「ふうん、楽しかったの、よかったね」

「今度、いっしょに連れて行ってやるよ」

「ええ?イノシシ狩りに?」

「連れて行ってほしいだろ?見たいだろ?」

「はあ」

どっちでもいいけど。

それからはイノシシのワナのことばかり一日中考えているようです。

以後、何度もゲントクおじいさんの元に通い、イノシシのワナかけの弟子入りを志願して覚えて来たようです。

竹を削り、木の枝とワイヤーを結び付けて自分でワナが作れるまでになりました。

楽しそうにワナの仕組みを私に解説してくれます。

私は本当はそんなこと興味がないんですけど。


「この木の切れ込みに引っ掛けて、思い切り引っ張ってしならせた木の枝の先を地面に着くまで下げておくんだ」

「ふーん」

「引っ張ってきた木の枝の先にはもう一つ、ワイヤーで作った輪がある」

「ふーん」

「切れ込みを入れた木片はそれにつけた小さな踏み板をイノシシが踏んだ時にすぐはずれるようにしておく」

「ふーん」

「ちゃんと聞いてる?

「あ、聞いてる、聞いてるよ」

「ワイヤーや踏み板は、上に落ち葉などをかぶせてカムフラージュ」

「なるほど」

「その周りには石や枯れ枝などをわざと置いておく」

「どうして?」

「イノシシは木の枝みたいに不安定な物の上を踏んで歩いたりはしない」

「そうか」

「そうして必ず踏み板の上を踏むように誘うんだ」

「へえ、あったまいい!」

「で、留め具がはずれた瞬間、地面まで下がってしなっていた枝は勢いよく跳ね上がる。イノシシはワイヤーに足首がかかった状態で枝先に吊り下げられて生け捕りになる」

「ほほう」

「うまくできてるだろう」

「でもさ、足首のワイヤーはずれたら逃げるんじゃない?」

「いや、だいじょうぶ、ちょっと、手を貸してごらん」

「はい」

「こうやって手首に輪がかかるとするだろう?」

「ん?」

「思い切り上に跳ね上がったワイヤーは・・・」

ピュンッ!

「・・・ググッと強く締まる」

「イタタタタ!」

「アハハハ、女房が釣れた」

「何するのよ、痛いじゃないのよ」

「かかったら絶対はずれないだろ」

「もういいよ」

「いっしょに行くだろ?イノシシ狩り」

「行かないっ!」

野生児出身のカウボーイはますますイノシシに夢中になっていくのでした。


イノシシ天国 その2につづく

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秘密の山小屋   その7

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秘密の山小屋 その6からつづく


久々に遊びに来た山小屋ですが、使用禁止の立て札が立てられてしまったのでした。


「なに?これ」

「ここで遊んじゃいけませんてさ」

「えええっ」

「ここでキャンプしてたってわかっちゃったかな」

「そりゃ見ればわかるだろ」

山小屋の中や周辺にはほとんど物を置いてありませんでしたが、前回、次に来るときのために、と残りの薪やカマドに使った大きな石などはそのままにしてありました。

ここでキャンプしていたことは一目瞭然です。

「でもまあ、今日はせっかく山に来たんだから少し遊ぶか」

「うん」

子どもたちはいつものようにターザンやブランコで遊びましたが、やはりテンションが上がりません。

私たちはそれを見ながら考えていました。


「どうしてここで遊んだりキャンプしたりしてたのがバレちゃったのかな?」

「ふーむ」

「この前のイノシシ狩りの人たち?」

「それはないだろう、あういう人たちはそんなことチクッたりしないさ」

いっしょにキャンプした友達も通報したりするはずがありません。

「この秘密の場所を知ってると言えば・・・」

「学校関係者!」

お別れレクで全職員と全校生徒が春休み前にここへ来て半日過ごしたのはたしか。

でも自分も遊んだ当事者なのに市役所に通報するでしょうか。

「先生たちの送別会やっただろう?」

「うん」

「あのあと何人かは街に繰り出してスナックで飲んだんだって」

「あ・・・・」

「飲みながら当然山の広場の話題にもなっただろ」

「ははーん、どこで誰が聞いてたかわからないもんね」

とにかくここへはもう来ない方がいいかも知れません。


あーあ、せっかく楽しい秘密の山小屋だったのになあ」

「台風に遭うまではまだまだ使える山小屋なのに、捨て置くのは惜しいわねえ」

「でも無断に山林を使用した、とか新聞に書かれてもまずいしね」

ここの地元の新聞には小さなこともすぐ記事になってしまいます。

しかも実名で載ってしまいます。

狭い島ですから、そうなると町に買い物にも行かれなくなってしまいます。



「もういいや、帰ろう」

「なんかあんまりおもしろくないや」

そりゃあ、そうでしょう。

市役所の人が休日にこんなことで見回りに来ることもないでしょうが、あんな立て札を立てられてはいい気分はしないです。

もちろん違反をしているのはこちら側ですから市役所は悪くはないのです。

『市の管理する山林で山小屋作っている人がいますよ』

などと市民からのタレコミがあったら、担当の人は何もしないでいるわけにはいかないのでしょう。

立て札を立てることくらいしか方法はないでしょうが、一応対処はしたわけです。

せっかく何週間もかけて山に通って作った段ボールの秘密のホームレス小屋・・・じゃなくて山小屋だったのに。

市役所の人はホームレスの人がここに住み着いていると思ったのかも知れません。

山小屋は解体して材料を持ち帰るということはせず、そのままにしてサッサと去ることにしました。



あれ以来、秘密の山小屋を訪れていませんが、もう今は段ボールのお家は残っていないでしょう。

雨に打たれて、何度か台風の風に吹かれて、バラバラになっているでしょう。

土に返る材料で作ったのがせめてもの幸いと思うことにしています。


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ペルセウス座流星群きれいでした

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昨夜のペルセウス座流星群、見えましたか?

極大時は13日の午前、ということでしたが、それは地球での極大値。

昼間に流星が見えるはずがありませんから、日本では夜明け前の午前四時ころが、流れ星が一番良く見えるはず。


と思って、夜更けから準備しました。

長女(中3)は夏休みの自由研究はこれにすることにして、観測の準備万端で屋上に行きました。

11時半から寝ころがって夜空を見上げて流れ星の数を30分ごとに計測。

午前2時までは観察する予定でした。


前日にも予行演習で少しだけ見ましたが実にきれいでしたよ。

空気のきれいな石垣島。

特に我が家は周りに家がない田舎で、夜はこの辺りは真っ暗。

そして畑の中の一軒家なので周囲に視界を遮る建物はもちろんありません。

山も木もありません。

天体観測には最高の条件です。

聞くところによると、石垣島の天文台ができる前に、我が家の裏山の上も候補地に上がっていた、という話です。


で、夏休みになって夜更かし朝寝坊をよくしていた娘たち。

パソコンをやったりして午前1時や2時まで起きていたこともしばしばでした。

流星を見て2時ころまでは起きていると思っていたのですが。


運が悪く、この日は学校の日直当番(掃除や花壇の水遣りの当番)に当たっていたので、朝8時にたたき起こされて寝不足。

そして日中は家の手伝いで働いてヘトヘト。

今、家の屋上の工事を父さんがしていて、子どもたちも一人前に毎日仕事の手伝いをしているのです。

畑(果樹園)のグァバやバナナの収穫も子どもたちの仕事です。

せっかくの好条件の流星群観察だったのに、午前0時を過ぎたら眠くて眠くて・・・。


午前1時ころ父さんも屋上に上がって来て一緒に寝転んで見始めました。

普段は星など興味がない人なのに。

「あ、今、流れ星見えたな」

「う、うーん」

「見たか?今の」

「フガフガ、見逃した」

「あ、また流れた!見た?」

「う、うん」

「見たのかよ」

「・・・・・・」

「何だ、寝てるのか」

「おきてる、おきてる、・・・おきて・・ますよ」

「見てないじゃないか」


私も疲れて眠くて眠くて流星を数えようとするのですが、2つ、3つくらいまで数えるとその後は記憶がなくなっています。

目覚ましをかけて午前3時にも4時にも起きて見ましたが、やっぱり流れ星を5個以上数えないうちに夢の中・・・。


自由研究どうなっちゃうの?

今夜も数は少ないですがまだ流星群は見られます。

もう一度挑戦する、と言っているのですが、今日も寝不足には変わりがありませんからねえ。

でも屋上で星を見ながら寝るのって最高です。

涼しいし、星に包まれていい気分ですし。

星の降る家の屋上で近くの森から聞こえるカエルや虫の声もいいものです。

ただし、朝は東から昇る太陽が真横から照って眩しいので早く目が覚めてしまいますけど。



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秘密の山小屋   その6

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秘密の山小屋 その5からつづく


北風と雨の毎日だった冬も終わりになりました。

石垣の3月というと、晴れた日は暑く感じるくらいです。

この季節は卒業式があるわけですが、ここの小中学校では毎年、卒業式前に全校生徒、全教職員、全PTAによるお別れレクというのがあります。

その年によって、体育館に集まって全員でスポーツをしたり、歩き遠足を企画したりするのです。

ちょうどこの年、我が家がそれを企画する係りになっていました。


「去年は半島一周の歩き遠足だったなあ」

「その前は運動場でグランドゴルフ大会」

「今年はもちろん、『山』で遊ぶ計画にしよう」

「あの広場で?」

「そう、ブランコやターザンロープももっと増やしてみんなで遊ぶんだ」


さっそく準備です。

「山で遊ぼう」の手書きのチラシ作り。

「集合場所は学校。朝集まって広場を案内して、お昼にお弁当を食べたら午後は自由」

「自由?」

「そう、つまり帰りたい人、用事のある人は帰るだろうが、もっと遊んでいたい人は残って夕方まで遊んでもよい」

「残って遊びたいかな」

「子どもは遊びたいだろう、何時間でも。なんなら泊まってもいいんだ」

「はいはい、山小屋にね」

ふつうの子は泊まりたいって言うかな?



さて当日です。

学校のPTA行事ということで、ほとんどの児童生徒、先生方が集まりました。

保護者も全員ではありませんが、子どもの付き添いで大勢参加しました。


「へえ、こんな場所があったのね」

子どもたちは大喜びです。

「オレ、ターザンやろうっと」

「こっちの方がスリルあっておもしろいぞ」

「このブランコ、すごく高いよ」

子どもの人数の割に遊具をたくさん作ったので、公園のブランコやアスレチック遊具のように順番待ちの必要がありません。

遊具を作ったと言うと大げさですが、簡単に準備したものです。

高い木の枝にロープをぶら下げて、ロープの端に短い木を付ければブランコのお尻を載せるところになります。

もっと高い位置に結び目を作って両手でつかんでぶら下がればターザンです。


定年間近の校長先生も参加されて、一緒に遊びはしませんが子どもたちのはしゃぐ様子を黙って眺めていらっしゃいました。

お弁当の後は何人かは残って遊びましたがほとんどの人は帰りました。

夜まで遊んで泊まりたいという子どもはうちの子の他にはいませんでした。



「なあんだ、みんな帰っちゃった。つまんないの」

「まあ、ふつうはこんな山の中で泊まろうって思う人は少ないんじゃない?」

でもまあ、子どもたちは秘密の遊び場で十分楽しんだのでよかったでしょう。

「この小屋もあと何ヶ月使えるかなあ」

「台風が来たら一発で吹き飛んじゃうわね」

「夏までは持つかな」

「いくら廃油で水をはじくとは言っても大雨が続いたら持たないわよね」

「まあ、使えるだけ使おう。どうせ材料費はかかってないんだから」

毎週とは行かないまでもこれからも度々山小屋は利用するつもりでいました。



数日後、卒業式も終わり、3学期の終業式に続いて転勤される先生方の送別会もあって、春休みになりました。

何日ぶりかで家族で山小屋に行きました。



「久しぶりねえ、山小屋」

「この何日か忙しかったからなあ」

「しばらく来ない間に誰かに見つかって使われていたりして・・・」

「住み着いちゃったりして?」

「ほんとにホームレスの小屋になっちゃうよ、ハハハハハ」

そんなことを話しながら秘密の山小屋に近づくと、小屋の前に何かがあるのが見えます。

「あれ?何かある」

「立て札だ」

それは小さな板にはっきりと油性のインクで書かれた看板でした。


『ここは石垣市が管理する山林です。
 無断で木を切ったり、個人がキャンプをしたりすることは
 禁じられています。
               石垣市林務課』

「あ、」

「あああ・・・・・・」


困ったことになりました。

秘密の山小屋が秘密でなくなってしまいました。





→秘密の山小屋   その7 につづく

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秘密の山小屋 その5

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秘密の山小屋 その4からつづく


子どもたちといっしょに作業できるのは週に2日の休日だけです。毎週末は山に通って山小屋作りは続きました。完成まで数週間かかりました。


山小屋の脇で焚き火がパチパチと燃えています。

家族の他に誘った牧場の「野鳥さん」も山に来て火を見ながら酒を飲んでいます。

野鳥さんは野宿が趣味ですからこういう山の中の自然が好きなのです。


「いいですねえ、山小屋」

「そうだろう、雨が降っても泊まれるんだ」

「見た目は汚いけど」

外側は廃油のタールのような真っ黒い色です。

「なにしろ材料費がタダだからな」

夜になると暗い森の中、段ボール製のホームレ・・・じゃなくて山小屋。

そばで燃える焚き火のオレンジ色の炎だけがぼーっと明るく見えています。

外壁に塗った黒い廃油の色など気になりません。

「いいなあ、、森の中で火を焚いて。赤い火をじっと見つめているなんて」

家からすぐ近くですが遠くの島にキャンプに来たような感じがします。

「今度は知り合いも誘ってここでいっしょに酒飲みたいな」

西表島に渡って何泊もするキャンプとなると仕事を長く休めない人は参加できないし、装備も考えないといけません。

でも牧場から車で5分とかからないこの場所なら、気軽に参加できます。

車から荷物を運ぶときもリュックにきれいにパッキングする必要もありません。

「そうだね、サザエさんも誘えば子どもたちも喜ぶよ」

サザエさんというのは以前いっしょにキャンプに行った仲間の一人。

明るくよく笑う女性なので誰かがつけたあだ名です。

喜んで賛成するかと子どもたちの顔を見ると、昼間さんざん森の中でターザンやブランコをして遊んだから疲れたのでしょう。

火のそばで寝袋にくるまって眠っています。

これなら山小屋がなくても困らないようにも思えます。

でも冬の石垣島はそう晴天は続きません。

暖かいとは言っても日本海式気候なのです。

冬はほとんど毎日雨混じりの北風が吹きつけます。

天気が変わったらサッと山小屋の中に逃げ込みます。

翌週の休日、「サザエさん」やその友人、その他どういうきっかけて知り合いになったか忘れちゃいましたけど友人たち5~6人集まりました。

手作り山小屋の新築祝です。

私は初めて会ったような気のする人もありましたが、もうそんなことは関係ありません。

家族の友達は友達、そして友達の友達も友達というわけで、お互いに仲良くできればそれでいいのです。

「アレ?マキちゃん、何を担いで来たの?」

大きなもの、あまり重そうではないけど・・・。

「あ、布団だ」

「私、寝袋を持ってないんですよ」

「え?」

「だって、なんでもいいから寝る物をもってこいって言ったじゃないですか」

「ええ、まあ」

タオルケットか毛布ならわかるけど。マットレスを担いで来るとは。

「これでもいいですか?」

「あ、はい、いいですよ、なんでも」

こういうのも道路から近い森の中だからできることです。

西表のジャングルにキャンプに行くのだったら不可能でしたが。

マキちゃんは東京から島に移り住んで数年の若い女性。

今は隣村で陶芸をしている人の下で働いています。

仕事の都合で遅れてきた人も続々と山小屋に到着。

「この場所わかった?」

「道路にはみんなの車が並んで停めてあったし、少し森に入ったら焚き火の明かりが見えたし、声がしたからすぐわかりましたよ」

森に入ったら遠くはないけど、道路からだと全く見えない秘密の山小屋です。

たまたま道路を車で走って通りかかった人は、何もない山の脇に車が何台も停まっていて不思議に思ったかも知れません。

いえいえ、こんな山道を夜に通る人はまずいません。

火の周りで食べて飲んで、夜が更けていつの間にか眠って。こういうときは本物のカウボーイみたいですね。

翌朝用事や仕事がある人は早起きして出発して行きました。

時間のある人や子どもたちは名残惜しそうに、まだもう一遊びしてから片付けて帰ります。

「今度は学校の友達も連れて来たいな」

「どうせなら大勢で来たいな」

「それもいいかも。たいていの子はこういうの喜ぶと思うよ」


ということで全校生徒を連れて来ることになったのです。

子どもはいいんだけど、ここは市の林務課の管理する市有林です。


何かイヤな予感が・・・。

→秘密の山小屋   その6につづく

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