イノシシ天国 その1

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→秘密の山小屋 その7からつづく
石垣島や西表島の山中には野生のイノシシがたくさんいます。
時々は山際の畑に出てきます。
そしてサトウキビをかじったり、イモ畑を掘り返して荒らしたりするので害獣ということになっています。
猟友会の人が猟犬を連れて鉄砲で獲ることもあります。
もう一つはイノシシの通り道にワナを仕掛けて獲る方法があります。
このワナを使って猟をするのにも「狩猟免許」が要ります。
うちの父さんは、海の魚介類だけでなく山でも獲物を獲るのに興味を持っていて、イノシシ狩りがしたくてたまりません。
「西表でおもしろい遊びができるよ、一度来て見ない?」
そう教えてくれたのは、牧場に一時期居候していたことがある元「キャンパー」の若い男性。
キャンパーネームは「隊長」。
なぜそう呼ばれるのかは不明ですが、キャンプ場にいた他のキャンパーたちからはそう呼ばれていました。
キャンプ場では本名ではなくキャンパーネームで呼び合うのが一般的なようです。
そしてキャンプ場で知り合って親しくなると、故郷に帰ってから都会で会うことになっても互いにキャンパーネームで呼び合うことが多いようです。
この「隊長」さん、私たちはキャンパーではないので彼のことは本名で呼んでいました。
苗字に「ちゃん」をつけて、「○○チャン」と。呼んでいましたが、ここではキャンパーネームで書いておくことにします。
「隊長」は牧場を出た後、西表島に渡ってアルバイトをしていました。
そしてこの「隊長」の紹介で、老齢ながらイノシシのワナ猟の名人という方と知り合いになりました。
この老人が後に遭難キャンプの時に捜索してくれたゲントクおじいさんなのです。
「オレ、西表に行って来るわ」
「はいはい、行ってらっしゃい」
「イノシシのワナの仕掛けを見せてもらうんだ」
「今度は山の猟師ですか」
「もしイノシシ生け捕りできたら、うちで飼ってもいいか?」
「はあ?」
一晩泊まりでイノシシのハンティングツアーに行きました。
まだ我が家に子どもが生まれる前の話です。
この日はゲントクおじいさんと「隊長」とうちの夫(まだ父さんではなかった)の3人で山に入りました。
何日も前にゲントクさんが掛けておいたワナの見回りに行ったのです。
ゲントクさんの家の裏山にいくつものワナを仕掛けておいて、後でそれにイノシシが掛かっているかどうか見に行くのです。
山の中と言っても人間の通る登山道をイノシシが歩くはずはなく、森の中のけものみちのようなイノシシの通り道を見つけてワナをかけてあるのです。
木を掻き分けてわなを探して歩くのだけでも時間が掛かります。
一日で今までかけた全部のワナを見回ることはできません。
次の日は山の反対側方面・・・という風に数日かかって一回りするのです。
このとき、一つのワナにイノシシが掛かっていたそうです。
イノシシの脚を紐で縛ってかついで下山。
ゲントクおじいさんの家まで運び、解体して肉の多くは冷凍庫に保存。
ご存知、イノシシ肉は高く売れます。
ゲントクさんは若いころイノシシ猟で生計を立てていたこともあったそうです。
また、肉の一部はその夜の料理に、そしてイノシシを担ぐ役目を手伝った人にもお土産として分けてくれました。
「お帰り」
「おもしろかったよー!」
西表からの定期船から降りて、開口一番の感想でした。
「ふうん、楽しかったの、よかったね」
「今度、いっしょに連れて行ってやるよ」
「ええ?イノシシ狩りに?」
「連れて行ってほしいだろ?見たいだろ?」
「はあ」
どっちでもいいけど。
それからはイノシシのワナのことばかり一日中考えているようです。
以後、何度もゲントクおじいさんの元に通い、イノシシのワナかけの弟子入りを志願して覚えて来たようです。
竹を削り、木の枝とワイヤーを結び付けて自分でワナが作れるまでになりました。
楽しそうにワナの仕組みを私に解説してくれます。
私は本当はそんなこと興味がないんですけど。
「この木の切れ込みに引っ掛けて、思い切り引っ張ってしならせた木の枝の先を地面に着くまで下げておくんだ」
「ふーん」
「引っ張ってきた木の枝の先にはもう一つ、ワイヤーで作った輪がある」
「ふーん」
「切れ込みを入れた木片はそれにつけた小さな踏み板をイノシシが踏んだ時にすぐはずれるようにしておく」
「ふーん」
「ちゃんと聞いてる?
「あ、聞いてる、聞いてるよ」
「ワイヤーや踏み板は、上に落ち葉などをかぶせてカムフラージュ」
「なるほど」
「その周りには石や枯れ枝などをわざと置いておく」
「どうして?」
「イノシシは木の枝みたいに不安定な物の上を踏んで歩いたりはしない」
「そうか」
「そうして必ず踏み板の上を踏むように誘うんだ」
「へえ、あったまいい!」
「で、留め具がはずれた瞬間、地面まで下がってしなっていた枝は勢いよく跳ね上がる。イノシシはワイヤーに足首がかかった状態で枝先に吊り下げられて生け捕りになる」
「ほほう」
「うまくできてるだろう」
「でもさ、足首のワイヤーはずれたら逃げるんじゃない?」
「いや、だいじょうぶ、ちょっと、手を貸してごらん」
「はい」
「こうやって手首に輪がかかるとするだろう?」
「ん?」
「思い切り上に跳ね上がったワイヤーは・・・」
ピュンッ!
「・・・ググッと強く締まる」
「イタタタタ!」
「アハハハ、女房が釣れた」
「何するのよ、痛いじゃないのよ」
「かかったら絶対はずれないだろ」
「もういいよ」
「いっしょに行くだろ?イノシシ狩り」
「行かないっ!」
野生児出身のカウボーイはますますイノシシに夢中になっていくのでした。
→イノシシ天国 その2につづく
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