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秘密の山小屋 その4

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秘密の山小屋 その3からつづく

それから何回も山に行って作業する日がありましたが、以後はイノシシ狩りの一行に出会うことはありませんでした。

秘密の山小屋作りは着々と進行していきました。

テント型の木の骨組みが出来上がると、それに段ボールを貼り付けていきます。

テントでいうとサイドの部分の横木に下から順に段ボール箱をつぶした物を紐で結び付けていくのです。

一番下の段を結んだら次に下から二段目を一部重なるようにつけます。

つまり一段目の上部の上に二段目の下部が少しかさなっているのです。

次に三段目もさらに二段目に重なるように、と一段ずつ上がっていくように作ります。

出来上がりが「よろい戸」のようになるようにです。

こうすることで雨が降っても段ボールの壁の内側に雨水が浸入しないのです。

「片側が完成したら次は反対側の壁も同じように作るんだ」

反対側の壁の上部はもう片方とぴったり合わせようとしてもわずかに隙間が開いてしまいます。これでは雨漏りしてしまいます。

「両方の壁は対称にしちゃダメなんだ。『入』の字のように一方をかぶせて屋根のようにする」

このとき季節は冬。毎日北風でした。

北側の壁の方が上側になるように重ねます。

「なあるほど。でも大雨が降ったらぐしゃぐしゃになるね」

「そこはちゃんと考えてあるさ」

段ボール自体が濡れて破れては困ります。

そこで紙でできた段ボールの表面に水をはじく物を塗るわけです。

「油でも塗る?」

ふつうは油性ペンキなどを使うところでしょう。

でもそんなお金のかかることを野生児カウボーイ父さんがするはずがありません。

「廃油だよ、廃油」

「ハイユ?」

そうです、トラクターやトラック、その他農業機械の多い牧場ではエンジンオイルの古くなった汚い油が貯まってきます。

缶に集めておくのですが、黒くドローンとした廃油はそこらへんに簡単に捨てるわけには行かない産業廃棄物みたいなものです。

可燃物を燃やす時に上からかけて燃えやすくするくらいしか消費することがありません。

使い古しの天ぷら油で石鹸を作る話は聞きますが、真っ黒の臭い廃油で石鹸ができるとは思えません。

第一、原料は食用油でなくて石油ですし。

このベットリした黒い廃油をよろいの段ボールの壁の上に塗るのです。

これで少々の雨にもびくともしない耐水性の山小屋になります。

見た目は黒い油で塗られて美しくは見えませんが雨と風を避けて中の居住部は快適です。

山小屋の中で火を焚いたとしても煙は天井の板の組み合わせ部分からうまく外に出て行ってくれます。

昔のかやぶき屋根の造りの原理です。

煙は出て行くが雨は入らない。

通気性のよい屋根です。

「いいだろう、手作りの山小屋」

「段ボールでできた家だね」

「三匹の子ブタでも木とかワラで作ってたよね」

「ワラじゃすぐ吹き飛んじゃうよ。これはイメージとしては、合掌造りの家、北米インディアンのテント、モンゴルのパオ、竪穴式住居、・・・」

「というよりホームレスの人の段ボールの寝ぐら・・・」

「やかましい!山小屋と言え、や・ま・ご・や」

「ホームレス」

「ホームレスは家が無いからホームレスなの」

「これは?」

「家ではないけど泊まる所」

「だからネグラ」

「文句言うと泊まらせてやらないぞ」

「別にいいよ。私は夜にはうちに帰るけど」

「そんなこと言わないでいっしょにここで焚き火して泊まろうよ」


楽しいかな?ホームレス・・・じゃなくて秘密の山小屋。




→秘密の山小屋   その5につづく



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秘密の山小屋   その3

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秘密の山小屋 その2からつづく


山から帰って来ると、父さんはニヤニヤしながら設計図を描いています。

なんか楽しそうに見えます。

「何してるの?」

「フフフ、楽しいこと」

「山のキャンプの計画?」

「まあね、子どもたち喜ぶぞー」

たぶん一番喜ぶのは自分だと思うけど。

「テント張るんじゃなくて、いつでも使えるものを設置するんだ」


それから毎日、例の山の広場へ行って秘密の山小屋作りが始まりました。

「お前たち、学校が終わったら山に手伝いに来いよ」

「帰ったら宿題するんだけど」

「そんなのは夜でいい」

「はあ?」

「山は暗くなったら仕事できないだろう。勉強は夜でもできる」


山小屋と言っても大げさなログハウスを建てるわけではありません。

市の林務課が管理する森林の中にそんな物を建てられるわけはありません。




5m間隔に立っている、適当な太さの立ち木2本を選んでそれを柱に見立てます。

あまり高くなく低い位置に二股に枝分かれした部分がある気がよいのです。

木を切るわけにはいかないので二股部分に横木になる長い棒を渡します。

ちょうど昔の洗濯物干し竿の形です。

この横木から地面に向かって斜めにまた棒を立てかけます。

三角テントの骨組みになります。

これに布をかぶせればそのまま簡易テントです。

でも父さんはもっと手のかかることを考えていました。

横木から地面に斜めに立てた2本の木の間に。さらに何本も横に細い木や竹の棒を渡して紐で結びます。

立派な骨組みです。

布をかぶせるくらいならこんな丈夫な骨組みは必要ありません。

この骨組み作りだけで何日もかかります。

同時進行で段ボール箱をお店からもらって集めておきます。

休日になると家族で山の広場に遊びに、と言うか、

朝から作業をしに行きました。


「昼になったな。ここらでお弁当にしようや」

広場で腰を下ろしておにぎりを食べていました。

すると林の方からガサゴソと音がして男の人が現れました。

身なりからすると、この山でイノシシの狩りをしている鉄砲撃ちの人です。

「こんにちはー」

「はい、こんにちは」

鉄砲撃ちの人は広場を横切って反対側の林の中に入って行きました。

イノシシ狩りの人たちはふつう何人かで行動します。

イノシシを追うイヌを連れて山からイノシシを追う人たち、山の反対側でそれを待ち受けて迎え撃つ人たちの、ふた手に分かれて獲るのです。

イノシシはどの方向に逃げてくるかわかりません。

時には2~3ヶ所で待ち伏せをします。

私たちの昼食場所に出会わせた人は待ち伏せ隊の方のようです。

しばらくすると山の上の方でイヌ数匹の声がします。

「ワンワンワン」

イノシシを見つけたようです。

イヌの声がこちらに近づいてきます。

「ワンワンワン」

「こっちに来るのかな」

「ワンワンワン」

「わっ、出て来た」

イヌより先に追われたイノシシが飛び出しました。

走ってきます。

  ドドドドドッ・・・・

すごい勢いでおにぎりを食べていた私たちの目の前を必死で逃げていくイノシシ。

そのすぐ後ろを追って吠えながら走っていく猟犬たち。

その後ろからだいぶ遅れてきた鉄砲撃ちの人。

この人は猟犬担当の人でしょう。

何分もしないうちにふもとの方から銃声が聞こえます。

「あ、獲られたかな」

なんか、いろいろな動物、人間たちが目の前を通過して行きました。

のんびりピクニック気分で食事している雰囲気ではなくなってしまいました。

林務課の管理する山林はわれわれの他にも利用する人たちがいたのでした。


→秘密の山小屋 その4
につづく



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≪急募≫夏休みサバイバルキャンプ参加者募集 その後

 サバイバルキャンプに同行される方を募集する記事を出して・・・。

その後、

「ハード過ぎて私にはムリです」

とか、

「行きたいけど石垣島までの飛行機代が高くて・・・」

というお返事がありました。

「チャーター船で行くならお金出しても行きますよ」

というありがたいお言葉を一人の方からいただきました。

ありがたいのですが、それでは心苦しいので、あと何人かチャーター船にいっしょに乗船する方を、今捜しているところです。


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≪急募≫夏休みサバイバルキャンプ参加者募集



今年の夏休みも父さんがキャンプの計画を発案。

でも子どもたちは乗ってきません。

「無人の海岸でのサバイバルキャンプなんてもうイヤ」

「ジャングルの中を歩くとか、懲りた」

畑の手伝い減らしてあげるから、とか、サメかガーラが釣れたらおこづかいあげるから、とかの甘言で釣ろうとしても、引っかかりません。

「誰かいっしょに行ってくれよー」

「・・・・・・・・・・」

「いいよ、オレ一人でも行くよ」

昔いっしょにおバカなキャンプをした仲間もいい年になって、家庭を持って落ち着いてしまったので、もう遊んでくれません。


そこで、急募

以下は野生児父さんからのお知らせです。

サバイバルキャンプに参加する方を募集します。

日時:2010年8月7日~8月19日 の12泊(全日程参加でなくても可)

場所:西表のカノカワ海岸、あるいはその付近。

内容:持参する食糧は米と調味料。魚介類と野草を現地で調達する。

イセエビ、サザエ、シャコ貝、ヤシガニ、カサ貝、ヘビ貝、ウズラ貝、夜光貝、各種魚を毎日食べます。

野菜はツルナ、パパイヤ、長命草、ヒカゲヘゴ、オオタニワタリ、野生のバナナ。

タコとイカはこの季節は少ない。

魚は昼も夜も潜って獲る。

ハリセンボンの味噌汁は絶品です。

焚き火にじかに放り込んで焼くヤシガニも絶品です。

ビールは重いので持って行かない。

泡盛はしっかり持って行く。

同行したい人は薪集め、食器洗い、水汲みは協力してもらいます。
  
魚の調理、魚介類の獲り方は見て覚えてください。

薪ですべての調理を行います。

ご飯くらいは薪で炊けるように現場に着いたら覚えてください。

交通費、米代以外お金はかかりません。

小学生は保護者同伴、中学生以上は一人でも面倒見ます。

トイレは衛生上夜間以外は海の中で済ませてください。

カノカワは潮の流れ速く、自然のルールを守らないと安全に楽しく生活することはできません。

グループから離れての単独行動は禁止。

希望者や詳細を知りたい人はコメント欄にアクセスしてください。

8月7日いっしょにカノカワに入れない人は大原から南海岸を自力でひたすら歩いて来てください。

ナサマ浜のカノカワ寄りにある難所(ロープ岩)まで迎えに行ってあげます。

クイラの山越えで来る人はクイラ川河口の船着場まで迎えに行ってあげます。

クイラ河口には白浜から池田米蔵さんのボートを3000円でチャーターしてきてください。

キャンプ参加者定員8名。

カノカワだけでなく、落ち水の滝、ランゲルハンス島、クーラの岩小屋あたりまで獲物を求めて3泊程度の遠征をします。

一番大切なことを書き忘れていた。

このサバイバルキャンプの最大の目的は、ロープを100m仕掛け、200㎏のサメか30㎏以上のガーラを釣ることです。

人数がそろえば石垣の崎枝からカノカワ海岸までチャーター船で直行します。

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秘密の山小屋 その2

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→秘密の山小屋 その1から つづく


秘密の山小屋   その2



山の中の秘密の広場。

林に囲まれた遊び場。

私たち以外誰も知りません。

いえ、市役所林務課の人は知っています。

林務課が計画して木を切ったから結果として広場ができたのです。

べつに我が家の子どもたちが遊ぶために広場を作ってくれたわけではありません。

それでも友達や近所の人が知らない秘密の場所です。

道路から少し奥に入った所なので通りすがりの人は気付きません。

まして観光客もいません。

こういう広場では遊ぶのにボールなどは使いません。

手ごろな高さの樹を選んで枝にロープをかけます。

ロープの下端は短い木の枝を結んでブランコを作ったり、ぶら下がってターザンごっこをして遊ぶのです。

枝が高ければ振り子の原理で相当遠くまでターザンができます。

遊園地のアスレチックコーナーのように整ったものではなく自然そのものの味わいがあります。

「キャッホー、ターザンが行くぞー」

「ウワー、本当のターザンみたい」

「お父さんもやって見てよ」

「よーし」

ロープは200kgでも支えられるくらい丈夫なはず、切れることはないでしょう。

ターザンよろしく

「アー、アーア、アーーー」

ロープに飛び付くと、メタボ気味の父さんの体重でロープを結んだ枝がグワーンとしなりました。

びゅーん。

振り子のようにターザンロープは風を切って向こう側を目指して・・・。

「イテェ!」

中間のちょうど振り子の中心の位置で父さん座り込んでいます。

枝が重みでたわんで、化学繊維のロープも伸びる材質です。

もともと地面に一番近い高さでは50cm以上あったのですが。

でもそれは体重の軽い子どもが乗ったときのこと。

子どもの3倍以上の体重の大人のことは作る時には考えていませんでした。

いや、考えていたかも。

父さんが作ったターザンです。

体重でロープが思ったより下に下がり、お尻で地面をこすって振り子は止まりました。

「アア、ケツが痛い」

「大人は無理でしょ」

「いや、無理じゃないっ!」

「もっとロープを短くして」

「スタートがそんなに高かったら子どもが届かないんじゃないの」

「いいんだ、あいつらはそこの岩に上がってスタートすればいいだろ」

「もうちょっと低くしてあげれば?」

「そしたらオレができなくなるだろ、オレが」

そ、そうですか。

父さん、別の樹にもまたロープを下げてもう一つ低めのターザンを作っています。

「これなら小さいくるみでも届くだろう」

山の中にターザンロープやブランコがいくつもできました。

疲れると持ってきたジュースやお菓子でおやつにして、また日が暮れるまで遊びます。

テレビゲームがない我が家ではお金がかからない遊びの一つです。

「暗くなる前に帰ろう、ハブが出るから」

「今度ここで泊まりたーい」

キャンプ家族の子どもはすぐこういう発想になります。

「うん、泊まろう」

「テント持ってくるの?」

「いや、もっと楽しいこと考えたんだ」

「なに?」

「今日はとにかく帰ろう」

なんかウキウキしているようです。た、楽しそうですね。

秘密の山小屋 その3につづく




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秘密の山小屋 その1

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→私の黒いランドセル その6から つづく

秘密の山小屋   その1


黒いランドセルをくるみがお兄ちゃんから譲渡される少し前のことです。

牧場の子どもたちの遊び場は、近くの海のほか、すぐ裏の山やそこを流れる小さな川にまで及ぶようになりました。

すぐ裏と言えども歩いて行くにはちと遠い。

でも車で連れて行っていっしょに遊ぶガキ大将がいたのです。

アウトドアの遊びには子どもたち以上に夢中になる父親のことでした。

春休みや夏休みなどの長期休暇には西表島のジャングルや無人の海岸へキャンプに行きますが、ふつうの週末は近場で過ごします。

外に出て行かなくても牧場の中でも遊ぼうと思えば、都会ではできない遊びが十分できます。

たとえば屋根だけで壁がないコンクリート造りの牛舎。

この牛舎は中央に通路があり、両側に牛を入れておくパドックがあります。

パドックは鉄の柵に囲まれています。

通路は干草を倉庫から出してきて運び込むトラックが通れるように広く作られています。

干草は数日に一度まとめて運んでおくのでふだんはここは安全な遊び場です。

「お母さん、牛舎で遊んで来るね」

遊ぶと言っても牛と戯れるわけではありません。

通路で縄跳びや自転車で遊ぶのです。

高い天井、大きな庇、夏は日陰で涼しく、雨の多い冬は乾いた床を歩ける場所です。

それ以外は赤土むき出しのデコボコ地面ですから、水溜りがあったり、石ころだらけだったりなのです。

自転車を練習する時などはやはり牛舎の長い通路(端から端まで五十mくらいあります)が最適です。

「梱包でお家つくってあげよう」

「わーい」

直方体に固められてきっちり麻紐で締められた干草の塊を「梱包」と呼んでいます。

通路に一週間分くらいをきれいに積み上げてある干草の山。

一個の梱包は60cm四方の大きさです。

「これを積み直してお家を作るんだ」

「おもしろーい、3匹の子ぶたのワラの家みたい」

牛舎の通路で始まるお家ごっこ。

「屋根はどうするの?」

四角い積み木のような形の干草梱包ですから積み上げて壁は簡単に作れますが天井部分は難しいことになります。

「上にベニヤ板でも載せておくか」

もともと牛舎の屋根の下に作る家ですから別に屋根は必要ないんですが、そこは天井をふさいで雰囲気を出したいものです。

エスキモーの氷の塊で作った家のようにドーム型にして天井も干草で閉じます。

たとえ崩れても材料が干草ですからケガもしません。

「ここに泊まっちゃおうかな」

「いいよ、子どもだけで寝ても」

「やったー、ここで寝よう」

壁はワラでもギッチリ詰まって、厚みが40cm以上ありますから保温効果は抜群。

北風吹く真冬でも家の中は暖かいんです。

もっとも亜熱帯の石垣ですから冬も10度以下にはなりませんが。

それでもさえぎる物のない牧場では、外は強い北風で体感温度はけっこう下がります。

雪の降らない石垣で干草で作った『かまくら』のつもりです。

冬だからこそできる遊び。

夏は干草の家の中なんで暑くて居られません。

暑い季節は近くに流れる小さな川遊びです。

その上流は牧場の飲み水にしている水源です。

夏でも川まで行くと両側に木が生い茂っていい木陰を作ってくれています。

浅い水深は子どもを遊ばせるのにもってこいです。

「苦労して危険を冒して西表まで行かなくても家の近くに遊べる所はあるじゃない」

「危険を冒してとはなんだよ、なんで西表が危険なんだよ」

「ふつうにキャンプするだけなら別に安全ですけど」

「そうだろ」

「中には、無線も水も食料も服も持たないで遠くの島まで船で行って遭難する人もいるし・・・」

「・・・ウ、ウッ・・・」


牛舎の通路で干草の『かまくら』遊びや小川の水遊びは、小さい子は喜びますが、大きな子ども(野生児の成れの果ての父さんのこと)はこんなものでは満足しません。


数日後。

「おーい、山の中にいい場所見つけたんだ、今度の休みにみんなで遊びに行こう」

「遠いの?」

「いつも遊んでる小川の近くだよ」

休日に行って見ることにしました。

舗装道路の脇に車を停めて山の中に入って行きます。

何度か往復して歩いた跡が道になっていて歩きやすくて助かります。

薄暗い林を抜けると突然明るく開けた草地が現れました。

「あら、こんな広場があったの?」

「市の林務課が木を切ったんだよ。ここは市有林だろ」

何年か、何十年か前に市が山にイヌマキなどの植林をしたのです。

その木が成長したので今切り出しているのです。

「何日か前から林務課のトラックが通っていたからね、そうじゃないかと思ってたんだ」

林に囲まれた広場もいい遊び場になりそうです。

「ここは秘密の遊び場にしようや」

それからそこは我が家の秘密基地として準備されていきました。




→秘密の山小屋その2 につづく




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私の黒いランドセル その6

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→私の黒いランドセル その5 から つづく


黒いランドセルはさすがに4万円の価値はありました。

鉄兵の同級生は毎日使っていたランドセル、卒業前についに肩紐が切れてしまって、六年生の最後のころは手提げカバンで登校していました。

鉄兵のランドセルは少々乱暴に使ってもほとんど傷んでいません。

もし弟が2人いたら三代使えそうです。

三倍高いだけのことはありました。

入学式で、また父さんが挨拶です。

「うちのくるみのランドセルは黒です。兄のお下がりだからです。女の子なのにかわいそうと思う人がいるかも知れませんが、物を大切に使うことを教えたいので黒いのを持たせます」

と演説。

黒いランドセルで通学が始まりましたが、からかう子はいませんでした。

1年生はくるみを入れて3人。

級友の二人とも幼稚園の時からの仲良しでした。

少人数のクラスで、持ち物ごときで仲間はずれにしていたら自分が遊ぶ相手がいなくなってしまいます。

からかうどころか、中学に進んだ上級生が

「女の子で黒はかわいそうだな。まだ十分使えるのがあるからあげよう」

と言ってくれたり、教頭先生が

「娘ので新品のが一つ余っているから使ってくれないか」

と言ってくださったり。買わなくても不自由なさそうでした。

かと言って、物を大切に使うために、と宣言した手前、ただならください、というのも気が引けてそのまま黒いランドセルを使っていました。

姉のきりんの赤いランドセルはまだ使用中なのでお下がりはできません。

きりんが小学校を卒業して赤いランドセルのお下がりをもらえる時には、くるみは四年生になっています。


くるみが二年生のとき、担任の先生が黒いランドセルについての作文を書くように勧めてくださいました。

沖縄県金融広報委員会の主催する「お金の作文」というコンクールに応募したのです。


「私の黒いランドセル」

という題名で、黒いランドセルを使うことになったいきさつや心理描写が正直に書かれてあって上手にまとめまとめられました。

女の子で(お嬢様学校の校章入りの学校指定ではなく)お下がりの黒いランドセルというのも珍しいことですし、内容が変わっていたので、なんとその年の特選の賞をもらっちゃいました。

那覇での表彰式に参加するための往復航空券付きです。

ラッキー。

『お金を大切に使いましょう』いう趣旨の広報のための作文ですから、くるみの家でどうやって節約しているか、ということも書いてあるわけです。

おまけに

「おかあさんは、二十五年前のワンピースをまだきています。」

とか

「お父さんも、ボロボロのTシャツをつけて毎日おしごとをしています。うちの中の こわれたどうぐも、すてないで なおしてつかっています。」

などと実に正直に書いています。

さらに、

「おなべや やかんの古いのは犬やヤギに水を飲ますときにつかいます。

お父さんはいつも

もったいないだろう、まだつかえるのに、すてないでくれよ

と言っています。」

と、我が家の内情を書き綴っています。ちょっと気恥ずかしい。

そして最後に

「わたしは、えんぴつも みじかくなるまでつかうことにしています。むだをなくしてお金をたくさんためて、おとなになったら おだんごやさんをするのが わたしのゆめです。」

と結んでいます。

う――ん、審査員の心に届きそうな作文ですねえ。

この作文以来、我が家では

「すてないでくれよ」のフレーズが流行りました。

少々髪も薄くなってきた父さんが、忙しく家事をしている女房や学校の宿題であたふたしている子どもたちに、そう呟く姿は、悲哀を感じるものがあります。

すてないでくれよ、まだ使えるじゃないか

→秘密の山小屋その1 につづく




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