カウボーイ募集中 その1 広告にだまされて(?)

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おすすめは、 「アイ ハブ ア ハブ」
→赤ちゃん礼讃 その9からつづく
病院で公衆の面前で大泣き(私ではなく夫が)して喜んだ妊娠でしたが、牧場に帰ると、相変わらずカウガールです。
妊娠中でも身体を使っての仕事です。
「軽い運動をして動いていた方がお産が軽くなるんだよ」
「そうらしいわね」
「牛だってそうだよ、放牧場の牛を見てみろよ、牛舎の牛より楽に出産してるだろう」
そうなのです。
よくテレビや映画で見るのは、牛舎で獣医さんや飼い主が、夜中でもお産の近づいた母牛のそばで見守っています。
分娩が始まると数人で子牛の脚をゆっくり引っ張りながら出産の手伝いをしています。
こういうのは長いこと牛舎で飼っていて運動不足になった牛、または胎児が大きく育ち過ぎてしまったばあいです。
食べるためによく太らせるのではなく健康な子牛を産ませるために緑の草原にほとんど1年中放牧しているここの牧場では母牛は自然に産みます。
お産が近づくと一人で、というか一匹で森の中に入って行って産むのです。
実に軽くプリッと産みます
翌日の見回りに行って、
「そろそろ分娩の日だけどなあ」
と思って見ると、いつの間にかもう産んでいます。
「牛のようにプリッと産んでくれよ、プリッと」
「うん、これだけ働いてるんだからだいじょうぶだよね」
このころにはやっと新しい従業員とアルバイトの人が来てくれて少しは私も楽になりました。
この従業員が定着するまでは苦労がありました。
話せば長いことながら・・・。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
テッちゃんが実習を終わって大学に帰ってしまってヨシダさんももうすぐ退職するということになって、いよいよ募集を急いでいました。
田舎で働きたい人、移住したい人たちを対象にした雑誌に募集の広告を出しました。
ところが、ミスプリントがあって、
「市街地から約20㎞」と書いたはずが、「市街地から2㎞」
「放牧場55haの広さ」が「放牧場5ha」
と載っています。
気が付いたときは雑誌が発行されたあとでした。
「ありゃ、まちがえてるよ。これじゃ、街にも近くて、放牧場の見回りもすぐ終わるように思われるよ」
「でも仕事内容はそのままだし、あとは事実だけを書いてあるからいいんじゃないの?」
たしかに事実だけを書きました。
こんな風に。↓
“冬でも気温10度以下にならず暖房が要らない”
“肉牛ばかりなのできつい乳搾りの仕事はない”
“牧場の目の前のサンゴ礁の海で魚や貝が獲れ、自然に生えてくるパパイヤやグァバの実などとともに食卓にのぼる”
“1年中薄着でよいので衣料費がかからない”
“真夏の昼間の2~3時間は暑さのためにお昼寝タイム”
“夏は日没が午後8時ごろなので、夕方のエサやりが終わってもまだ日は高い”
って、どれも事実ですよ。
この他にも、
“炎天下で干し草運びをしていると頭がクラクラしてしまう”
とか、
“台風になると通り過ぎるまで電気も電話も不通になり、陸の孤島どころか孤島の孤島になってしまう”
とも書きましたよ。
でも読む人はいいところばかり目に焼きついてしまうんですね。
あとで、
「ウソを書いているとは言わないけど、うまいこと書いて。あれじゃパラダイスみたいに聞こえるよ。ペンの暴力、策略だよ」
と人に言われました。
↓最後に書いた文句が余計だったかな。
都会に比べたらここは僻地で不便だが、それだけに島に残された自然は美しい。空の広さ、エメラルドグリーンの海、水平線に太陽が沈んでから1秒ごとに変化する夕焼けには、毎日何度も仕事の手を休めて感動してしまう。”
“太陽の光あふれる大草原で、珊瑚礁の海をバックに約200頭の放牧牛を追うカウボーイになりたい人、連絡を待っている”
(うーむ、なかなかいい文章だわ)
これにだまされて、じゃなくて釣られて、じゃなくて引っかかって、いえ、誘われて履歴書を添えての応募が100通もあったのです。
→カウボーイ募集 その2 につづく
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