秘密の山小屋 その1

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→私の黒いランドセル その6から つづく
秘密の山小屋 その1
黒いランドセルをくるみがお兄ちゃんから譲渡される少し前のことです。
牧場の子どもたちの遊び場は、近くの海のほか、すぐ裏の山やそこを流れる小さな川にまで及ぶようになりました。
すぐ裏と言えども歩いて行くにはちと遠い。
でも車で連れて行っていっしょに遊ぶガキ大将がいたのです。
アウトドアの遊びには子どもたち以上に夢中になる父親のことでした。
春休みや夏休みなどの長期休暇には西表島のジャングルや無人の海岸へキャンプに行きますが、ふつうの週末は近場で過ごします。
外に出て行かなくても牧場の中でも遊ぼうと思えば、都会ではできない遊びが十分できます。
たとえば屋根だけで壁がないコンクリート造りの牛舎。
この牛舎は中央に通路があり、両側に牛を入れておくパドックがあります。
パドックは鉄の柵に囲まれています。
通路は干草を倉庫から出してきて運び込むトラックが通れるように広く作られています。
干草は数日に一度まとめて運んでおくのでふだんはここは安全な遊び場です。
「お母さん、牛舎で遊んで来るね」
遊ぶと言っても牛と戯れるわけではありません。
通路で縄跳びや自転車で遊ぶのです。
高い天井、大きな庇、夏は日陰で涼しく、雨の多い冬は乾いた床を歩ける場所です。
それ以外は赤土むき出しのデコボコ地面ですから、水溜りがあったり、石ころだらけだったりなのです。
自転車を練習する時などはやはり牛舎の長い通路(端から端まで五十mくらいあります)が最適です。
「梱包でお家つくってあげよう」
「わーい」
直方体に固められてきっちり麻紐で締められた干草の塊を「梱包」と呼んでいます。
通路に一週間分くらいをきれいに積み上げてある干草の山。
一個の梱包は60cm四方の大きさです。
「これを積み直してお家を作るんだ」
「おもしろーい、3匹の子ぶたのワラの家みたい」
牛舎の通路で始まるお家ごっこ。
「屋根はどうするの?」
四角い積み木のような形の干草梱包ですから積み上げて壁は簡単に作れますが天井部分は難しいことになります。
「上にベニヤ板でも載せておくか」
もともと牛舎の屋根の下に作る家ですから別に屋根は必要ないんですが、そこは天井をふさいで雰囲気を出したいものです。
エスキモーの氷の塊で作った家のようにドーム型にして天井も干草で閉じます。
たとえ崩れても材料が干草ですからケガもしません。
「ここに泊まっちゃおうかな」
「いいよ、子どもだけで寝ても」
「やったー、ここで寝よう」
壁はワラでもギッチリ詰まって、厚みが40cm以上ありますから保温効果は抜群。
北風吹く真冬でも家の中は暖かいんです。
もっとも亜熱帯の石垣ですから冬も10度以下にはなりませんが。
それでもさえぎる物のない牧場では、外は強い北風で体感温度はけっこう下がります。
雪の降らない石垣で干草で作った『かまくら』のつもりです。
冬だからこそできる遊び。
夏は干草の家の中なんで暑くて居られません。
暑い季節は近くに流れる小さな川遊びです。
その上流は牧場の飲み水にしている水源です。
夏でも川まで行くと両側に木が生い茂っていい木陰を作ってくれています。
浅い水深は子どもを遊ばせるのにもってこいです。
「苦労して危険を冒して西表まで行かなくても家の近くに遊べる所はあるじゃない」
「危険を冒してとはなんだよ、なんで西表が危険なんだよ」
「ふつうにキャンプするだけなら別に安全ですけど」
「そうだろ」
「中には、無線も水も食料も服も持たないで遠くの島まで船で行って遭難する人もいるし・・・」
「・・・ウ、ウッ・・・」
牛舎の通路で干草の『かまくら』遊びや小川の水遊びは、小さい子は喜びますが、大きな子ども(野生児の成れの果ての父さんのこと)はこんなものでは満足しません。
数日後。
「おーい、山の中にいい場所見つけたんだ、今度の休みにみんなで遊びに行こう」
「遠いの?」
「いつも遊んでる小川の近くだよ」
休日に行って見ることにしました。
舗装道路の脇に車を停めて山の中に入って行きます。
何度か往復して歩いた跡が道になっていて歩きやすくて助かります。
薄暗い林を抜けると突然明るく開けた草地が現れました。
「あら、こんな広場があったの?」
「市の林務課が木を切ったんだよ。ここは市有林だろ」
何年か、何十年か前に市が山にイヌマキなどの植林をしたのです。
その木が成長したので今切り出しているのです。
「何日か前から林務課のトラックが通っていたからね、そうじゃないかと思ってたんだ」
林に囲まれた広場もいい遊び場になりそうです。
「ここは秘密の遊び場にしようや」
それからそこは我が家の秘密基地として準備されていきました。
→秘密の山小屋その2 につづく
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