キャンプへGO その9
→その8からつづく
キャンプまだ二日目です。
流の岩を登ったり、楽な浅瀬と思ったらその先には必ず滝、の繰り返しです。
昨日よりは水量も減り、上流ということもあって、昨日の様に濁流に流されることはありません。
上流では、川の水が少なくなって伏水になっている所があります。
「伏水」とは、水の流れが地表に出ず、地下を通っていることです。
もっと上流に行くとまた地面の上に流れが現れることもあります。
しばらく水のない地面を歩いていくと水が表面に現れました。
「わ、また滝……」
というか、崖。
滝の水は上流だし、雨が上がって二日も経っているので水量は少ないのですが、垂直より角度のついた、いわゆるオーバーハングの崖。
「これを登るの?…ムリ!」
「直接登るとは言ってないよ」
リーダーの見る方を目で追って、滝の横は、と見ると、オーバーハングではないものの、ここもほとんど垂直の崖。
「あれを登って、回り込んで滝の上の平らな所に出るんだ」
「はあ……」
イトマンの顔を見ると崖を見上げて無表情でいます。
声も出ません。
今さら帰らせてもらいます、と言ってもメガネなしだし、一人では西表の船着場まで戻れません。
私もそうですが、生きて戻るにはみんなに付いて行くしかないのです。
「まずオレが偵察して来るからな」
猿飛リーダーはスルスルと崖を登り、あっという間にオーバーハングの滝の平らな岩の上に着いて顔を出しました。
「ようし、ここで荷物を受け取れるな」
すぐまた下りて来たリーダーの案内で、滝の下の岩場の地面にみんなまとめて荷物を置くと、空身で登り始めることにしました。
「Kさんは荷物を上げてから最後に来てくれな」
「わかりました」
秋田出身の力持ちで若いKさん、頼りになります。
迎えに来たリーダーが踏む足の同じ跡にそのままそっくり足を載せないと歩く所がありません。
前の人の足をよく見てその足跡の通りに歩きます
垂直の崖でも木が生えていて、その枝をつかみ、張り出した根っこに足をかけて行けばゆっくり進むことができます。
一番こわい所は垂直より明らかに角度が大きい壁。
下を見るとゾオーッとします。
本当は私は高い所は大の苦手なのに。
足を載せた木の根はすでに空中に浮いています。
私のすぐ前を行くイトマン、よく見えないのに不安はないのでしょうか、尊敬します。
どうにか滝の上の平らな岩に着きました。
大きく張り出したオーバーハングの岩の上から恐る恐る下を覗き込むと、下でKさんが立っています。
上からザイルを下ろし、荷物を一つ一つ結んで、順番に滝の上に引っ張り上げます。
最後の荷物を上げてザイルを回収したら、Kさんが登って来てこれで全員上がりました。
また川に沿って歩き出してからイトマンに話しかけます。
「今の崖、怖かったね。木の根の下は何もなくて宙に浮いてたよね」
「へ?ボク、何も見えませんでした」
見えてなくてよかったのかも。
午後はキャンプができそうな場所をリーダーが目で探しながら歩きます。
私たちは、…少なくとも私はそんな余裕はなくただ遅れないようについて行くだけです。
夕方、陽が傾くころ、
「ようし、休憩」
時間的にいってここでキャンプでしょうか。
「近くにもっといいキャンプ地があるか見てくる」
またリーダーの偵察です。
キャンプにいい場所だと思ってテントを張っても、すぐ先にもっといい場所が、しかもすぐそばに存在した、ということもあるので、斥候は必要なのです。
「いい、いい、ここでいい」
近くにキャンプにふさわしい場所はなかったようです。
テントを張るとすぐ今夜の食糧、川エビの採集です。
昨日と場所が変わり、またまた人間馴れしていないエビたち、川に手を入れると寄って来ます。
大きいのから獲り放題。
この日はエビのオンパレード。
『エビの炊き込みご飯』
『エビの味噌汁』
『エビのから揚げ』
食事が済んでもまだ薄明るいので、川で身体を洗うことにしました。
汗をかいたのに、二日もシャワーに入っていないのでサッパリしたくなります。
夏だから川の水浴びがちょうどいいです。
私も髪の毛洗いたかったんですよ」
とミイちゃん。
小さいリュックからシャンプー、リンス、ヘアブラシを取り出しました。
「ええっ、ミイちゃん、シャンプーってそんなに大きいの持ってきたの?」
「だって小さい容器がなかったんですよ」
シャンプーもリンスも中身は少ないのですが、浴室にあった大きな容器のままを持ってきています。
ヘアブラシも長い柄の付いた大き目の物。
このやり取りをそばで聞いていたO先生、
「ミイちゃん!!、あの重い納豆をボクに持たせて、何を持って来たかと思ったら……!!」
「すいませーん。携帯用のがなかったんですー」
ますます気の毒なO先生。
キャンプ二日目が暮れていきます。
→その10につづく
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